【図解でおさらい】緊急性の高い13症状
橋本氏などによると、17日夜に都内のすし店で知人5人と飲酒を伴う会食をした。店を借り切って2人組と3人組の2グループと順に会食する予定だったが一時的に時間帯が重なり、6人となったという。
橋本氏は「仕事上で意見交換している知人との会食で、感染症対策はしっかりと講じていた」と釈明しつつ「一時的だったとしても、時間が重なってしまったことはいけなかった。今後は極力(飲食を伴う)懇談は避けていきたい」と述べた。
政府は感染リスクが高まるとして、5人以上の会食を控えるよう呼びかけている。政治家の会食を巡っては、菅義偉首相が14日夜に東京・銀座のステーキ店で、自民党の二階俊博幹事長らと8人程度で会食して批判を浴び、16日に陳謝していた。【松本晃】
報道各社の12月の世論調査で菅内閣の支持率が急落し、政府・与党が危機感を強めている。
新型コロナウイルス感染者の急増に的確に対処できておらず、相次ぐ「政治とカネ」の問題も影響しているとの見方が出ている。与党内からは、需要喚起策「Go To」キャンペーンが感染を広げているとみて問題視する声も出始めた。
読売新聞の4~6日の調査によると、支持率は前月から8ポイント減の61%。JNNが5、6両日に実施した調査では同11.5ポイント減の55.3%と大きく落ち込んだ。いずれの調査でも、政府の感染対策を「評価しない」が「評価する」を上回った。
自民党の二階俊博幹事長は7日の記者会見で「うれしいことではないが、一喜一憂せず現下の情勢に真剣に取り組みたい」と強調。公明党の山口那津男代表は記者団に「重症者の増加、医療体制逼迫(ひっぱく)への不安が影響している」との見方を示した。
与党内ではGo To事業への疑問が相次ぐ。自民党参院幹部は「『感染拡大は止めたいが、Go Toは止めない』では国民は理解できない」と指摘。公明党関係者も「政府が旅行を奨励すれば国民は緩む」と感染状況悪化との因果関係を認めた。「やめればGo Toのせいだと言われる。政府は引けない」とも語った。
自民党のある閣僚経験者は菅義偉首相の4日の会見に触れ、「コロナ対策について説明すべきことを説明していない」と批判。政治資金規正法などの違反が疑われる安倍晋三前首相の「桜を見る会」問題と吉川貴盛元農林水産相の金銭授受疑惑が立て続けに表面化したことから、「支持率はどんどん下がるだろう」と漏らした。
一方、首相官邸で首相を補佐する岡田直樹官房副長官は7日の会見で、Go Toについて「感染拡大に留意しながら弾力的、臨機応変な運用を図る」と理解を求めた。
先の臨時国会で首相を攻めあぐねた野党はほくそ笑んでいる。立憲民主党幹部は「Go Toを含むコロナ対策と疑惑で政府・与党への不信が広がった」と断じ、共産党の小池晃書記局長は会見で「首相がコロナ対応で迷走する姿に国民が失望している」と語った。
菅義偉首相は14日、自民党の長島昭久、武部新両衆院議員らと首相官邸で会い、国民一律5万円の定額給付金支給を盛り込んだ40兆円規模の追加経済対策などを求める要望書を受け取った。首相は新たな新型コロナウイルス対応の必要性を訴える長島氏らに対し「そういう方向で頑張る」と応じた。
麻生太郎副総理兼財務相は26日、東京都内で講演し、日本の新型コロナウイルス対応に関し「マスクを着け、手を洗い、出勤をずらし、いろいろな努力をやった。民度が高いって言ったらぐちゃぐちゃ言われたが、世界中が日本の民度が高いと言っているんだからいいじゃないか」と述べた。
日本と欧米「民度の違い」 コロナ死者数で自説―麻生氏
麻生氏は6月に国会で、日本での新型コロナによる死者数が欧米より少ないことについて「民度が違う」と答弁し、批判を浴びた。
読売旅行(東京)は22日までに、同社が企画・募集した北海道ツアーで、参加した60~70代の男女3人が新型コロナウイルスに感染したことが判明したと発表した。3人とも軽症か無症状だが、うち1人は症状がありながら見落とされて参加していた。
同社によると、ツアーは今月中旬に3泊4日の日程で、乗務員3人を含む41人が参加。関西地方から空路で新千歳空港に到着した際、乗務員が参加者から回収した健康チェックシートに異常はないと判断して、札幌などの道内をバスで周遊した。
しかし、男性客の1人が帰宅後に症状を訴え、PCR検査を受けたところ、陽性が判明。保健所からの連絡でチェックシートを調べ直した結果、この男性客がせきや味覚障害などの症状を尋ねる項目に「はい」とチェックしていたのを見落としていたことが判明した。
政府の観光支援事業「Go To トラベル」が再び混乱に陥った。大手旅行予約サイトで事前に配分された割引原資の給付金枠が不足し、割引を一時制限する動きが出た。政府は予算不足があれば追加配分できる仕組みを整え、再発を防ぐ方針。だが、事業をめぐる度重なる迷走に、制度設計の不備を指摘する声も高まっている。
コース予約など条件に GoToイート、「錬金術」封じ―農水省
「正直、『あぜんとした』と言うほかない」。福岡県のある中堅旅行会社の幹部は、再三の混乱を嘆く。
事業は当初からつまずいた。開始時期を8月上旬から前倒しした一方、新型コロナウイルス感染者が増加した東京都を急きょ対象から除外。事業者への周知期間は短く、現場は顧客への説明や月100件を超える運営事務局への書類提出に追われたという。9月15日までの割引支援額735億円は、予算総額の約5%。利用は伸び悩んだ。
10月に東京が対象に入ると、今度は利用者の急増に伴い一部サイトが割引を制限する事態となった。政府は給付金枠の追加配分で解決を図る考えだが、予約の集中する大手との間で受け取れる給付金枠の差が広がりかねない。先の幹部は「現場ではあきれたという声が上がっている。(制度に)平等感はない」と打ち明ける。
