Nov 19, 2011
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aoihana




ぼくの心をこうも落ち着かなくさせているのは、
あの話にあった宝物のせいではない。

宝物への執着心なんて
およそぼくには無縁のことだ。
だがあの青い花だけは、なんとしても見たい。

ずっとあの花だけが気にかかって、
他のことは何ひとつ考えられない。
こんな気持ちになることは今まで一度もなかったのに。

まるで今夢から覚めたところとでもいうか、

ふつうの暮らしをしていて、
花なんかに気をとられる人はいないだろう。
それも、たった一輪の花に奇妙な情熱を傾けるなんて、
聞いたためしがない。

あの旅人はいったいこどから来たのだろう。
ここいらで、ああいう人に出会ったものは
ひとりもいやしない。

ああ、それにしてもどうしてこのぼくだけが、
あの人の話にこうまでも
心を動かされたのだろう。
他の連中も同じ話を聞きながら、

そういうぼくにしてからが、この奇妙な心境を
どうにも言葉に言い表せないとは。
ときどき、ぼうっとなるほどいい気持ちだ。

ところが、いったんあの花が
はっきり目に浮かばなくなってくると、

こんな気持ちはだれにも分かってもらえそうもない。
もしあれほど鮮明に浮かんで見えなかったら、
さては気が狂った自分でも思うに違いない。

あの時からというもの、
すべてがずっと身近に感じられだした。
以前に太古の話を聞いたことがあるが、
なんでも動物も樹木も岩石も、
人間と話せたという。
ところが今の今にも、
その物言わぬものたちがぼくに
語りかけようとしているし、
ぼくの方でも以心伝心でそれが読みとれるような気がする。

思うに、ぼくが知らない
さまざまな言葉がまだ存在するのだ。
もしそれを習い覚えたら、いろんなことが
はるかに深く理解できるだろうに----------
















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Last updated  Nov 19, 2011 09:38:39 PM
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