「のり2・クラシカ」鑑賞日記

「のり2・クラシカ」鑑賞日記

2006年演奏会 (全公演一覧)その2


NHK交響楽団

1・シューマン
   交響曲第4番二短調作品120(第1稿、1841年)



2・クララ・シューマン
   ピアノ協奏曲イ短調作品7
     伊藤 恵(ピアノ)


*********** intermission ************



3・シューマン
   交響曲第1番変ロ長調作品38「春」



2006.6.10 NHKホール 15:00 1階L9列13番


準・メルクルさん、N響へは久々の登場、管理人がお目にかかるのはベートーヴェン「荘厳ミサ曲」以来です。
最初のロベルト・シューマンの2番目の交響曲、交響曲第4番(改訂をした後正式に交響曲として出版されたため本来彼の最後の交響曲である第3番「ライン」の後の番号になった) 通常聴く1851年改訂版ではなく今回は初稿である第1稿、1841年版で演奏された。3楽章あたりから耳馴れないフレーズになり多少の違和感を感じるが
N響も何とかぎりぎりセーフの演奏で健闘だがイマイチ、アンサンブルのまとまりに欠けるか。過去のN響定期サヴァリッシュ指揮での初稿版は凄い説得力のある演奏だったけど。

シューマン夫人のクララのピアノ協奏曲、彼女が15歳くらいの時の作品で自身ピアニストでもあったクララ、結婚前ではあるがロベルト・シューマンの助けを借りたことは間違いのないところ、2楽章のロマン溢れる長大なピアノ・ソロなど聴き所もあるけれどやや散漫な印象の曲、しかしながら本日の伊藤恵さんの見事なピアノで20分余りの曲ですが楽しむことが出来た。

後半の交響曲第1番「春」 一番のまとまりのある演奏でN響も渋い音色で管、特にラッパとトロンボーンが曲に相応しい響きを奏でた。

準・メルクルさん、音量を控えめに抑えながらリズムの妙を強調、変な小細工が無いのが好ましいけど何故か音楽は既に巨匠風でシューマン「春」は昔聴いたスゥイトナーさんの指揮の名演を彷彿とさせた。

ただ最近のN響、ホルン隊の音色、響きの不揃いが気にかかる。
★★★★☆
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ヨハン・シュトラウス2世
   喜歌劇「こうもり」全3幕  ~総舞台稽古(GP)



アイゼンシュタイン:ヴォルフガンク・ブレンデル
ロザリンデ:ナンシー・グスタフソン
フランク:セルゲイ・レイフェルクス
オルロフスキー公爵:エレナ・ツィトコーワ
アルフレード:水口 聡
ファルケ伯爵:ポール・アルミン・エーデルマン
アデーレ:中嶋 彰子
ブリント博士:高橋 淳
フロッシュ:ハンス・クレマー
イーダ:中村 恵理

合唱:新国立劇場合唱団
合唱指揮:三澤 洋史
バレエ:新国立劇場バレエ団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:ヨハネス・ヴィルトナー

演出:ハインツ・ツェドニク
美術衣裳:オラフ・ツォンベック
振付:マリア・ルイーズ・ヤスカ
照明:立田 雄士
舞台監督:大仁田 雅彦


2006.6.11 17:00 新国立劇場オペラ劇場 2階1列47番

オペラのゲネプロは初体験。
招待状を受付で座席指定券に取り替えたが渡された席は2階の1列右端でしたが本公演ではS席のランクのようです。ほとんどオペラ・グラスも必要としなかった。

1階の平土間の殆どは空けてあり中央から後方にのみ観客に開放、カメラ席もあり報道陣と関係者優先席のような。。。
しかし4階席まで殆ど満員の様子。

指揮者とオケのみが私服姿でオケピットに。
ツェドニクの演出なのか時折セリフに日本語を交えて笑いをとったり歌手達も大いに乗りのりの感じでオペレッタとは言え楽しめる上演となった。

舞台はパステルカラー調のセットで平面的だが舞踏会のシーンでは舞台の最深部まで開放、舞台装置の奥行き深かさをあらためて再認識。

歌手では聴衆の声援の大きさではツィトコ-ワ、ブレンデル、中嶋の順、
例外で刑務所看守フロッシュ役のクレマーが充分な存在感を示し、お酒をわざわざ焼酎(ショウチュウ!)と言い換えたり軽妙な演技をみせて本日一番の拍手喝さい。

ロザリンデのグスタフソンは高音が持続せず14日の本番が大丈夫か心配、第3幕では皆さん本気(!?)を出したのか素晴らしい出来栄えで終了。

指揮のヴィルトナーさん、お初にお目にかかりますが可もなく不可もなくというところか。
東フィルは粗さも目立ったが最後まで粘りをみせて健闘。
GPなので★評価は控えます。
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サー・アンドリュー・デイヴィス指揮
メトロポリタン歌劇場管弦楽団

ソプラノ:ルネ・フレミング


1・チャイコフスキー
   幻想的序曲「ロミオとジュリエット」


2・チャイコフスキー
   歌劇「エフゲニー・オネーギン」より
     手紙の場面


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3・ベルク
   アルテンベルク歌曲集作品4


4・ワーグナー
   歌劇「タンホイザー」より
     序曲とバッカナール



5・R・シュトラウス
   歌劇「カプリッチョ」より
     最後の場面

 (ソプラノ)ルネ・フレミング
 (バス)オーレン・グラダス


2006.6.19 サントリーホール 19:00 1階10列40番

オケは16型編成の対向配置で本拠地MET同様、山台を使わないオケの並び。
最初の「ロメオとジュリエット」からメト管から豊潤な響きが奏でられゴージャスな音楽を堪能。弦も非常に良く揃っている。

