おで~~ん、でんでん


おで~ん、でん、でん。
とんかつ、とん、とん。ころっけ、ころ、ころ。みそしる、しる、しる。・・・・
こんなフレーズ、覚えていますか?

1960年代のコマーシャルソングです。
私は冬になって、おでんをすると、このフレーズが蘇って来るのですが、はたして、何の宣伝だったか記憶にありません。
知ってます?


「へ~ちゃん、お待たせ。寒い中、ごめんね、待たせちゃって。今日は何食べさせてくれるの?」
「う~~、ホント、寒いね。こんな寒い日は・・・」
「おふでぐんがイイ!!」(二人一緒に叫んでる)

「え~!!ふぐ~?!ふぐは勘弁してよ~。今、不景気で大変なんだよ。」
「ネッ、おでん。おでんにしよう。」
「え~、おでん?おでんって、外で食べると、高くて損した気になっちゃう。あれは家族で、お家で、食べるものよ。」

「さくらちゃん、味噌おでんって、知ってる?」
「味噌おでん?おでんが味噌の中に入ってるの?エ~ッ!見たこと無いし、食べたくな~い。」
「おでんは、薄いおだしの中で、だいこんや卵や、こんにゃく、ちくわ、牛すじを炊いたのが好きというか、常識でしょ?」
「私は関西だけど、白いフワフワはんぺんも好きだな~、蓋を開けると、ぷっくり膨らんでて・・・あれは早く食べないとだめね、しぼんじゃうと悲しくなっちゃう」
「よし、じゃあ、続きはタクシー乗って聞くから。寒いから、早く行こう!」
「え~!?よしって、味噌おでんに決定なの~?くどそうだし、気持ち悪いよ~!!」

6時前だというのに、すっかり冬の夜の暗さが滲じみ始めた街中を、へ~ちゃん達を乗せたタクシーが走り始めました。
通りから、二筋、中に入った、こじんまりとした、和風のお家がお目当てのおでん屋さんです。

「へェ~、ちょっとした、割烹屋さんみたいね。沓脱台が在ってイイ感じね。」
「あら、先生、いらっしゃい。お久しぶり。」(美川憲一風に読んでください)
「あっ、若旦那、お世話になります。」
「先生、運がいいわね、今夜は二人で、一間使ってもらえるから。さ、上ってくださいな。」

「きゃ~!!すっごい、まっっ黒い味噌のなかに、何か入ってるゥ~!!え~?コンニャクと、大根と、さといもと・・・、後は溶岩がポコポコいってるみたいで、なんだかわかんないよ~、ウワ~ッ、ちょっと不気味だよ~!!」

「先生、何?このウルサイ生き物は。お隣にだって、お客様がいらっしゃるから、静かになさい。あと入っているのは、角麩とお肉と焼き豆腐よ。じゃあ、お酒持ってきますから、始めててくださいな。」(美川憲一でお願いします)

「イ~だッ!!自分だって、おかまチックな変な生き物じゃない。へ~ちゃん、失礼しちゃうわ!!」
「でも、ほんと、ビックリしたわ、この味噌のぬかるみの中に、食べ物が入ってるなんて。カルチャーショックだわ。どんな味がするのかしら・・・なんかだわ~・・・」

「おでんって、言葉は、江戸時代の宮中の女性が、田楽のことを『御田』と呼んだのが始まりみたいだから、味噌が使ってあるのが正統なおでんの流れだと思うよ。」
「ふ~ん、私のお家では、関東煮って書いて、カントダキって、呼んでいたのが、おだしで炊いた『おでん』だったわ。」
「あっ、それ判るよ、おじさんの実家では、それをカントニって、呼んでいたから。」

