もしくは前身であるDip The Flagは
いつも遠からず近からず
なんともいえない距離感のある存在だった。
その孤高とも見えた佇まいと
彼らの奏でるシャープなロックは
時に羨ましいほどクールに見えたし、
物静かに言葉少なくサイケデリックな演奏する姿には
深い意図が隠されているようにも見えた。
まだ80年代のニューウェーブの陰影を残していた初期でも
インディーという言葉が使われ出した90年代初頭や
クラブ・カルチャーがロックに影響を与えた90年代後半でも、
dipは時代に流されることなくdipのサウンドを作っていた。
僕自身は時代ごとに夢中になれる現場を追いかけていたけど、
どのタイミングでもdipは絶妙な距離感で気になるバンドであり続けた。
この30年間のごく短い期間、
1995年から1996年の1年にも満たない長さではあるが
dipのスタッフをやったこともあるのだけど、
その時期ですらヤマジカズヒデと
音楽について向き合って話をしたことはなかった。
それだけ90年代の彼は近寄りがたい雰囲気を持っていた。
この10年でdipのライブでDJをやったり、
キリキリヴィラの企画に出てもらったり
dipの企画にシュガー・プラントが呼ばれたりする中で
ようやく少しづつ話をするようになっていった。
最近のライブを見ると、30年以上のキャリアの中で
いまが一番安定したステージをやっているように感じる。
長く彼らを見てきて気が付いたことだが、
dipの本質はガレージ・ロックなんだと思う。
テンポの速いエイト・ビートの曲では
全ての楽器がドライブしながら、
タイトなのに激しく音の輪郭がビリビリと震えているように感じる。
そんなステージを見ていると、
ヤマジが理想とするサウンドの型を求め、
うねるように進むビートの先を期待している自分がいる。
dipにいつも何かを期待してしまうのは
同世代で同じような音楽に影響されてきたからなんだと思っていた。
しかし今回はじめてしっかりとヤマジの話を聞いて
dipに対する僕の考えの半分は当たっていたけど、
半分はこちらの思い込みだったことがよくわかった。
だからといってdipの音楽に期待する気持ちがなくなったわけではない、
むしろより焦点が絞れたとも言える。
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