「手紙の場面」からフレミングさんの登場、若草色のステージ衣裳が良く似合っています。フレミングさんのロシア語の発音がやや不明瞭に感じたが上手側の席で聴いている所為かも知れません。歌唱は文句なしで豊かな声量とニュアンス、オケも情熱的な高まりを見事に表現、指揮のデイヴィスさんとの相性は意外といいかも。

休憩後はベルク「アルテンベルク歌曲集」正式なタイトルは「ペーター・アルテンベルクが絵葉書につけたテキストによる5つの管弦楽つき歌曲」
ベルクの複雑で多彩な響きに乗ってフレミングさん自在な歌いまわしと豊かな表現に感嘆、オケもこの複雑な大オーケストレーションを巧みな音楽で奏でる。

「タンホイザー」序曲とバッカナール
デイヴィスの真骨頂か、均整のとれた表現でとりわけ終曲部の静寂さの繊細な表現とオケの特に金管が良くコントロールされた響き音色で応えて感心した。

最後は「カプリッチョ」から最後の場面、執事役のバスのグラダスが最初と最後に下手扉から出てきて短い歌唱、朗々たる力強い歌を聴かせる。
鏡の中の自分に向かって二人の男性から思いを寄せられ選択を迫られて答えを模索している場面、フレミングさん、ここでも多彩な表現と見事な高音域の歌唱が印象的。

いずれにしろ今夜はフレミングさんのスケールに満ちた歌とメト管のゴージャス・サウンドに満足。
★★★★★
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モーツァルト
   歌劇「ドン・ジョヴァンニ」


ドンナ・アンナ:アンナ・ネトレプコ
ドンナ・エルヴィラ:メラニー・ディーナー
ツェルリーナ:マグダレナ・コジェナー
ドン・オッターヴィオ:マシュー・ポレンザーニ
ドン・ジョヴァンニ:アーウィン・シュロット
レポレロ:ルネ・パーペ
マゼット:ジョナサン・レマル
騎士長:セルゲイ・コプチャク

演出:マルト・ケラー
装置:ミヒャエル・イャーガン
照明:ジーン・カルマン
衣裳:クリスティーヌ・ラポ=ピンソン

サー・アンドリュー・デイヴィス指揮
メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団

2006.6.20 東京文化会館 18:30 1階R12列5番

開演前のロビーには外国人の姿が異様なほど多く在日の外国人の方々が
久しぶりにMET公演を楽しみに、という感じでしょうか。
開演前から華やかな雰囲気でした。

大きな期待を抱いて臨んだ本日の公演でしたが
充分に満足した素晴らしいものでした。

METオケ、序曲が鳴りはじめた時にはあれっと思いましたが、、、
随分と潤いのない響きだったので。
しかし徐々に調子を上げてきて機能的な演奏に。

歌手達は全く危なげなく演技もそこそこ楽しませていただきました。
特にネトレプコとコジェナーの妖艶な演技に脱帽!

会場の拍手声援の大きさではネトレプコ、シュロット、コジェナー
の順でしょうか、他の歌手達へも盛大なBRAVO!が飛びました。

流石、METというほかに言葉がありません。
18:30開演、途中35分の休憩を挿み終演時間は22:00でしたが
全く中だるみも感じさせない非常にドラマティックで
華麗なスターたちの競演を楽しみました。
★★★★★
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ワーグナー
   楽劇「ワルキューレ」



ジークリンデ:デボラ・ヴォイト
ジークムント:プラシド・ドミンゴ
ブリュンヒルデ:デボラ・ポラスキ
ヴォータン:ジェームズ・モリス
フリッカ:イヴォンヌ・ナエフ
フンディング:ルネ・パーペ

演出:オットー・シェンク
装置:ギュンター・シュナイダー=ジームセン
衣裳:ロルフ・ランゲンファス
照明:ギル・ウェクスラー

サー・アンドリュー・デイヴィス指揮
メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団


2006.6.21 NHKホール 17:00 3階C11列50番

休憩(30分x2)を含み5時間にも及ぶ本日の公演、終演時間は22時を回っていました。

今夜はプラシド・ドミンゴさんに尽きます。歌手引退の噂も出ていますが60歳半ばにしてこれだけの演技と歌唱に驚きました。全盛期の輝くような歌唱、声量はないものの見事に第1幕と第2幕を歌いきりました。

二人のデボラ、ヴォイトとポラスキ、特にブリュンヒルデ役のポラスキの見事な立ち居振舞いと安定した歌唱に感嘆、ヴォイトもさすがの存在感。

ヴォータン役のJ・モリスもまさしく適役で歌唱も演技も堂々としたものでご立派。
04年のNY.METでの「ボリス・ゴドノフ」タイトルロール役での死の場面での階段落ちの体を張った演技が思い出されます。

フリッカ役のI・ナエフは初めて聴きますが美しい容姿とともにドラマティックと繊細さを併せ持つ幅広い表現をみせて素晴らしい。

さすがMET,演出も奇を衒ったところのない舞台美術もオーソドックスな仕掛けですがまさしく王道を行く「ワルキューレ」を堪能。

デイヴィス指揮するメトのオケもここぞの場面では力強い分厚い響きを奏でワーグナー好きにはさらに興奮を高めてくれた。歌手に対する伴奏としてのオケ・バランスもお見事。

まさしくNYが誇るオペラの殿堂「MET」の醍醐味を満喫した一夜。
★★★★★
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大友直人指揮
東京交響楽団 第537回定期


1・シェーンベルク
   「グレの歌」


共演:京都市交響楽団

ヴァルデマル王:トーマス・ステュードベイカー
トーヴェ:ギネス-アン・ジェファーズ
山鳩:坂本 朱
農夫:長谷川 顕
道化師(クラウス):吉田浩之
語り手:ヨズア・バーチュ