赤羽一嘉国土交通相は13日の記者会見で「大手に偏るという意図はない」と述べ、制度の不備を否定した。ただ、日本総合研究所の松村秀樹チーフエコノミストは「公平性に欠け、潤っているところとそうでないところが二極化する結果を招いている」と指摘している。
コロナ危機が深まる中で政治家の発言の変節が際立つ。この国の政治家がコロナ危機の中で何を発信し、発言をどう変えてきたのか──。
【写真】「分科会から政府への提言」と映る画面の前で、指し棒を持ち説明をする西村康稔・経済再生相
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https://www.news-postseven.com/archives/20201208_1618554.html?IMAGE&PAGE=2
加藤勝信・官房長官といえば、厚労相時代には「37.5度の発熱が4日間以上」という政府が定めた基準を、「われわれから見れば誤解」と言い放って国民のせいにした。官房長官になってからも“逃げっぷり”は健在だ。
臨時国会で新型コロナのワクチン費用の全額を国が負担する予防接種法改正案が成立した。同法ではワクチン接種を国民の「努力義務」と位置づけているが、専門家からは副反応のリスクが指摘されている。
加藤氏は会見(11月19日)でワクチンを接種するかについて問われると、「様々な情報を勘案して判断する」とウヤムヤにした。大臣でさえワクチンを打つのが怖いのに、国民には努力義務を課す。副反応が出ても自己責任ということなのだ。
感染拡大の見通しについても、根拠なき楽観論を振りまいた。
「直ちに病床が逼迫する状況にはない」(11月9日の会見)と強調したものの、病床使用率はその翌週(11月18日集計)に9都道府県、翌々週(25日集計)では15都道府県でステージIII(感染急増)と瞬く間に逼迫していった。
一方、政府のコロナ対策のスポークスマンなのに発言が一貫しないのが西村康稔・経済再生相だ。
北海道で1日の感染者が200人を突破し、日本医師会会長がGo To 見直しを求めた11月13日の会見が迷走を象徴していた。
「今の感染状況が続けば、医療機関が逼迫するので、何とか減少傾向にしていきたい」と警戒を呼びかけたかと思うと、
「一時的に検査件数が増え、感染者数が増加しているが、これは2次、3次感染を防ぐことにつながる。Go Toトラベルの対象地域から、現時点で除外することは考えていない」と見直しを否定。
さらに北海道旅行をするかどうかは「国民のみなさんの判断だと思います。現実には感染が広がり、宿泊施設の稼働率も少し下がってきていると聞いています」と、これまた旅行を勧めているのか、止めているのかわからない。
※週刊ポスト2020年12月18日号
参院は3日、改正国会議員歳費法に基づき参院議員が自主的に返納した歳費が、同法施行の昨年8月から今年11月分までの累計で1億9765万9000円になったと発表した。
同法は、参院定数6増に伴う経費増への批判を和らげるのを狙いに昨年6月に成立。参院事務局は年2回、返納状況を参院議院運営委員会理事会に報告することになっている。ただし、各議員の対応や返納者数などは「自主返納の趣旨を損なう恐れがある」として公表していない。
菅義偉首相は「Go To キャンペーンのせいじゃない」と言い張り、麻生太郎副総理は「コロナでカネに困っている方は少ない」と嘯き、小池百合子・東京都知事は「ロックダウンは私の言葉じゃない」と言い出した。
【写真】透明なマウスガードをしたピンクのネクタイ姿の麻生太郎・副総理。他、スカーフ姿の小池百合子知事も
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https://www.news-postseven.com/archives/20201207_1618420.html?IMAGE&PAGE=2
コロナ危機が深まる中で政治家の発言の変節が際立つ。コロコロと変わる発言によって、感染が拡大してしまう可能性もさえあるのだ。
「そんなに感染しない」
総理大臣が崖の手前でブレーキを踏むのを躊躇すれば、国民は崖から転落してしまう。それなのに菅首相は「Go To キャンペーンは安全」と言い続けて感染を広げた。
菅首相にとってGo To は官房長官時代からの看板政策だ。
そもそも閣議決定では、「感染症の拡大が収束し、国民の不安が払拭された後」に支援策を講じるとなっていたが、菅氏は感染第2波が拡大しつつあった今年7月、「この問題(感染拡大)は圧倒的に東京問題と言っても過言ではない」(7月11日の北海道講演)と発言し、東京発着を除外してGo To トラベルを見切り発車させた。
その判断について『文藝春秋』9月号のインタビューでこう語っている。
「『三密』を避けるなど対策をきっちり取っていれば、感染のリスクは非常に低いんです」
その後も強気一辺倒でGo To を推進。自民党総裁選候補者討論会(9月12日)では、「この1か月半の間に780万人の方がキャンペーンを利用しまして、コロナにかかった方が7人だった。しっかり守るべきことを守ればコロナにはそんなに感染しないということがわかった」と、“どうだ”とばかりに胸を張って見せた。
ところが、11月に入って感染者数は過去最高を更新、キャンペーン見直しを求める声が一段と強まった。それでも、菅首相はブレーキを踏もうとはしなかった。
「Go To キャンペーンの見直しについては、専門家も『現時点においてそのような状況にはない』という認識を示している」(11月13日ぶら下がり)