「見た目よりくどくないのね、こくがあって、赤味噌独特のほんのり苦味があって、甘ったるい感じがそんなにしないんだ~。
「大根なんか、味が染みてて美味しい。この角麩ってなに?初めて食べるわ。変った食感ね、ネチってしてて、若旦那に似てるわ~。」
「美濃地方の特産で、関東にも、竹輪麩って、おでんに入れる種があって、それに似てるよね。小麦のグルテンに小麦粉や塩を合わせて、蒸して作るんだよ。魚介類の練り製品とはちょっと違うね。」
「竹輪麩知ってる~、竹輪みたいに円柱状だけど、断面が☆みたくギザギザなのでしょ?色白で、腰はないけど、折れなくて、溶けそうで、溶けなくて、クニクニしてて生麩みたいな味の奴ね。やっぱ、若旦那に似てるし~~~、あはは~~」
「そうそう、それ。関東でしか、おでん種にしなくて、他の地域では話題にならない奴。」

「コンニャクは味噌がいいわね。おでんにコンニャクって、定番だけど、三角にきっても、四角に切っても、隠し包丁いれても、薄味のおでんには無理があるけど、味噌だと美味しいわ。」

「おじさんはサトイモが好きだな~。最後にゆで卵を味噌色になるまで煮て、それをご飯の上で崩して、味噌をかけて食べるのが、また、旨いンだな~。」
「え~っ!!キモイ~!甘くどそう、それじゃあ、後から喉渇いて仕方ないよ。それに口のまわりに、味噌と黄身が付いて、間抜けよ~。」

「私はやっぱり、カントダキがいい!!大阪の道頓堀にたこ梅って、古~いおでん屋さんがあるの。ここの「コロ」と「さえずり」と「たこ」はおいしいわよ。」
「錦3の中に兆里って、おでん屋さんがあるけど、そこも関西風で好きだわ。ご主人も細面でかっこいいし。」

ガラッ!!
「ちょっと、お嬢ちゃん、誰が角麩だって~?お隣りにも、お客様がいらっしゃるから静かにしてくださいって、言ったでしょ?判らない子ね~(怒)あんたが、うちのおでんにビックリするのはかまわないけど、キモち悪イ~とか、不気味~とか、甘くど~とか、キャ~とか大騒ぎしないの!!うちを気に入って来て頂いているお客様に失礼でしょ?文句あるなら、黙って、とっととお帰り!」

「うちの味噌は八丁味噌の熟成したのを混ぜて美味しいけど、お嬢ちゃんの脳味噌がうちと同じトロトロに溶けてちゃ、だめなのよ。」(くどいけど美川憲一で読んでください)
ピシャッ!!
「・・・・・・エ~ン、・・・、でも、私がハシャギ過ぎたのも、ホントだし・・・
でも、あんな竹輪麩に言われたのが悔しいよ~・・・」
「何?竹輪麩って」
「だから~、竹輪なのか、麩なのか、男なのか、女なのか解ン無いのって意味よ~」
「うまいけど・・・・・、帰ろう・・・・、今のが聞こえてたら、頭から味噌かけられそうだから。・・・おじさんは若旦那好きだけどな~。」



おでんの種
いわゆるおだしで煮たおでんに皆さん、何をいれますか?
紀文のデータでは、東京、1位大根、2位コンニャク、3位昆布、4位卵です。
名古屋は同じく大根、コンニャク、はんぺん、卵の順で、大阪は、コンニャク、卵、大根、ちくわの順です。
東京、名古屋で3位の昆布、はんぺんは大阪では12位10位と人気がありません。

ところが、新潟の蒲鉾屋さんが4万人からアンケートを取って、好きなおでん種を聞くと、1位6174人大根、2位4477人卵、3位1972人餅入り巾着、4位1932人はんぺんで、コンニャクは7位1140人と、振るいません。
みなさん、コンニャクは入れるけど、実は好きじゃない人が多いです。
コンニャクはやはり味噌おでんに合うと思います。