合唱:東響コーラス
合唱指揮:三澤洋史

2006.6.25 サントリーホール 18:00 1階18列28番

まずステージ上に弦楽器のメンバーが勢ぞろい、と言っても今夜は東響と京響の合同オケ20型編成くらいでしょうか、壮観な眺めのなか大友さんの登場、大友さんのMCで先ごろ亡くなられた2人の指揮者、岩城宏之さんと京響とゆかりの深い佐藤功太郎さんのご冥福を祈ってJ・C・バッハ/エアーが演奏されました。厳粛、荘厳な演奏。

そして本日の大作「グレの歌」管や打楽器のメンバーたちが登壇、この日は何とハープが4台、ホルン隊は11名(内ワグナーチューバ持ち替え4名)双方のオケも殆どフルメンバーでステージ狭しと並ぶ様は窮屈に思えるほど。

弦プルトの表は東響の楽員が並びチェロは東響首席のボーマンさんの隣に京響首席の上村昇さん。本日のコンマスは大谷さん、2プル表は今は京響のコンマスに就任されたニキティンさん(東響ゲストコンマス)が並ぶといった豪華メンバーで演奏された今夜の大作「グレの歌」

字幕を期待したが残念ながら用意されず、しかし数日前にブーレーズ指揮のDVDで事前鑑賞をした甲斐があって素直に物語に没入できて正解でした。

演奏は大編成にもかかわらず陰影に富んだ表現で弦楽器群の響きの統一感が素晴らしい。管楽器群もいたずらに強奏もせず好ましい響き、それとこの曲は打楽器群には様々な楽器(?)が登場、ガラガラや何と鉄の鎖まで鳴らすありさま。

後期ロマン派の色濃い旋律から無調の世界までシェーンベルクの総てが凝縮された世界を大友直人率いる東響と京響がパノラマ絵巻の如く見事に表現、圧倒された。

第一部の後の休憩後に東響コーラスの混声合唱団が登場、ホールのP席エリアだけでは足りずに臨時の席まで設営、LA/RAの一部まで合唱が占めてこれも壮観。
主に男声合唱の出番が多かったのですが、あいかわらず全員暗譜で混声合唱(女声)の出番は終曲のみでしたが難解な曲を彼、彼女らは高らかに歌い上げ圧倒的なフィナーレ。

ソリストではステュードベイカーが出ずっぱりと言う事もあるのか後半は失速気味でしばしオケに声をかき消された、全体に声量不足。
トーヴェ役のジェファーズと山鳩役の坂本は素晴らしい歌唱をみせてさすがお見事。
農夫役の長谷川、道化師の吉田も出番は少ないものの立派な歌唱をみせた。
語り手のバーチュも軽妙で雰囲気充分。

創立東響60周年、京響50周年を祝う今夜の演奏会、非常に感動的でエポックメーキングな一夜であった。
★★★★★
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クリスチャン・ヤルヴィ指揮
東京フィルハーモニー交響楽団

1・プロコフィエフ
   組曲「3つのオレンジの恋」



2・トゥール
   チェロ協奏曲(日本初演)
     ~電子チェロと管弦楽のための協奏曲
     (電子チェロ)デビッド・ゲリンガス

*アンコール 1・リムスキー=コルサコフ:熊蜂の飛行
       2・パブロ・カザルス:鳥の歌



****** intermission **********


3・ムソルグスキー(ラヴェル編曲)
   組曲「展覧会の絵」



2006.6.28 サントリーホール 19:00 2階C8列29番


三つのオレンジへの恋組曲から6曲が演奏された。K・ヤルヴィさん現代曲が得意なだけあって、きびきびとしたリズム感で躍動感のある指揮。東フィルも序盤はまずまずの出だし。

この方も現代曲を盛んに取り上げるゲリンガスさん、YAMAHA製と思われるサイレント・チェロを抱えて登場、すぐ側にアンプらしきものが設置されてゲリンガスさん後に演奏されるアンコールを含めてコードを繋いだりトーンの調整をしたりとジョークを交えての仕種が珍しい。
トゥールの作品、概ね3つの異なるテンポ設定でリズミカル的であったり急ブレーキがかかったりクレッシェンドがかかったりと約20分ほどの切れ目の無い曲ですが12音階技法も取り混ぜ興味深く聴いた。もう一度と言われると?だけど。。。

休憩後の「展覧会の絵」概ね満足した演奏でしたが惜しむらくはテューバ奏者が4曲目のヴィドロでのF管テューバに持ち替えてからのソロが不調、6曲目のシュムイレを描いたラッパ・ソロは秀演。

K・ヤルヴィさん、東フィルでのデヴュー、まずは無難な出来でしょうか、大胆なテンポ設定とリズムに面白さを感じる。
★★★★
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藤原由紀乃 ピアノ・リサイタル

「シューベルトの夕べ」


1・シューベルト
   6つの楽興の時 D780.OP91



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2・シューベルト
   ソナタ第21番変ロ長調 D960 遺作



2006.7.7 東京文化会館小ホール 19:00 D列28番


毎年この時期に小ホールで開催される藤原さんのピアノ・リサイタル、今年で3年連続、足を運ぶことになります。

いつもと同じベーゼンドルファーがステージ中央に置かれ藤原由紀乃さん、黒のシックなドレス姿で登場(去年は確か白のドレスでした)

「楽興の時」ゆったりとしたテンポの所為とベーゼンの響きもあり、やや重い演奏に感じる。珍しく若干のミスもあったりして。

休憩後はシューベルトの他界の年に書かれた3つのソナタの最後の作品である第21番「遺作」、40分にもなる大曲ですが藤原さん、悠然としたテンポと確かな打鍵テクニックで立派な演奏でした。特に強弱のバランス・コントロールが素晴らしい。