専門家の“お墨付き”を楯に使ったのだ。
それに対して、責任を転嫁された形の政府の感染症対策分科会は「今まで通りの対応では、早晩、公衆衛生体制および医療提供体制が逼迫する可能性が高い」と見直しを求め、分科会会長の尾身茂氏が会見を開いて「政府の英断を心からお願いしたい」と訴えた。
そこまでいわれると、“英断”が苦手の菅首相もブレーキをかけるしかない。渋々、大阪市と札幌市に向かうGo To トラベルの新規予約を一時停止した。何と説明したか。
「国民の皆さんの命と暮らしを守る、こうしたことを全力で取り組んでいきたい」(11月23日の講演)
しかも、「国民の命を守る」とGo To 見直しを決めながら、現在もこう主張し続けているのだ。
「(Go To キャンペーンが)感染拡大の主要な原因とのエビデンス(科学的根拠)は現在のところ存在しない」(11月30日参院本会議)
支離滅裂ではないだろうか。
※週刊ポスト2020年12月18日号
新型コロナウイルス感染者が増えた都市を封鎖し、感染源を断つ。いわゆるロックダウンが世界中で強行されるなか、日本では政府や自治体から「自粛の要請」という形での感染対策が行われている。
ところが、一方で自粛とは相反する政策も実行され続けている。「Go To トラベル」だ。感染が再拡大する北海道と大阪府は、札幌市と大阪市を対象から外すよう国に要請。11月24日に承認され、対象から外された。
政府の方針では、まずは都道府県知事が除外を判断して政府が最終決定する。
「東京都も感染拡大が勢いを増していますが、小池百合子都知事は、“国が判断する必要がある”という姿勢を貫いています。これに対して政府は、“各自治体に任せる”という態度で平行線のまま。一刻を争ういまの状況で、責任のなすりあいをしている場合ではないのですが……」(政治ジャーナリスト)
政府は「Go To トラベルが感染を拡大させているエビデンスはない」として否定しているが、第3波の拡大に影響を及ぼしているとの見方は強い。にもかかわらず、政府が「中止」と言えないのには理由がある。
「Go To トラベルは、菅首相が官房長官時代から旗振り役になって進めてきた“肝いりの看板政策”です。経済回復を優先する立場はもちろんですが、首相の面子もあって、なかなか中止には踏み切れないとの見方もあります。そればかりか11月29日には、期限の来年1月31日以降も、感染状況をふまえた見直しを行いながら延長する意向が明らかになりました」(全国紙政治部記者)
政府はいつまで悠長なことを言っていられるだろうか。Go To トラベルが感染者急増の“原因”となる可能性が指摘されている。
「その原因とは、11月21日からあった3連休です。連休を前に日本医師会の中川俊男会長が“移動を自粛してもらうことが大事”と発言したのに対し、加藤官房長官は“旅行者や観光事業者が感染拡大の防止対策をしっかり実施すれば、移動による感染リスクを低く抑えることができる”と説明しました。
佐賀県や兵庫県など“県をまたぐ移動の自粛”を県民に呼び掛けた自治体はありましたが、“我慢の3連休”とはならず、多くの人が観光地に詰めかけてしまった。12月上旬に、全国各地で感染者数が増える危険性は否定できません。今後、“局地的なロックダウン”を行わざるを得ない地域は増え続けるでしょう」(医療ジャーナリスト)
国の判断を仰いでいる時間はない。年末年始にしかできない各自治体の迅速な対応、思い切った決断が求められている。
※女性セブン2020年12月17日号
新型コロナウイルス第3波の襲来によって、一時中止や見直しを余儀なくされているGoToトラベル。自粛営業から一転、フル稼働に沸いていた各地のホテルは再び苦しい経営を強いられることになりそうだが、そもそも付け焼刃的なGo To事業の推進で、ホテルは大混乱に陥っていた。ホテル評論家の瀧澤信秋氏が現場レポートする。
* * *
7月下旬にスタートしたGoToトラベル。改変やルール追加も続き、ここにきても相も変わらず物議を醸し出している。最近ではコロナ第3波によって中止を決定する自治体も出ているが、一方でGoTトラベルと感染者の増加に因果関係はないとする主張もあり、“Go To推進”と“Go To中止”の世論が拮抗しているような状況になっている。
一方で、コロナ禍で閑古鳥が鳴いていたホテルにも多くの人が訪れるようになり、賑わいを取り戻した施設が増えたことはGoTo効果であることに間違いない。ホテルのサービス向上にはスタッフのモチベーションアップは一番の特効薬。宿泊客の増加でスタッフの意欲も再び高まっていた。
来訪する宿泊客は、常連よりもGoToの性格上初めて訪れる人が多い、という話をあちこちのホテル関係者から聞く。そんなホテルの様子を確認すべく実際に取材に出向くと、ゲスト全員に快適なステイをしてほしいという思いがホテル側に溢れていたが、同時にGoToならではの涙ぐましい努力も現場にはあった。
チェックイン待ちの行列に苦慮する人気ホテル
都心の人気観光スポットに立地する「ヒルトン東京お台場」(東京都港区)。全室にバルコニーが設けられ、風が吹き抜けるような客室で気軽にリゾート感が味わえることもあり、Go To下でも人気ホテルのひとつだ。
ところが、チェックイン時刻の15時頃訪れてみると、まず目に入ったのはチェックイン待ちの長い行列だった。
規模の大きなホテルはチェックインひとつとってみても大変だ。客室数の多い高級ホテルともなれば、ビジネスホテルで見かける自動チェックイン機とはいかず、館内の説明にも相応の時間を要す。とりわけ繁忙日にはこうしたホテルでのチェックインの行列はある種見慣れた光景でもあるが、特にGoTo下ではキャンペーンの説明も必須で、通常の倍以上の時間がかかってしまうとスタッフは平身低頭だ。
