のいちご文学館

のいちご文学館

の い ち ご 宣 言



 世はまさに出版ブームであり、電車には次々と創刊号なる雑誌の広告が吊られ、店頭には毎日のように雑多な新刊本が所狭しとばかりに並べられ、いかにも出版文化が隆盛を誇っているかのようにみえます。 

 しかし、それらは私達の精神生活を潤しているでしょうか。
私達ははっきり否と断言できます。作品を創造する喜びが欠落しているからです。

 そのような作品では、どんなに巨額の宣伝費を使っても、高価に見える装丁を施しても、どんなに文章が達者で、すばらしい言葉を行間にちりばめても、人間の心を感動させることはできないのです。

 私達は、私達自身の作品を持たなければなりません。それは可能なことなのです。日常生活のいたるところに真理や真実が存在するからです。すこしでもそれらと共にある人々には、思索し、創造する喜びが満ち溢れてくるからです。

 私達は、人間の尊厳に立脚している限り、文章が未熟であっても、それは文芸作品であることを信じます。そこには、人間の悲しみ、人間の喜び、人間としての勇気、人間らしく生きる誇りが描かれているからです。

 私達は私達の道を歩きましょう。私達にしかできない文芸作品を作りだしましょう。私達が、今、ここに生きていることを証明するためにも、人間のありのままの素晴らしい姿を描きだそうではありませんか。

1986・04・27 創刊よびかけ文より


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: