M17星雲の光と影

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2006.03.10
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カテゴリ: その他
金曜の夜にはノンテーマだらだらブログがふさわしい。(ような気がする)

金曜の夜の過ごし方もいろいろ考えられます。まあ、よくあるパターンは「飲みに行く」ですよね。でも、あまりにもあたりまえすぎていささか面白みに欠ける。「早く帰る」という手もある。早く帰って、生まれて初めて聞くシンフォニーを鑑賞する、なんてのもいいかもしれませんね。これは悪くないな。別にシンフォニーでなくてもいいんだけど、「いっちょ、シベリウスでも聴いてみるか」とか、「マーラーの三番に初挑戦」とか、「ショスタコービッチでもいってみよう」(ちょっとこれは金曜の夜にはどうだろう)とか、なかなか悪くない気がしますね。

でも、今日の私の金曜の夜の過ごし方はそのどれでもありません。最近発見した過ごし方があるんです。それは「仕事帰りに床屋に行く」です。これもなかなか悪くないですよ。まあ、ふつう、床屋は土日に行かれる方が多いと思います。ゆっくり朝寝して、でろでろ時間つぶして、足の爪なんか切って、やることないなーってあくびして、「そうだ、床屋でもいくか」と思って、サンダル履きで近所の床屋へ。たしかにこれも悪くないです。とくに「床屋でも」の「でも」が味わい深いですよね。

でも金曜の夜に床屋へ行くという手もあるんです。まず利点は客が誰もいないこと。さらにこちらは仕事が終わってほっとしている、床屋さんは明日からの繁忙期にそなえてくつろいでる。ちょうど水商売の人がお店を閉めて帰宅する途中に、出勤するサラリーマンとスクランブル交差点ですれ違うような、なんだか不思議な交錯感が味わえるんですね。客の方も週末はプチプチ年末のようなものだから、疲れと汚れを落としてさっぱりするし、床屋さんもひまだからやたらていねいで、使えなかった話のネタも大量にあるしで、けっこうまったりした時間が過ごせるんです。一度試してみる価値はあると思いますよ。

閑話休題。今朝、新聞を開いて、いきなり「村上春樹」という活字が飛びこんできて驚きました。社会面の紹介なんだけど「村上春樹氏の原稿流出」って書いてあったらびっくりしますよね。おやおやと思って記事を読んでみたら、フィッツジェラルドの「氷の宮殿」(名作!)の自筆原稿の写真が掲載されていて、さらにびっくり。でも記事を読んで少ししんみりしてしまいました。

要するに中央公論社の元編集者が春樹氏の手書き原稿を勝手に古書店に売り飛ばしたという話で、朝日には実名は載っていないけど、これはどうみてもあの安原顕としか思えないわけですよね。春樹さんは「文藝春秋」にこの件に関して文章を書いているみたいだから、それを読んでから、またこのブログでも報告しますけど、おそらくはやむにやまれぬ事情があってのことだとは思うのだけど、やはり一抹の寂しさを感じます。

伝説の編集者が晩節を汚したといえばそれで終わりの話かもしれないけれども、いたたまれない話ですね。まあ、事情がまったくわからないので憶測はやめます。「文藝春秋」読んでからコメントしたほうが賢明でしょう。でも、私の頭の中にはやはり「熊を放つ」の巻末の春樹氏のあとがきの最終部が頭に浮かぶのです。そこにはこう書いてあります。

「最後になったが、『放たれた熊』とも表すべきパワフルな編集者・安原顕氏の助力なしには本書はなかったかもしれない。
                    1981/4/21 村 上 春 樹 」



さて、春樹氏の話をしたところで最近読了した春樹本のことを少し。その本とはなんと「夢で会いましょう」(糸井重里との共著)。私が持っているのはブックオフで買った陽に焼けて変色した105円本。奥付には昭和61年6月15日第一刷発行とありますから、およそ20年前の本です。20年前っていうと、今の会社に勤めはじめた頃のことか、そうすると俺もあの頃に比べるとこんなに茶色に変色して、ページなんかぽろぽろはずれたりしてるんだよな。ふーん、とつぶやいてみる。やっぱり人生ってせつないものですね。(おお、今日のテーマが見えてきたような)。しみじみと古本の表紙を撫でながらそんなことを思ったりしました。

まあ、さすがに春樹本も残りわずかになってきて「やっと俺の出番かよ」とこの本もつぶやいているようなタイミングで、ご登場となったわけですが、通勤の電車の中で5日で読み終わりました。私は個人的にイトイがあまり好きではないので(はっきりいうとキライです。でもある種のしごとは評価してますよ。とくに彼のラジオ番組は比較的聞いていると思います)、おもいっきり後回しになったわけですが、読了の感想としては、すなおに面白かったです。私と同じように「イトイはちょっとな」と思われてて、まだこの本を読まれてない方、時間のある時に面白いとこだけ立ち読みすればそれで十分なんだけどな、というかなり態度の悪い春樹ファンの方、私がそっと「こことここだけ立ち読みしておけば、まずはこの本の6割方の楽しみは味わえますよ、ねえ、だんな。」というおいしいところをそっと耳打ちしてさしあげましょう。

もちろん春樹氏執筆のものが大半ですが、公平を期して「イトイはキライなんだけど、でもこれはおもしろかった」というイトイものも挙げておきます。まずは春樹編から。

「インタヴュー」(氏の後年のインタヴュー嫌いを予言する作品)
「シゲサト・イトイ」(春樹氏の批評眼の鋭さが表れてます)
「ステレオタイプ」(大傑作です。これだけはぜひ読んでみてください。氏の批評精神はやはり痛烈です。)
「ストレート」(海亀とトランプする話です。たった19行の話ですが、最高に面白いですよ。)
「マット」(これは怪作です。春樹くんが書いたに違いないのだけど、こんな文体ではたして彼が文章を書くのかと思わされました。彼の「馬糞=批評家」観が濃厚に出ている作品です。文芸批評家への嫌悪を笑いに昇華させた作品。彼の文体模写ははじめてみました)

ああ、あと「コーヒー」もいいですね。

イトイ編。

「オールナイト」(ミスター・オールナイト。ひもの常吉くんのはなしです。)

「クイズ・ショー」(意外と正攻法ながらよくできてます。)
「ショート・ストップ」(脱力感がすてきです)
「スペシャル・イシュー」(私はこれは一瞬村上氏の作品かと思いました。「雪だるま族の最後」という雑誌の話です。)
「セーター」(これも村上氏かなと思った作品。いい出来です。)
「マスカレード」(「仮面」なんていうからインテリさんがかっこつけに使うんだ。「おめん」にしちまえという話。三島の処女作も「おめんの告白」になっちゃうわけですね。個人的にはこれがいちばん好きかもしれない。)



ということで、「今度はちゃんとやります」ブログはこれで終了。それにしても内田先生のブログ一週間心停止状態なんだけど大丈夫かな。こんなことこれまでなかったような気がするんだけど。気になりますね。更新を熱望しております。先生、がんばれー。では。また。







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Last updated  2006.03.11 08:51:57
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和久希世@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) >「彼はこう言いました。「それもそうだ…
kuro@ Re:「チャンドラーのある」人生(08/18) 新しいお話をお待ちしております。
あああ@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光2(03/03) 非常に面白かったです。 背筋がぞわぞわし…
クロキ@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光2(03/03) 良いお話しをありがとうございます。 泣き…
М17星雲の光と影@ Re[1]:非ジャーナリスト宣言 朝日新聞(02/01) まずしい感想をありがとうございました。 …
映画見直してみると@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) 伊集院がトイレでは拳銃を腰にさして準備…
いい話ですね@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) 最近たまたま伊丹作品の「マルタイの女」…
山下陽光@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) ブログを読んで、 ワクワクがたまらなくな…
ににに@ Re:非ジャーナリスト宣言 朝日新聞(02/01) 文句を言うだけの人っているもんですね ま…
tanabotaturisan@ Re:WILL YOU STILL LOVE ME TOMORROW(07/01) キャロルキングの訳詩ありがとうございま…

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