とはいえ、何とかチェックイン待ちの時間を減らそうと、ヒルトン東京では専任スタッフ数名が列に並ぶゲストの元へ。お詫びも兼ねてGoToの説明などを事前に行い、チェックインがスムーズにできるようテキパキこなしている。
他方で外資系ホテルならではの難しさもある。会員か非会員かで手続きが異なることや、会員の中にも上級会員など種別があり、対応が異なるからだ。
印象的だったのは、ロビーにずらりと並ぶ大振りのソファにチェックイン待ちの人が大勢座っている光景だ。見渡せる範囲で数えてみても16台+オットマン(足乗せ用のソファ)2台。その他にも各所にソファが置かれている。チェックインの列に並ぶのはお父さんなど代表者1名で、その他同行者はソファでくつろいだり館内の見学などをしている。
ホテル関係者は、「すぐにウェイティングの時間を短縮させることは難しいかもしれないが、待ち時間を短く感じられよう、また少しでもストレス軽減できるよう何かできないか試行錯誤している」と話す。だが、時間短縮を目指すあまり、お客様と話せる時間が短くなってしまい、おもてなしの心やサービスとの間で忸怩たる思いもあるという。
ニューノーマル時代にフィットした宿泊特化型ホテル
一方、宿泊特化タイプのホテルはどうであろうか。10月8日に開業した「プリンス スマート イン恵比寿」(東京都渋谷区)は、ICTやAI技術を導入しニューノーマル社会の新たなホテルを目指している。
ホテル名の通りスマートフォンのアプリなどを活用、予約にはじまりスマホキーに至るまでシームレスなサービスが特徴的であり、手続きには多少の慣れは必要だろうがチェックイン時もスタッフと対面せずチェックイン機で行える。
もちろんコロナ以前からのプロジェクトにより誕生したホテルであるが、結果としてコロナ禍とニューノーマルという時世にフィットしたホテルとなった。プリンス スマート インは2020年冬には熱海に、2021年夏頃には京都、2022年には沖縄へと全国へ展開していくという。
また、同ホテルは客室には用意されていないアメニティの提供方法があるのも特徴的だ。宿泊特化型ホテルなどでは、通常フロント横あたりのワゴンにどさっと入ったアメニティバーをよく見かけるが、プリンス スマート イン恵比寿では、1人分ずつのアメニティが入ったオシャレな紙袋がディスプレイされ、一見すると有料にも思える特別感を見事に演出している。
袋には丸いカラフルなシールが貼られており、色で男女それぞれ見分けられるので分かりやすい。袋単位の提供なので多く持って行かれないだろうし、余分なアメニティに触れないから感染予防という点でも効果があるだろう。ITなど最新技術を駆使して省人力化を図るホテルだけに、かえって温もりが伝わってきた。
待ち時間にビリヤードもできるリゾートホテル
思いがけずコロナ禍でフィットしたサービスは、リゾートホテルでも見られる。「アンダリゾート伊豆高原」(静岡県伊東市)は、従前から宿泊料金に館内の飲食やアクティビティなどすべて含まれた“オールインクルーシブスタイル”が特色で人気を博してきた。そんなホテルだけにGoTo下では満室という日が珍しくないという。
チェックイン体制でいえば、他のホテルと同様にGoToの説明に加えて各種やりとりなど通常よりも時間を要することになるが、こちらのロビーには充実したフリードリンクをはじめ、ビリヤードなどゲーム類も揃っており、チェックイン待ちの時間もゲストを飽きさせない。これらサービスもオールインクルーシブである。
館内施設は宿泊料金だけで基本的に使え、個別の説明や追加精算もない。そのため、チェックインもアウトも通常のリゾートホテルに比べて「時短」を実現しているという。とはいえ、馴染みのスタッフと話すことを楽しみに来るゲストも多く、「Go Toによって接客時間が少なくなってしまっているのが悩み」とホテルスタッフは話す。
Go Toに振り回されたホテル業界の苦悩
宿泊キャンペーンの成果や現場の混乱など、Go Toトラベルの評価を総括するのはコロナが終息してからになるだろう。“経済活動との両立”という名の下に大々的にキャンペーンは進められてきたが、次々と改変したり、新たに設けられるルールに振り回されたりしているのは、キャンペーン利用者だけでなく宿泊施設も同じである。特に現場の苦労は計り知れない。
いまホテル業界は過去にない変革を迫られている過渡期だけに、日々強いプレッシャーと闘っている。時にゲストとホテルの意思疎通がうまくいかないこともあるだろうが、それもニューノーマル時代の経験値として、新たなサービス向上策につなげていくしかなさそうだ。
一向に衰える気配の無い新型コロナウイルス。第3波は日本だけでなく、世界を襲っている。感染の勢いが衰えず、過去最多の感染者数の更新が続くアメリカでは、各州で続々と外出自粛や店舗の営業短縮などの規制が発出され、オーストリアは12月6日まで全土をロックダウン(都市封鎖)する。ロックダウンを避けて独自路線を取ってきたスウェーデンも感染拡大に耐え切れず、9人以上の集会やジム、外食などの中止に踏み切った。
気になるのは、日本でも外出規制や営業自粛要請のような措置が取られるかどうかだ。
「すでに東京などの自治体は第1波、第2波で対策の財源を使い切っていて、独自の対策を取りにくい。もう地方には、自粛を求めるだけのカネがないんです。菅総理がGo To見直しは自治体に任せると打ち出した直後、小池百合子都知事が、『国が責任を持って判断すべき』と猛反発したのは、国と自治体のどちらがカネを出すかという“綱引き”に過ぎない。いずれ、国がカネを出す形で首長らが納得し、それぞれの自治体主導で措置が打ち出されることになるでしょう」(官邸関係者)