アンコールに再び第21番ソナタから第2楽章:アンダンテ・ソステヌートが演奏されました。
会場には昨年結婚されたご主人(新極真会の空手の師範)が来場者と挨拶をあっちこっちでされていました。藤原さんも空手を始めたらしいので心の精進が今後の藤原さんの演奏表現にどんな影響を与えるのか楽しみです。
★★★★☆
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秋山和慶指揮
東京交響楽団 第538回定期演奏会


1・武満 徹
   グリーン


2・ラフマニノフ
   ピアノ協奏曲第3番ニ短調
     ジョン・ナカマツ(ピアノ)


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3・バーンスタイン
   交響曲第2番「不安の時代」
     ピアノ・トリオ=佐山雅弘M's
   (ピアノ)佐山雅弘(ベース)小井政都志(ドラムス)大坂昌彦


2006.7.8 サントリーホール 18:00 1階18列28番

久々の秋山さんの東響定期登場、武満「グリーン」東響の精緻な表現、そして第10回ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールで優勝のジョン・ナカマツを迎えてのラフマニノフの見事なオケへの統率、流石と言うしかありません。

ナカマツさんのピアノも見事なもので技巧に走るだけではなくて情感も豊かで初めて聴く機会を得たピアニストですが素晴らしいセンスを感じました。
アンコールにシューマン/リスト編曲の「献呈」風格すら感じさせる立派な演奏。

休憩のあとはバーンスタイン「不安の時代」以前に小曾根さんのピアノで聴いた演奏も素晴らしかったですが今回の佐山雅弘トリオをゲストに迎えた演奏はよりジャズ風なスタイルが強調されより作品の面白さが感じられた。
アンコールにチック・コリア:スペイン
サントリーホールで暫しのジャズ・セッション 楽しみました。

秋山/東響も乗りの良さ充分で快調な演奏。
今夜はスロヴァキア・フィルの第1コンマス=パヴェル・ボガチュ氏をゲスト・コンサートマスターに迎えての演奏会、最近ではN響が海外のオケからゲスト・コンマスを迎えたりしていますが良い試みだと思います。
★★★★★
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準・メルクル指揮
国立音楽大学オーケストラ


1・マーラー
   交響曲第3番二短調




(アルト)秋葉京子


女声合唱:国立音楽大学(永井 宏)
児童合唱:国立音楽大学付属小学校(進藤和子)


2006.7.9 サントリーホール 14:00 1階18列38番

第105回の国立音楽大学オーケストラ定期演奏会、準・メルクルさんを指揮者に迎えての本日の演奏会、なかなか充実したコンサートでした。

オケは16型編成で弦のトップはそれぞれ国立音大の教授陣が座り(コントラバスを除き)ましたがホルンを除き管楽器セクションは学生だけのメンバーでした。
ホルンにはN響で活躍した大野良雄さん、チェロ・トップにはN響奏者の三戸正秀さんがお坐りでした。

メルクルさん、終始悠然としたテンポで国立音大のオケから思いがけないほどの見事な演奏を引き出しました、指揮者の力量の違いを実感した次第で並みの指揮者ならくずれかかったシーンもあったかも知れません。
舞台裏からのポストホルン(吉田亮)も大健闘、管楽器は国立の伝統でしょうか傑出したプレイヤーがいるわけではないのですが非常にハーモニーにまとまりがあって時にはかすんでしまう弦楽群に比べ見事な働きでした。

国立の教授を務めるアルトの秋葉京子さん、往年の輝きはないまでも充分な存在感を示すも少し内にこもった発声が気になったけど。。。

国立の女声合唱はN響との荘厳ミサでメルクルさんと共演したこともあり今回も安定したハーモニーです。

フィナーレも打楽器陣の活躍もあり見事なエンディングで締めました。
思いのほかレヴェルの高い演奏を成し遂げた国立音楽大学のみなさんに拍手喝采です。
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大野和士指揮
東京フィルハーモニー交響楽団


1・ベルリオーズ
   劇的交響曲
     「ロメオとジュリエット」



寺谷千枝子(メゾ・ソプラノ)
真野郁夫(テノール)
牧野正人(バス)

東京オペラシンガーズ(合唱)


2006.7.21 サントリーホール 19:00 2階C8列29番

ベルリオーズの3番目の交響曲にして100分にも及ぶ大作を今や実力、人気とも絶好調の大野和士の指揮で聴いた。

劇的交響曲「ロメオとジュリエット」

正式タイトルは「ロメオとジュリエットーシェイクスピアの悲劇による合唱、独唱と合唱によるレチタティーヴォのプロローグ付きの劇的交響曲」
ということらしい。
7つの楽章からなる各場面、情景を大野率いる東フィルが素晴らしい描写力を展開、またソリストたちや合唱の東京オペラシンガーズの皆さんも実に精緻に満ちた音楽表現。特にバスの牧野さんの朗々たる歌唱に圧倒された。

休憩なしで一気に演奏されたが弛緩もせずに最後まで聴かせてくれた。

旧知の仲の大野さんと東フィル、ある程度の好演になるだろうとは予想されたものの、これ程までに正攻法で堂々とした王道の演奏を聴かせるとは想像以上です。
それにしても最近の東フィル、コンサートで聴く限り圧倒的パワーこそないものの精緻な響きと豊かな表現力に富んだ演奏を重ねて嬉しい限り。

終曲の壮麗な演奏は超感動もの、是非NHK-FMでの放送を望みたい。
★★★★★
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ワレリー・ゲルギエフ指揮
PMFオーケストラ2006