私は「餅入り巾着」が嫌いです。巾着は中に何が入っているか、食べるまで秘密なところがいいのです。
噛むと中から、ジュワッと火傷しそうな汁が溢れてくるのをハフハフいいながら、しかも、だしに入れて間がないのを選ぶと、干瓢が上手く噛み切れなくて、苦労しながら一口目を食べるのが楽しみなんです。
噛みながら、歯と舌と唇で、「オッ、シラタキが入いってるな?ひじきに椎茸ね、・・・ハフハフ・・・、アチッ!前歯の裏に鶉の卵の黄身が張り付いた!」って、食べるのが巾着の醍醐味だと思います。

それが、餅入り巾着は、歯が油揚げを通過する途中で、下にある餅の感触を判ってしまい、「なんだ、この店も餅かよ~」って、噛み終える行程の快感が無いのです。
出来合いの餅入り巾着を入れているおでん屋は猛省すべきです。


セブン・イレブンやローソンなどでは、出汁を、北海道は宗田節と昆布、東北・関東がかつを節、関西がかつを節と昆布、九州はかつを節と昆布と鶏などと地域性を考えて作っているそうです。
種も、北海道では笹タケノコやツブ貝、九州はイカ天、沖縄ではテビチ(豚足)が入いります!!牛スジは今や全国区になりつつあります。

「ギョウザ巻き」というか「ギョウザ天」ってご存知ですか?あのギョウザです。あれを、ごぼう天やイカ天のように芯にして、すり身で巻いて揚げてあるのだそうです。福岡生まれらしいですが、千葉、宮城、東京、栃木と脈絡なく点在しているおでん種です。
愛知県にもあるのでしょうか?一度食べてみたいです。
隠れギョウザ巻きファンの方、教えてください!

個人的には、おでん種は煮込んで、翌日でも美味しい物が好きです。練り製品は煮込むとどれも同じ味になって、翌日は食べたくありません。

つる軒  名古屋市千種区内山3丁目16-13 052-731-0367 18:00~21:00 日、祝休 
要予約 人数分の日数前から予約できます。5人なら5日前からです。
     味噌おでんの老舗です。若旦那がユニークです。お酒は明眸です。

兆里   名古屋市中区錦3丁目10-28 ニシベビルB1 052-962-1725日、祝休
     上品なおでんが一皿ごとに出てきます。一品料理も美味しいです。

味軒   名古屋市中村区名駅1丁目2-1名鉄百貨店9階 052-585-2926
     手軽に味噌おでんが食べられます。食堂街で30年以上営業しているそうです。

おでん会席 MARU 名古屋市千種区四ッ谷通2丁目5GAZA四ッ谷B1 
052-783-2066 17:00~23:00 火、第3水休 
かわいい女将さんとつるつる頭のご主人がやさしいです。牛すじと九条ねぎ、揚げ味噌飯玉がお薦めです。

とん八  名古屋市東区代官町32-5 052-931-2301 11:00~13:00 17:00~19:30
      日、祝休   メニュウは味噌おでん、関東煮、串かつ(味噌でもソースでも食べられます)ご飯、赤だしの5種類のみ!しかもご飯以外はすべて120円。 手作りの手拭きが真っ白で気持ちいいです。

金山サルーン 名古屋市中区金山4丁目2-18 グランビル金山 052-323-1123
17:00~3:00 日休
通りから細い路地に入った、薄暗いなかに小さな看板がひとつ。アプローチもおしゃれな和風のお店です。靴を脱いで寛いでください。
焼酎、日本酒が多くありますから酒飲みにもお薦めです。
お店の向かいが綺麗なエッチホテルなので、二人で行くと、誤解されるか、喜ばれるか・・・腕の見せ所かな?

自販機のおでん 大須、アメ横ビル2階の自販機コーナーにおでんの缶詰があります!
さつまあげ、こんにゃく、ちくわ、うずら卵、昆布の5種に「つみれ」入りと「牛すじ」入りの2種類の缶があります。ちゃんと熱いです。
南区の天狗缶詰株式会社製造で、東京秋葉原では、数年前から売られ、インターネットのB級グルメでは有名です。           


10年ほど前に書かれた文章ですので、お店の情報などが違っている可能性があります。
ご自分でご確認のうえ、行ってください。







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