感染拡大状況は都市部とそれ以外で極端に違うので、全国一律の規制はやりづらい。今後は地域の状況に応じた「局地的ロックダウン」が想定される。
ドイツやスペイン、イギリスではすでに7月から各地域の判断で行われており、国内でも北海道では札幌市を対象に11月17日から27日まで不要不急の外出などの自粛要請が出た。大阪府も27日から15日間、大阪市内の飲食店を対象に、営業時間を21時までに短縮するよう要請することを決めた。東京都も酒などを提供する飲食店に対し、11月28日から20日間の営業時間を22時までに短縮することを要請した。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんはいう。
「局地的なロックダウンは全国封鎖による経済的ダメージを軽減しつつ、ピンポイントで感染拡大が抑えられ、なおかつ費用がそれほどかからない利点があります。このまま感染者が増えれば、12月から全国各地で局地的ロックダウンが行われるかもしれません」
昭和大学客員教授(感染症)の二木芳人さんが今後の感染拡大を予測する。
「国はようやくGo Toを見直しましたが、少なくとも12月の第1週までは感染者の増加傾向が続くと予想されます。そのまま感染者増に歯止めがかからなければ、クリスマスもお正月も都市部在住者にはステイホームが求められるはずです」
「大型17連休でステイホーム」も検討中
例年なら年末年始に向けて、クリスマスや忘年会などのイベントが目白押しだが、今年は寂しい師走になりそうだ。
「国は11月末までとされていたイベント開催の収容人数の制限を来年2月まで延長することを発表しました。ただし、Go Toのように方針がコロコロ変わることも想定内。年末の格闘技やスポーツなどのイベント、クリスマスコンサートや音楽フェスなどカウントダウンイベントも次々と無観客になる可能性もあります」(前出・官邸関係者)
白い発泡スチロール箱をのせた運搬車「ターレ」がせわしなく行き交う。目が眩むような膨大な種類の鮮魚、貝、えび、たこ、いか、海藻などの水産物がところ狭しと並ぶ。商品を冷やすための大量の氷から漂う冷気を、仲卸たちの威勢のいい声が切り裂いていく──。
東京・豊洲市場には水産仲卸業者が約480店舗あり、約4000人が働く。水産物の卸売市場としては世界最大規模を誇り、日本の「食」文化の一大中心地でもある。いま、その市場が新型コロナウイルス感染拡大の脅威に晒されている。
8月15日に最初の感染者が出て以降、これまでの感染者は合計114人(11月23日現在)。特に11月に入ってから急増し、20日までの間だけで101人もの陽性が報告された。しかも、都の担当者によれば「9割は感染経路がわかっていない」という。感染が散発的で因果関係がはっきりしていないので、都はクラスターと判断していない。なぜ、水産物の市場でこれほど感染が広がっているのか。
「観光客が目当てにするまぐろの競りなどは、ガラスで仕切られた2階の展望デッキから見学できるようになるなど、前の築地時代に比べれば客も仲卸業者も密にはならず、感染は拡大しにくいはずでした。
しかし、建物全体に壁がなく“開放的”だった築地市場に比べると、豊洲は巨大な倉庫のような建物になり、全体的に換気が悪くなっているように感じます。“築地に比べて冬は暖かくていい”という市場関係者はいますが、空気が籠もっているのは事実です。また、生鮮食品が腐敗しないように、市場内が低い温度で一定に保たれていることも、ウイルスが活性化しやすい一因ではないか。
さらにいえば、豊洲には日本の全国津々浦々だけでなく、世界から食品が集まる。水産物だけに、生産や箱詰め、輸送などのさまざまな場面で、多種多様な人が素手でそれを触っているはずです」(全国紙社会部記者)
なぜ市場に感染が広がっているのか、正確な研究や分析はまだされていない。換気の悪さや、室温の低さとそれに伴う乾燥状態が、ウイルスに“居心地のいい環境”を与えていることは間違いないが、それだけではこれほど高確率で陽性者が出るとは考えにくい。実は、豊洲には世界20か国以上から、冷凍の水産物や加工品が集まるという。豊洲に集まる国内の養殖の水産物の中には、輸入のエサを使うものも多いだろう。
この「輸入食品からの感染」が、いま世界では注目されているのだ。
冷蔵・冷凍で3週間生存する
輸入食品から新型コロナが検出されるケースが相次いでいるのは、日本以上にコロナに敏感で、感染封じ込めのためにおびただしい数のPCR検査を行っている中国だ。中国紙によると、11月13日から16日までの4日間で、湖北省や山東省など6省10か所で、アルゼンチンやブラジル、サウジアラビアなどから輸入された冷凍肉や冷凍えびからウイルスを検出。中国税関当局は関連企業からの輸入を一時停止したという。
シンガポール国立大学病院の感染症の専門医であるデール・フィッシャー氏は8月に発表した論文の中で、「冷凍(マイナス20℃)・冷蔵(4℃)されたサーモンや鶏肉、豚肉で、新型コロナウイルスが3週間もの期間、生存した」と報告した。
その上で、新型コロナが「明らかに断絶された地域で局所的に再発生している」理由について、「汚染された食品や食品包装の輸入が発生源となっている可能性がある」と指摘。汚染された輸入食品がそれに接触した人にウイルスをうつす可能性があり、国際的な食品市場では、クラスターが時折発生することが予想されると述べているのだ。豊洲市場のケースは、まさにこれではないのか。
市場で起きることならば、私たちの自宅のキッチンでも、起こり得ることではないのか──昭和大学客員教授(感染症)の二木芳人さんもこう指摘する。