1.モーツァルト
   ファゴット協奏曲変ロ長調K.191(K.186e)
     ダニエル・マツカワ(Fg)



2・ストラヴィンスキー
   ペトルーシュカ(1947年版)


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3・チャイコフスキー
   交響曲第5番ホ短調作品64




2006.8.3 サントリーホール 19:00 2階RC5列-5番


PMFオーケストラ、去年のネルロ・サンティさんの指揮でのコンサートも素晴らしかったですが今年のメンバー130人も技術的にはもちろん充分音楽性に溢れた連中で若い頃自分がこのステージに乗って一緒に演奏できたらなどと彼らの演奏を聴きながらふと思ったりしました。

最初のマツカワさんのファゴットによるモーツァルトの協奏曲はオケも小編成でやさしく然しながら確かな伴奏で支えて上出来の香りあふれる演奏。

次の「ペトルーシュカ」からフル編成の18編成、ゲルギエフ氏の切れ味するどいリズム感にオケもシャープな演奏で応える。さすがに世界中から選ばれたエリート達です、すべての演奏者が自信たっぷりの音楽で表現、パワーとスピード感に満ちた名演です。

休憩後はチャイコフスキー5番交響曲、ゲルギエフの指揮で、さてどんな演奏を繰り広げるか楽しみに心待ちしていましたが圧倒されました。
どの弦も最後尾プルトまでしっかり鳴っていましたし管も卓越した奏者こそいませんでしたが(去年のPMF2005オケに比べて)非常にアンサンブルにまとまりを感じさせたし2楽章のホルン・ソロもやや硬質な音色ですが優秀なソロを聴かせました。

ゲルギエフさん、いたずらにオケを煽ることもなくハーモニーを重視した解釈でしょうか、しかし終楽章のコーダはなだれこむようなスピード感あふれるフィナーレで締めてBRAVO! の嵐でした。

PMFオケ2006は世界17ヶ国から選抜された130人のメンバー、オーケストラ公演は大阪、名古屋に続き今晩の東京・サントリーが最終公演。
盛大な拍手がいつまでも続いたがアンコールはなし。終演は21:30
★★★★★
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ダン・エッティンガー指揮
東京フィルハーモニー交響楽団


1・ブラームス
   ピアノ協奏曲第2番
     マルク・アンドレ=アムラン(ピアノ)


アンコール:ドビュッシー 前奏曲第二集より ヒースの草むら


********** intermission *************


2・ベートーヴェン
   交響曲第3番変ホ長調「英雄」



2006.9.6 サントリーホール 19:00  2-C8-29



エッティンガーさん東フィルへは二度目の客演(他に新国立でのオペラ公演でも共演している) 前回は当日に急な所用があって断念したこともあり彼の再来日を楽しみにしていた演奏会。

名手アムランを独奏に迎えたブラームス2番協奏曲、オケとのテンポの合わない所もあったりしたが何と言っても彼の卓越したピアノ・テクニックの健在ぶりを堪能。
アンコールにドビュッシーから一曲

休憩後のベートーヴェンの英雄交響曲
朝比奈、ベームといったあの時代の雄渾なベートーヴェンとは一線を画した爽やかな演奏で東フィルも繊細な響きで応えていた。多少のミスもあったりしたけど妨げにはならず。
今夜の配置は対向配置で16型編成

エッティンガーさん、前回来日時のワーグナーなどの演奏を録音で聴いた印象に違いはみられず今回も過度な表現に走らず輪郭のはっきりした演奏を見せてくれました。楽しみな逸材と感じます。
★★★★☆
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若杉 弘指揮
NHK交響楽団 第1575回定期公演

1・ウェーベルン
   パッサカリア作品1



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2・マーラー
   交響曲第9番二長調



2006.9.9 NHKホール 15:00 2-R7-20

今回から席替えで2階の右サイドへ移りました、視界も音響も良好ですがすぐ後ろ斜めのご婦人連れのチューニング中まで延々と続くおしゃべりに少し閉口、次回もこんな状況だと次のシーズンもさすらいの旅かな(笑)

さてN響創立80周年を記念してN響の正指揮者シリーズと銘うたれた今回の定期公演、残念ながら3人の正指揮者の内、先頃岩城宏之さんがお亡くなりになり彼の公演は残されたお二人、外山雄三さんと若杉弘さんが棒を振られるとのこと、何年か前にこの企画が実現していればと残念な思いです。
N響定期には十年以上もこの三人の正指揮者は登場していませんでしたから。。。
何とも摩訶不思議な話ですけど。

さて若杉さんを指揮台に迎えての今日の定期公演、N響の珍しくもまとまりのあるアンサンブルでいい演奏ではありましたが何せ90分余りの大曲ですから若杉さんには一ひねり、二ひねりも欲しかったところですが彼のスタイル(何も足さない、何も引かない)のままの演奏でいささか平板な印象に感じました。立派な演奏ではありましたが。

繰り返しになりますが彼ら、岩城さんも含めて脂の乗った時期の十年以上も前に彼らにN響定期のステージに呼んで欲しかったですね、正指揮者なんですから。。。

今夜の配置は対向配置のフル編成、2台のハープは舞台上手側(右前列)に置かれて珍しい。
最初に演奏されたパッサカリアは文句無しの名演、若杉さん、そしてN響の名手たちの面目躍如たる巧みなオーケストレーションが披露された。
★★★★
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ユベール・スダーン指揮
東京交響楽団 第539回定期演奏会


1・モーツァルト
   フリーメーソンのための葬送音楽K.477


2・モーツァルト
   クラリネット協奏曲イ長調K.622
     赤坂達三(クラリネット)


