「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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14話 【水面下】
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14話 (潮) 【水面下】―スイメンカ―
「……もう大丈夫ですか?」
そう尋ねてくる声音は優しく、不思議とそのことばで落ち付くのだった。私はこくんと頷く。
安堵したのか「よかった」と微笑む彼は、さきほど『泣かせたいわけじゃない』と言った。その気持ちに嘘偽りはないのかもしれない。
彼は同世代の平均に比べたら体重も軽そうな体型だけど、見事な背負い投げで痴漢の魔の手から救ってくれたことがある。
恐らく柔道などの武道を嗜んでいるのだと思う。そんな彼が、女1人どうこう出来ないはずがない。
いまここには私と彼の2人しかいないのだから、手を出そうと思えば出せたはずだ。
(都築さんとは違う……のね。同じ『好意』でも、扱い方とか……全然違う……。乱暴じゃ、ない……)
それとも相手を油断をさせてから垂らし込むタイプだろうか。だとしたら、警戒はしておいた方がいい。
そんな私の心中など知る由もない不破犬君は、真逆の冷静さでふいっと宙を見た。
「話の途中、八女さんの顔色が変わったくだりがありましたね」
「……恥ずかしながら、あの時は自分のことで精一杯でそこまで注意を払っていなかったけど、脅えていたことは覚えてる」
どうしてそんなことを言い出すのだろうと思いながらも、話の流れで私は認める発言をした。
「……前から変だと思ってたんだ。八女さんは本部の人間を避けてる。そんな気がしてならない」
不破犬君の意見を聞いて、そう言えばと思い至る。
「絶対会おうとしないね。挨拶だけして、そそくさと退散する感じ。
でも本部だけじゃなくて店長や副店長も苦手なようだし、単に『権力者』が苦手なんじゃない?」
「血気盛んな女豹みたいな人ですよ? 僕が思うに、八女芙蓉という女性は喧嘩を売られたら速攻で買うタイプです。
それなのに、都築のことばに反応しながらも、噛み付くどころか脅えてしまった。もしかしてこれって逆なんじゃないでしょうか」
「逆って?」
「既に噛み付いた後だったということです」
「権力者に逆らって、お灸を据えられた過去があるって言いたいの?」
「えぇ」
「……確かにあの時、『あんたたち本部や上層部は、いつもそうやって女性社員を食い物に』って……悔しそうに言ってたっけ」
「間違いない。八女さんも何かしらの事件に遭遇したことがあるんだ。それが原因で権力者に対しトラウマを持ってるんじゃないだろうか」
「チラッと小耳に挟んだことがあるんだけど……八女チーフって入社してすぐ、花形のサービスカウンターに配属されたみたいなのね。
あそこは才色兼備じゃないと就けないって噂が実しやかに囁かれてるんだよね。八女チーフほどの美貌なら、さもありなんって思うじゃない?」
「まぁ性格に難はありますけど、おもて面はいいですしね」
渋々認める不破犬君に私も同意しつつ、
「それがある日突然、POSオペレータ異動を命じられたんだって。私は人員確保のためって聞いたけど、いま思うと、それも怪しいかなって」
「権力者に逆らった結果、厄介払いだとばかりに左遷を食らったのかもしれませんね。それこそ伊神さんが香港に飛ばされてしまったように」
「……うわ……。十分あり得る話だなぁって思えてきた」
「ただそうなると……困りましたね。ユナイソンの内部で何かが起きてるってことじゃないですか。一部の人間しか知らない何かが。一体何が……」
そう呟いたきり、不破犬君は思考に耽る。新たな謎解きに夢中になっている展開は、私に好都合だった。
このまま恋の応戦を続ける気はない。その手の話題も避けるべきだ。だってもしこれ以上迫られたら、今度はキスだけでは済まなくなる気がする。
どうやって不破犬君に気取られることなく、この部屋から追い出せるだろう。
「明日も仕事でしょ? 私も早番だから、今日はこの辺で……」
「僕は遅番です。それに潮さんは明日休みでしょう?」
眼鏡越しに不破犬君の目が光る。しまった、質問を間違えた! ていうか、なんで人の勤務計画を調査済みなの!?
「だ、だから何だって言うのよ!?」
「帰ります。今日はもう遅いですし」
「へ?」
肩透かしを食らい、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてしまった。
不破犬君は気付いているだろうに、そこには触れず、少しだけ眉根をきゅっと寄せた。
「思った以上にキナ臭い感じになってきてしまいました。ちょっと腑に落ちないこともあるので、調べてみようと思います」
八女チーフの過去に何があったのか? そしてユナイソンに何が起きているのか? その答えを見付けようとしているのだ。
「調べるって、どうやって」
「あてがないわけではありません」
「……分かった。私もやる」
きっぱり言い切った私を、彼は驚いた顔で見つめ返した。
自分でも思う。確かにこういうのは私の柄じゃない。でも私の上司のことだし、どうしたって気になってしまうのだ。
「いいんですか? 鬼に金棒です。でも、くれぐれも無茶はしないでくださいね」
「分かった、約束する。じゃあ手分けして訊いてみよう? 私は杣庄に聞くから、あなたは八女チーフの周囲を探ってくれる?」
「となると必然的に女傑四人衆をあたることになるのか。……苦手なんだよな、あの人たち」
「杣庄と話したいなら代わるけど?」
「いえ、それは辞退します。では何か分かったら、お互い情報を交換するということで」
「うん」
本当に意外なことに、不破犬君は玄関へ向かうと靴を履き、帰る素振りを見せた。
私は呆気に取られ、彼がドアノブに手を掛けるまで何もことばを発することができない。
「今日は、急にお邪魔してすみませんでした」
「あ、……うん」
「夕飯ご馳走さまでした。……それじゃ」
くしゃっと笑った。笑顔だった。
強引なキスをした時の、あの切羽詰まった表情がまるで嘘のようだ。
「……気を付けて」
「ありがとうございます。潮さんも、ちゃんと施錠してくださいね。それを確認したら、帰ります」
そう言われたら、早々に閉めざるを得ない。「お休み」とお互い伝えあい、ドアを閉め、鍵をかける。
しばらくして遠ざかっていく音は、彼の足音だろう。
「……………………………………はぁぁぁぁぁぁぁ………………」
ドアを背に、ずるずるとしゃがみ込む。そのまま体操座りをして、深い深い溜息をついた。
とにかく長い1日だった。
立て続けに驚くような出来事に見舞われ、心も体もくたくただ。
今日はこれ以上八女チーフのこと、考えられそうにないかもしれない。
でも明日からは、本格的に動こうと思う。自分に出来ることを。
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