「コロナウイルスは冷凍すると非常に長生きします。実際、われわれがウイルスを使った実験をするときには、生きたまま保存するために超低温の冷凍庫を使うほどです。なので、冷凍食品にウイルスがいることは充分にあり得る話です。人の咳やくしゃみからウイルスが付着し、そのまま冷凍されればウイルスは生きている。その冷凍食品が流通すれば、それを買った人や、封を解いて食品加工する人が感染するリスクがあります」
いま中国国内では、輸入食品から新型コロナが検出された話題で持ちきりだ。中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰さんが言う。
「中国はものすごい量のPCR検査を行っていて、国内では“1日の感染者ゼロ”という状況を何度も作り上げてきました。ところが、そういう中で1人とか2人、突然、感染者が現れる。その理由を徹底的に探っていくと、共通するのは市場にかかわっている人、特に冷凍食品や冷凍倉庫に関係している人に行き当たるので、輸入された冷凍食品がいちばん怪しいと躍起になっているのです」
中国では6月、北京で集団感染が発生した際、市内の卸売市場で輸入サーモンを加工したまな板からウイルスが検出された。サーモン自体ではなく、まな板がウイルスに汚染されていた可能性が高いと判断されたようだ。これを機に輸入食品の検査が強化され、その後、食品の表面や包装からウイルスの検出が続出することになった。
中国税関当局は、7月と8月にブラジルから輸入した鶏手羽肉や、エクアドル産冷凍えびの包装などから、ウイルスが見つかったと発表。10月にもロシアの漁船3隻とオランダにある倉庫から出荷された製品のパッケージから、11月にはインドネシアから輸入された冷凍魚類からも検出された。ほかにもドイツやカナダ、ニュージーランド、インドなど20か国の包装加工品からウイルスが検出されたと中国側は主張している。
「特に中国国内で多く報じられているのが、冷凍えび。南米や東南アジアからの輸入品です」(富坂さん)
海外から肉やえびなどの魚介類を輸入しているのは、中国だけだろうか。もちろん、そんなわけはない。そういった食材が日本に輸入されている可能性は充分にあるのだ。
中国以上に衛生管理がずさんな国がある
いったいどんな輸入食品が危ないのか。食品問題評論家の垣田達哉さんが説明する。
「いまは世界中、どの食品加工工場でも手袋やマスクの着用は大前提です。しかし、牛、豚、鶏などの食肉は加熱調理が前提なので、現場の衛生観念も緩みがち。なかでも細かい骨のある鶏肉は、手作業の工程が多い。もちろん殻を剥いたり、骨をとらなければならない魚介類も一緒です。もし従業員が新型コロナに感染していて、マスクをしないで話したり、咳やくしゃみをすれば飛沫から食品にウイルスが付着する可能性はとても高いといえます」
2008年に発覚した「毒入り餃子事件」などの影響もあり、これまで“危険な食品”といえば中国からの輸入品のイメージが強かった。だが、現状は大きく変わりつつある。
「中国では国内でも“毒食品”が話題になったため、ここ数年、国を挙げて食品衛生の向上に取り組んできており、以前に比べて状況がかなりマシになってきている。一方、“脱中国”の流れでブラジルやアルゼンチンなどからの食品輸入が増えており、それらの国では中国以上に衛生管理がずさんな食品加工現場も多いんです」(垣田さん)
特に日本は、先に感染リスクが高い食品として挙げられた生の輸入鶏肉の約7割をブラジルに頼っている。
「その理由は価格の安さです。ブラジルでは日本などへの輸出向けに鶏肉加工業者の間で過当競争が起きているため、安かろう悪かろうになりやすい」(垣田さん)
そうして新型コロナが付着した輸入食品が、空路や海路で日本国内の市場に運び込まれる可能性がある。
「しかし、危ないのは市場関係者だけではありません。中国では海外から持ち込まれた冷凍食品のパッケージから検出されたとの報道があります。そうなると、流通にかかわる人や、入荷しているスーパー、それを購入する買い物客など、全員に感染リスクがある。例えば、アルゼンチン赤えびのように、解凍後に加熱せず、生食するものが汚染されていた場合は消費者にもリスクがあります」(垣田さん)
消費者は、店頭でウイルスが付着した製品に触っても、帰宅時にきちんと手を洗えばウイルスを洗い流すことができる。だが、家に持ち帰った製品を再び触れば、そこで新たにウイルスに接することになる。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが言う。
「調理で加熱すれば、食品から直接感染する心配はありません。ただ、冷凍食品や包装を触れた手で目や鼻、口に触れないよう手洗いを心がけましょう。冷凍庫から取り出して解凍するまでは注意が必要です」
もちろん、危険なのは輸入食品だけではない。
「米フロリダ州やスペインの農業従事者から強力な変異ウイルスが発生して、再び欧米全土で感染が蔓延してきています」(一石さん)
農業従事者の間で感染が広がれば、当然、野菜にもウイルスが付着することになる。
「農家のかたは農産物を素手で収穫するでしょうし、消費者も野菜などを直接触ることが多い。この季節、外の気温は冷蔵と同じ状況になりやすいので、輸入食品だけではなく、国内の食品にも警戒が必要です」(垣田さん)
第3波の感染拡大でGo To イートやGo To トラベルが見直されている。だが、感染リスクがあるのは外出や外食のときだけでない。私たちは毎日の食卓を彩る食品そのものにも、注意を払う必要があるのだ。
※女性セブン2020年12月10日号
11月以降、各地で連日のように新型コロナウイルスの新規感染者数が過去最多を更新し、対策の見直しが迫られている。