********* intermission ************



3・モーツァルト
   交響曲第41番ハ長調
     「ジュピター」K・551


アンコール1・モーツァルト 行進曲ニ長調
アンコール2・モーツァルト カッサシオン ニ長調からアレグロ


2006.9.9 サントリーホール 18:00 1-18-28


スダーンさん、指揮台無しでの振り、東響の編成は2管、8-7-6-5-4の弦編成で今夜の指揮者スダーンさんお得意のモーツァルト・プロ、弦の響きは均一な透明感にあふれ尚且つ木管を始めオケの他のメンバーも見事に調和のとれたアンサンブルを奏でる。

今夜のゲストのクラリネット奏者赤坂達三さんも技巧的と音色の微妙な変化と柔らかな音色を織り交ぜ素晴らしいモーツァルトを奏でました。

スダーン指揮東響、音質的にはピリオド奏法に近い響きでモーツァルト作品の一つの基準になる素晴らしい演奏、特に最後の交響曲41番ジュピターは実に優雅な天上的な響きで雄渾な演奏とは一味違う新鮮な演奏でした。
アンコールも楽しい曲で良い演奏でした。
★★★★★
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ジェイムズ・デプリースト指揮
東京都交響楽団

1・プロコフィエフ
   組曲「キージェ中尉」作品60




********* intermission ************



2・プロコフィエフ
   オラトリオ「イワン雷帝」作品116


アルト:クリスティーヌ・メドウズ
語り:平野忠彦
合唱:ニ期会合唱団


2006.9.14 東京文化会館 19:00 1-3-8

本日のプロコフィエフの作品はいずれも映画のために書かれた音楽、いずれの映画も見たことはないけれど「キージェ中尉」から抜粋された5曲の音楽もシーンを彷彿とさせる非常に描写力豊かなものでデプリースト指揮する都響も明快な表現。

休憩後はエイゼンシュテイン監督の映画「イワン雷帝」のために書かれた音楽から作曲者プロコフィエフの死後、映画音楽の指揮を務めたアブラム・スタセーヴィチが25曲のオラトリオに編んだもので本日はその中から21曲が演奏された。それでも60分超の大曲でしたが先の「キージェ中尉」と同じく描写に優れた音楽でチャイコフスキー「1812年」に出てくるロシア聖歌が流れたりといつものプロコフィエフ作品にみられる荒々しさやリズムの難解さは見られずあっという間の60分でした。

語り手の平野さんの朗々とした語り口が素晴らしい、アルトのメドウズさん、デプリーストさんとはオレゴン響時代に数多く共演しているとのことですが歌唱はいささか峠を越した感ですが暗譜で各シーンを歌いきりました。二期会合唱団も力強い表現(合唱指揮は船橋洋介氏)

デプリースト/都響のコンビ 相変わらずいい音楽を紡いでいるようで次回への期待を抱かせました。
★★★★☆
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ウラジーミル・アシュケナージ指揮
NHK交響楽団 第1577回定期公演


1・ショスタコーヴィチ
   ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調作品77
     ボリス・ベルキン(ヴァイオリン)




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2・ショスタコーヴィチ
   交響曲第10番ホ短調作品93




2006.9.23 NHKホール 15:00 2-R7-20

今日のプログラムにおかれた作品はいずれも時のジダーノフ批判により初演を延期或いは自粛せざるおえない時代のもの。

音楽監督のアシュケナージさん、とかくプログラムによっては好不評がはっきり晒される指揮者ですがショスタコーヴィチ作品については全く安心して身をゆだねられると言うもの。

ベルキンを独奏に迎えたヴァイオリン協奏曲第一番はベルキンの技巧はもとよりN響のオケも独奏ヴァイオリンと丁々発止のからみを見せて素晴らしい。
ベルキン氏、中間楽章でのカデンツァはまさしく圧巻。

休憩後の第十番交響曲はアシュケナージさんのまさに独壇場、オケも重厚かつ軽妙なリズム感で熱狂的なコーダを終える。
本日のシンバル奏者が絶妙な音色のコントロールを見せて特に印象に残る。
植松さんのティンパニを始めN響打楽器陣が見事な活躍。
★★★★☆
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佐渡 裕指揮
兵庫芸術文化センター管弦楽団   東京デビュー・コンサート


1・シューマン
   交響曲第2番ハ長調作品61




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2・ブラームス
   交響曲第2番ニ長調作品73




2006.9.26 サントリーホール 19:00 2-C5-30


今日のサントリーホール、若い人たちが多いです。佐渡さん人気、そして本日の芸文センター管が創立1年足らずの若いオケということもあるのでしょう。

さて東京初見参のオケ、前半のシューマンは14型2管編成そして後半に演奏されたブラームスはそれにホルンが2人から4人に増強、チューバが加わりました。在京オケにみられる通常の16型4管編成とは違い流石に奏でられる音楽も重量感には乏しくとも実にすっきりとした見通しの良い演奏に感じました。

特にシューマンの2番は恩師バーンスタインの魂が乗り移ったかのような佐渡さんの指揮でテンポこそ速めでしたが各楽章をキレ良くまとめて聴き応え充分でした。

後半に演奏されたブラームス2番も充分に歌わせながらもリズム、テンポもどっしりとして揺るがない。
佐渡 裕さん何年か前に都響との春の祭典を聴いて以来ですが随分と音楽的スケールが増してきたなと感じます。更に楽しみな大型指揮者ですね。(体格も含めて)(笑)

兵庫芸術文化センター管も編成上、音の厚みには欠けるものの充分に立派な演奏です。ヴァイオリンは殆ど日本人のようでしたが特に管楽器は外国人が目立ちました。ただ外国人のティンパニ奏者、見事な「ばち捌き」でしたがあまりにも音量が大きすぎなのが気になりました。
いずれにしろ、こちらも将来楽しみなオケです。
アンコールにブラームス:ハンガリー舞曲第1番
★★★★☆
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若杉 弘指揮
東京フィルハーモニー交響楽団


1・イサン・ユン
   交響曲第4番


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2・ワーグナー
   歌劇「さまよえるオランダ人」序曲


3・ワーグナー
   歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲


4・ワーグナー
   歌劇「タンホイザー」序曲


5・ワーグナー
   楽劇「トリスタンとイゾルデ」第1幕への前奏曲


6・ワーグナー
   歌劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」序曲


2006.10.5 サントリーホール 19:00開演   2-C8-29


最初に演奏されたイサン・ユンの作品、交響曲第4番は20年前のサントリーホールのオープンに併せ「サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ」の第1回目の記念碑となるもので他に武満、クセナキス、J・ケージ、ブソッティへも作曲の委嘱がなされた。
曲は2楽章構成で冒頭にチェロが旋律を奏でるが直ぐにコントラバスが対位的に加わる。あとは金管群、打楽器群が荒々しい旋律を奏して実に賑やか、13分ほどで一楽章が終わり、2楽章は一転して穏やかにオーボエ・ソロで始まりその音色はまるで篳篥(ひちりき)のよう。途中に荒々しい場面もあるが最後はオーボエの旋律が再現されて終わる。全体で30分程を要した曲ですが民族風は感じられずむしろヨーロッパ的な曲風に感じた。
(20年前の初演は岩城宏之指揮東京都交響楽団)

休憩後はオール・ワーグナー作品。
どの作品もスマートな流れ、欲を言うと少し物足りない、ワーグナー特有の官能的ないやらしさがもっとあればとも思う。
それでも最後のマイスタージンガーは迫力、うねりもありBRAVO!
★★★★
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ダニエル・ハーディング指揮
マーラー・チェンバー・オーケストラ


1・モーツァルト
   交響曲第39番変ホ長調K.543


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2・モーツァルト
   交響曲第40番ト短調K.550




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3・モーツァルト
   交響曲第41番ハ長調K・551
     「ジュピター」





2006.10.6 東京オペラシティコンサートホール 19:00開演  3-C1-20


ハーディング氏とは本年3月、東フィル「復活」の演奏会以来となります。
今回の来日は手兵のマーラー・チェンバーを率いての演奏会

どれも実に斬新な解釈での演奏となりました。
ハーディングの意表をつくテンポ設定(緩急の差が激しい)強烈なリズムアタックなど、どれも刺激的だがチャーミングさも忘れていない。

マーラー・チェンバーオケも均一に整った響きの演奏で指揮者の棒に柔軟に応えて素晴らしい出来栄え。

曲の終了ごとに休憩を設けたのも新鮮で、意図的に休憩を設ける事でそれぞれの曲想の違いを浮き彫りにする狙いもあったのでしょう、それは見事に演奏の違いに現れていたように感じます。

やはり今夜の演奏会のクライマックスは最後におかれた41番「ジュピター」で実に雄渾で壮大なフィナーレの後、聴衆から猛烈、強烈な歓声が湧き起こりました。
ムーティ/ウィーン・フィルに代表される従来の優美なモーツァルト演奏とは一線を画した新鮮な演奏で作曲者の時代の演奏スタイルはもしかして今夜のような演奏だったかもと感じ入りました。

昨年でしたかノリントン指揮シュトゥットガルト放送響、来日公演で耳にしたマーラー「巨人」の斬新な演奏解釈に大層驚いた記憶がありますがそれに匹敵する嬉しい驚きでした。
10-8-6-5-3の2管編成で対向(両翼)配置
3階席の最前列中央寄りのベストの席でマーラー・チェンバーオケの美音を楽しむ事が出来ました。
★★★★★
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クラウディオ・アバド指揮
ルツェルン祝祭管弦楽団
コンサートマスター(コーリャ・ブラッハー)

ラヘル・ハルニッシュ(ソプラノ)

1・モーツァルト/コンサート・アリア
     「わが愛しの希望よ!
   ・・ああ、そなたにはどんな苦しみかわかるまい」K. 416

2・モーツァルト/コンサート・アリア
     「ああ、できるならあなたにご説明したいものです」K. 418


3・モーツァルト/コンサート・アリア
     「わが感謝をお受け下さい、やさしき保護者よ」K. 383


********** intermission ************


4・マーラー
   交響曲第6番イ短調
     「悲劇的」




2006.10.13 サントリーホール 19:00開演 2-LD2-11


ルツェルン・フェスティバル・イン・東京2006と銘うたれた一連のコンサート
オケは先日聴いたばかりのハーディングが音楽監督を務めるマーラー・チェンバー・オーケストラが主体のメンバーにアバドとゆかりのある世界のトップ・プレーヤーが参加した季節限定の臨時オーケストラ。
今年は本拠地のルツェルン以外では日本のみの極めて貴重な機会を得たコンサート。

マーラー「悲劇的」の演奏
ホールにあふれんばかりの楽員が勢揃い、編成は1,2Vn36,Va16,Vc14,Db10,
管楽器Hrn8,Trp6,Tb4など、Hp3,Perc6,木管は数え忘れましたがクラにはザビーネ・マイヤー、フルートにはジャック・ズーン、Hpには吉野直子さんがトップの席に。

さてマーラー交響曲第6番、マリオ・ブルネロ率いるチェロとコントラバスによる序奏から始まった今夜の演奏ですが、全編とにかく緻密でいながら音楽の流れに澱みが無く流れて緊張しまくりの(良い意味での)ひと時でした。