10月からの「Go To キャンペーン」本格化で人の往来が増えただけでなく、秋以降の気温と湿度の低下も感染拡大の要因と考えられている。第3波が広がる北海道は本州以南を先取りした状況といえる。渡航医学が専門の勝田吉彰・関西福祉大学教授はこう指摘する。
「空気が乾燥する冬場は、喉の粘膜の働きが弱まりウイルスが体内に侵入しやすくなります。空気中の湿度が低いと、ウイルスにとって生存に適した環境となり、空中を長時間浮遊しやすくなる。
冬は寒さで窓を閉め切るなど“密”になりやすい環境も加わるため、新型コロナをはじめとする様々なウイルスに感染しやすいのです」
欧米でも気温が下がり始めた10月末~11月に4月の「第1波」、7月の「第2波」を上回るペースで感染者数が急増し、各国で外出制限などの措置が取られた。
南半球のオーストラリアでは今年7~8月に冬を迎え、第2波が襲来していた。スキー場は閉鎖され、州境も封鎖。寒い南部ほど感染状況は悪化した。
これから冬本番を迎える日本では、何を、どう対策すればいいのか。そのカギは、「暖房の使い方」にある。
厚労省のやり方は「寒すぎる」
新型コロナの感染は、エアコンによって生じる可能性もある。直径5マイクロメートル以下の小さな飛沫核(エアロゾル)は、エアコンによって室内に拡散することが判明しているのだ。
しかも、冬の「暖房」は「冷房」よりリスクが高くなる。飛沫核の拡散などを解析する民間企業・環境シミュレーション代表取締役の阪田升氏が解説する。
「小さく軽い飛沫核は、屋内の天井付近に滞留する傾向があります。冷気は下方に流れて留まる性質があるので、夏場の冷房は風向きを『下』に設定すれば天井付近の飛沫核に影響は出ませんが、暖房は違う。暖気は上昇していく性質があり、風向きを下にしても飛沫核にぶつかり、室内に拡散させてしまうのです」
暖房は室内の湿度を低下させるため空気が乾燥し、ウイルスの活性化を招くという悪循環も生じる。
そこで「換気」が重要になるが、実は多くの家庭用エアコンは室内の空気を循環させているだけで換気機能は備わっていない。
厚生労働省は6月に発表した資料で、理想的な換気の方法について「30分に1回以上、数分間窓を全開」「複数の窓があれば2方向を開ける」などを推奨しているが、これは室温の急激な低下を招く危険がある。
前出の阪田氏は北海道のような寒冷地での換気を想定してシミュレーションを行なったという。
「エアコンが2台設置されたオフィスで、窓は2つ。室温は20℃、外気温は0℃の設定です。そこで2つの窓を『全開』にした場合、3分後には空気の42.7%が入れ換わったものの、室温は10℃以下まで下がってしまいました。
一方、片方の窓だけを5センチほど開けた場合は、5分後に空気の12.5%が入れ換わり、室温は15℃以上を維持しました。無理なく換気するためには『エアコンの暖房を使用したまま窓を常に5センチだけでも開けておく』ことで、換気と暖房の両立がある程度まで可能になります」
※週刊ポスト2020年12月11日号
師走を迎えた永田町が「Go To政局」で大揺れとなっている。「コロナ感染防止と経済回復の両立を目指す、菅義偉首相肝いりのGo To事業が、冬場のコロナ感染急拡大により、継続の可否が厳しく問われているからだ。
【グラフ】新型コロナウイルス国内感染の状況
立憲民主などの主要野党は「感染拡大防止のため、いったん事業中止」を主張するが、菅首相は「やめたら経済に甚大な悪影響がある」と、一部見直しなどで事業を継続し、2021年1月末までの実施時期も6月末まで延長する構えだ。
■医療崩壊なら緊急事態「再宣言」も
12月17日までの「極めて重要な3週間」(菅首相)で東京、大阪など大都市が感染爆発となり、医療崩壊も現実味を帯びれば、政府は4月以来の緊急事態再宣言も検討せざるをえない。
その場合、年末年始の帰省や旅行の自粛圧力が強まり、緊急事態宣言下だった5月連休時と同様、観光だけでなく経済全体に大きな打撃を与えるのは避けられない。強引にGo To事業を押し進めてきた菅首相の政治責任も問われ、2021年1月18日召集予定の次期通常国会における野党側の厳しい追及で、「政権もピンチに陥る」(自民幹部)ことも想定される。
Go To事業は4月にコロナ収束後の実施を前提に政府が閣議決定した観光業救済策だ。安倍晋三内閣(当時)の官房長官だった菅首相が主導する形で、コロナ第2波が始まっていた7月下旬に、事業の中核であるGo Toトラベルを前倒しでスタートさせた。
ただ、感染再拡大が際立っていた東京都は、小池百合子都知事が「暖房と冷房を同時にかけるようなもの。(政府は)よーく考えてほしい」などと反発。結果的に政府が東京を除外して実施を決めた経緯がある。
ただ、夏休みの観光シーズンでの事業の経済効果は大きく、官房長官だった菅首相も「賭けに勝った」と周囲に漏らしたとされる。菅首相は9月16日の政権発足後も、Go Toを経済回復策の中軸に据え、秋や年末年始の観光シーズンにトラベル、イート両事業を全面展開する考えを繰り返してきた。
しかし、先行して冬場を迎えた北海道を先頭に全国的な感染急拡大が始まった。11月に入ってからは連日、感染者数や重傷者・死亡者が過去最高記録を更新する状況が続いており、国民の不安は高まるばかりだ。
政府の感染症対策分科会の尾身茂会長も危機感を強め、菅首相らに対し「今までのままでは(感染を)コントロールできない」などとGo To事業の一時中止など運用見直しを要望。日本医師会の中川俊男会長も「Go Toトラベルが(感染拡大の)きっかけになったことは間違いない」と政府の対応を批判した。
■菅首相は「エビデンスはない」と反論