アバドさん、最近の傾向だと思うのですがスコアに忠実の何も引かない、足さない解釈なのですが長年の輝かしい指揮者経歴をいったん棚卸をした後の哲学者然とした彼の人生の集大成の音楽、マーラーを聞かせていただいた感じをもちました。

対するオケ側も実に細やかな繊細な音色で特に1,2Vnのまるでpppかと思わせるトウッティで奏される旋律などくっきりと浮かび上がって聴こえてきます。(特に3楽章スケルッオなど)
まさしく室内楽の素晴らしい完成度がそのままオケへの集合体になっているのが実感されます。勿論、fffの時には均一な響きのしかし力強い旋律が奏でられます。

管楽器で特に印象に残ったのはホルンのアレッシオ・アレグリーニ(サンタチェチーリア管ソロ)とラッパのラインホルト・フリードリヒのお二人、その完璧なテクニックに驚きました。

全体の印象としては迫力よりも各楽章の性格付けがはっきり描き出されていた演奏でオケの各楽器のバランスも鮮明に聞き分けられて新しい発見もあり(CDでは決して聴こえてこないだろう対位旋律などの)緻密に計算されたわけでは無いのでしょうが終わってみればこの曲の偉大なスタンダード、模範的な演奏に接した思いです。
アバドに心酔、寄り添って演奏する楽員たちとの見事な演奏、フィナーレ・ラストの衝撃的な一撃がペシミズムをとり払い現実の”生”への覚醒を呼び覚ますまさに劇的な一撃となりました。
そして特筆すべきは本日の聴衆のみなさん、アバド氏のタクトがふりおろされて静止のあと暫し30秒ほど、或いはもっと長かったかも知れませんがその静寂が千金の値でした。
その後は盛大な歓声、BRAVO!だったことはいうまでもありません。アバドさん、楽員が去った後も一人ステージに呼び戻され盛んな声援を受けていました。

本日は2,3楽章が入れ替わりスケルッオは3楽章として演奏、また4楽章でのハンマー打撃は2回、強烈な音でした。

前半に演奏されたモーツァルトのアリア集、当初のプログラムには無かったのですが急遽追加されたようです。
スイス生まれのソプラノ歌手ハルニッシュさん、初めて接しましたが澄んだ音色で声量的には大きくはないですが細やかな歌いまわしが出来る歌手のように思いますが本日のアリアでは音程的に不安があるように感じました。
個人的にはマーラーだけで充分の演奏会でした。
★★★★★+++
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クラウディオ・アバド指揮
ルツェルン祝祭管弦楽団


1・ブラームス
   ピアノ協奏曲第2番変ロ長調OP.83
     マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)




********** intermission ***********




2・ブルックナー
   交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」




2006.10.18 サントリーホール 19:00開演 2-RA6-12


サントリーホールの外でピアニストの伊藤恵さん、小山実稚恵さんと遭遇しました。

伊藤さんとはホールお隣の全日空ホテル、小山さんとはホール向かいのオーバカナル赤坂でギネスを飲んでいたら。。。
多分お二人とも今夜のコンサートを聴きに来られたと思います、何せポリーニさんのピアノでブラ2ですから。♪

さて、前半のポリーニのピアノ独奏によるブラームス/ピアノ協奏曲第2番、ピアノもオーケストラもしっくり溶け込んで室内楽のようなシンプルさと時には贅沢な響きとに酔いしれました。

過去にポリーニのピアノでアバド/VPOとアバド/BPOの両方オケでのCDでこの曲を楽しんでいますが今夜の生での演奏会という条件を差し引いても極上のブラ2を堪能しました。
アバドさん指揮するオケの響きは繊細極まりなくポリーニ氏のピアノに見事に寄り添い、この曲のスコアは見たこと無いのですが輪郭がはっきりした一音一音があたかも目の前に音符が浮かんでくるような感じを受けたくらい、
最後まで聞く側の集中力を途切らせない素晴らしい演奏でした。BRAVO !です。

3楽章でのブルネロさんの奏でるチェロのソロも素敵なポリーニさんとのコラボでした。
終演後、ポリーニさん何度もブルネロさんと握手してました。

さて休憩後のブルックナー、ルツェルン祝祭に参加した楽員たちの名人芸が惜しみなく発揮されすっきりしたブルックナーの大伽藍が構築されました。

特にヴォルフラム・クリスト率いるヴィオラ・パートが極上の統一された響きで新鮮な感銘を受けた。

朝比奈、G・ヴァント氏などの演奏する所謂ブルックナー節とは一線を画した演奏解釈と感じました、当日ホールで聴いた方には物足りなく感じた方もお出ででしょうが第1楽章の弦楽器による導入部”霧(きり)”或いは”靄(もや)”の澄み切った音色の出だしの響きには驚き、生演奏ならではの稀有で贅沢な体験を得ました。

第4番「ロマンティック」個人的にはブルックナーの交響曲の中では滅多に食指が動く曲ではないのですが今夜は充分に楽しむことができました。

アバドさん、楽員が去った後、鳴り止まぬ拍手歓声に応えて2回ステージに登場、
嬉しそうな表情で聴衆に笑みを返していました。

今夜のコンマス、元BPOのコンサートマスターのコリア・ブラッハー
オーケストラの編成は
前半のブラームスでは16型2管編成(16-14-10-8-6)
後半のブルックナーは20型(1Vn20-2Vn16-Va(?)-Vc14-Db(?)Hrn5,Tp3
今夜の席は舞台上手の真横の位置でしたのでヴィオラ、コントラバスのメンバー全員は確認出来ませんでした。

チェロは両プログラムとも中央に位置、ヴィオラは第一ヴァイオリンの対向に位置していました。(舞台上手外側)
★★★★★+++
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to be continued

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