しかし、菅首相は「専門家の間でも(Go Toが)主要な要因であるとのエビデンス(証拠)は現在のところ存在しないとされている」などと、方針転換を否定し続けた。11月下旬の3連休直前になってようやく、鈴木直道北海道知事と吉村洋文大阪府知事の要請に基づき、札幌市と大阪市をGo To目的地から除外する部分的な運用見直しを決めた。
その一方、東京都については「現場の状況を知る知事が判断すべきだ」とする政府と、「そもそも国の事業だから政府が対応を決めるべきだ」と主張する小池百合子知事との間での「責任の押し付け合い」(政府筋)が続いている。
ただ、12月1日には小池知事が首相官邸を訪れて菅首相と会談。トラベルの東京発着分について65歳以上の高齢者と基礎疾患を持つ人の利用自粛を要請することで一致した。
会談後、菅首相は「東京都知事の要請を受けて、65歳以上の高齢者と疾患を持つ人にGo Toトラベル利用の自粛を要請することにした」と説明。しかし、都庁で会見した小池氏は「停止を提案したが、調整の結果、自粛要請ということになった」などと双方の立場の違いをにじませた。
関係者によると、両者の会談は12月1日昼になって小池氏が急きょ申し入れ、菅首相と電話で協議したうえで、夕刻に直接会って方針を決めた。トラベル事業を担当する国土交通省や観光庁は徹夜作業での対応に追われたが、自粛要請という曖昧さと基礎疾患の確認などの困難さもあり、今後現場の混乱は必至だ。
札幌、大阪両市から出発する旅行でのトラベル事業の利用自粛要請は全閣僚が出席する政府対策本部で決定した。菅首相と親しい鈴木、吉村両知事との調整だったためで、政府はキャンセル料の扱いも含めてすぐ詳細を発表するなど混乱は少なかった。
しかし、小池氏の要請について、菅首相は「都の対応として理解できる」と述べるにとどめるなど、感情的に対立しているとされる両氏の意思疎通の不足も目立ち、それが政府と都の担当部局の混乱した対応を招いた。
■運用見直しでは感染は止まらない
この菅・小池会談に象徴されるように、Go To事業の運用方法をめぐっては、政府が都道府県知事に判断を委ねる立場を打ち出したのに対し、知事側からは「国が知事任せにするのは責任放棄だ」(有力知事)との不満が噴出している。
東京での高齢者などの発着自粛要請についても、医療関係者からは「そもそも高齢者や基礎疾患の人は、Go To利用を控えていたはず。むしろ、感染していても無症状で活発に活動する若い世代にこそ自粛要請すべきだった」との指摘が相次ぐなど、対応の「ちぐはぐ感」(都庁幹部)は否めない。
「重要な3週間」が終わるのは12月17日だが、専門家の間では「東京も含めた一部の運用見直しだけでは、それまでに感染拡大が止まるはずがない」との見方が支配的だ。12月最初の週末には「感染者が4000人を突破し、東京の感染者も600人超えとなるのは必至」との見方も出る。
重傷者・死亡者増は1週間程度遅れて現れるとされるだけに、12月17日前後に感染急拡大が頂点に達し、「東京、大阪など大都市が事実上の感染爆発状態になる可能性」(専門家)も否定できない。
そうなれば、菅首相は年末年始の緊急事態再宣言を検討することを迫られる。ただ、政府与党は臨時国会を延長せずに5日で閉会させ、その後は第3次補正予算案や2021年度予算案の編成作業に全力を挙げる一方、緊急事態宣言は回避する方針だ。
野党側は年末ぎりぎりまで会期を延長し、Go To問題や桜を見る会前夜祭の経費補填問題で安倍前首相の国会招致を求めているが、自民党は国会閉会後も毎週、衆参両院での閉会中審査を実施することで野党を説得する構えだ。
そうした中、野党側は臨時国会会期末の内閣不信任案提出を見送る方向となった。自民党が国民投票法の次期通常国会での採決を容認する姿勢を示したのが提出見送りの理由だが、「不信任提出が年明け解散の引き金になることを恐れた」(国民民主幹部)との見方も出る。
国会閉会後、菅首相は予算編成などで政府の対応を国民にアピールする一方、NTTドコモが3日に発表した携帯料金大幅値下げなどを政策運営の成果として、コロナ対応での迷走批判をかわしたい考えだとされる。
菅首相は12月2日夜、都内での自民党議員との会食で、ドコモの料金値下げについて、「大きな第一歩を踏み出してくれたことは非常にありがたい」などと自慢げに語ったとされる。
■会見で問われる「首相の器」
しかし、年末までに感染爆発状態となれば、緊急事態再宣言をしなくても経済への打撃は計り知れない。感染によって死亡者が増えたり、企業倒産の増加などに伴う自殺者急増が重なれば、感染防止優先派と経済回復優先派の双方から政府の責任が追及されることは避けられない。
菅首相は国会が事実上閉幕する12月4日夕にも、就任時以来2度目の本格的記者会見に臨むとみられる。しかし、これまでの国会答弁のようにメモの棒読みに終始し、質問にも自らの言葉で説明できなければ、「首相としての器かどうか」も問われかねない。
自民党の吉川貴盛元農林水産相が在任中に大手鶏卵生産会社の元幹部から現金を受け取った疑惑が浮上したことも、菅政権への打撃となっている。安倍前首相の桜疑惑とともに年内の捜査進展は必至とみられており、与党内にも不安が広がる。
年末年始の政局展開次第では菅首相の解散権も縛られ、「2021年9月の総裁再選による4年の本格政権どころか、任期内の退陣も含めた政権危機も現実のものとなりかねない」(自民長老)との見方も出る。菅首相にとって年末までの師走が「政権の命運を決める重要な4週間」(同)となりそうだ。
泉 宏 :政治ジャーナリスト
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