藤原大和の日本史徒然草

藤原大和の日本史徒然草

PR

×

Profile

藤原大和

藤原大和

Freepage List

Calendar

2013/11/24
XML
カテゴリ: 日本史関連
最近、母が部屋の整理を大々的に行っていまして、懐かしい写真とか手紙とかが次々に発見されています(笑)
その中で本当に懐かしいものが出てきました。
高校3年の時に書いた文章なんですが…
とりあえず、そのままここに掲載してみます。ちょっと恥ずかしいですが…

久しぶりに写真を整理していたら、懐かしい写真が出てきた。
それは一年ほど前、私がまだ関西にいた頃に明日香路を巡った時のものだった。
今、それを見ながらその風景を回想していると、何処からか梅花の香りが漂ってくるような気がする。
あれは早春にしては少し冷たい風が吹く日であった。
確か私は、七、八分咲きという感じの梅並木をちらりと見やりながら、甘樫の丘に登っていったのだ。

その時の私は一般の観光客と同じように、その風景と歴史に対する一種の郷愁の感情に浸っていた。それは明日香にやって来ただれしもが抱く感情なのだろうが。
それともう一つ、万葉期第一の女流歌人である額田王について、歴史的探究心を超えた、そう、ある種の恋…
既に千何百年も前に死んだ彼女に恋とはおかしいかもしれないが、この際これしか表現しようのない感情に浸っていたのだ。
それからまた半年ほど経って、私は思い出したように、半ばとりつかれたかのように明日香に向かった。
頭の中にはある歌の一節「大和は国のまほろば」が。
秋晴れの素晴らしい日であった。
ちょうど収穫に季節で、黄金の稲穂が、全国を襲った大冷害なの知らぬ気に風に吹かれて揺れていた。
まさに「まほろば」の国、大和。
空を見上げれば悠然と雲が流れていく。
そしてその向こうには三輪山がそびえ立っている。
私はいつしか、うろ覚えながら気に入っている歌を口ずさんでいた。



古来、三輪山は人々の信仰の対象だった。
そして、その神秘性から数多くの歌人たちに謡い上げられてきた。
もちろんこの歌は額田王のものだが、それ以外にも三輪山を謡った歌は多い。
美しい三輪山を眺めながら、しばし私は立ち止っていた。額田王のことを想いつつ。

彼女は王(おほきみ)とあるように王族の出身である。

もちろん、その神秘性ゆえに私は彼女を明日香まで追いかけていったのだが。
以前テレビで彼女を主人公にしたドラマをやっていたが、その中で彼女の役を演じた女優のイメージが、私の頭の隅に引っ掛かっていたのかもしれない。
兄弟の皇子に愛されながら神の声を聞くことができる彼女は、神と共に生きる。確かこんな感じの番組だった。
彼女が子を産み、現世に身を預けた時、神の声は聞こえなくなっていた。
つまり、私のイメージは俗世間を離れて、神とともに生きる彼女の姿にあるのだ。
それだからこそ彼女に、摩周湖の湖水のような深い神秘性を感じるのである。
そしてそれとは別に、私は彼女の、二人の皇子に対する奔放な愛に彼女の人間味も感じるのである。
彼女を追って最後にやってきたのは大津であった。
ある晩秋の一日、琵琶湖の重い鉛色の水も、厳しい北風に白い波を時折立てていた。
天智天皇の御世、都はこの地にあった。
もちろん彼女もいたことだろう。
彼女の子供も成人し、彼女にとって最も幸福な時期が、この近江の都で過ぎていった。
しかし、壬申の乱によって都は飛鳥に移り、彼女の子である十市皇女も不倫の恋の末自殺してしまうという悲劇が続いた。
老いた彼女は、しかしこの過酷な運命に耐えて、何処かでひっそりと長寿を全うしたという。
大津市のはずれに、天智天皇が築いた宮の跡がある。
額田王も、荒れ果てた都の片隅で、思い出を抱えてじっと暮らしていたのかもしれない。
しかし私は老残の彼女の姿を思い浮かべるのは嫌だ。
彼女の晩年は、荒れた都とともに永遠の謎であってほしい。
こうしてとりとめもなく考えを綴っていると、改めて千年以上というギャップの大きさに驚かされる。
現代に彼女のような女性が存在したとしても、ただの気違いとされてしまうに違いない。
残念ながら、私と彼女の恋は無理のようだ。
でも、彼女に対する私のイメージに変わりはない。
彼女は確かに千年も昔に死んだだろうが、、彼女の歌は私の心の中にいつまでも残るだろうし、人々が語り継いでいく限り生き続けることだろう。その歌に憧れる者も。そして彼女に憧れる者も。
明日香から大津への私の回想もおしまいだ。
結局、彼女について何もわかりはしなかった。
でも、それで良かったのかも知れない。
わからないからこそ、彼女の神秘性は高まり、あこがれも一入になるのだから。
私の中の「額田王」は、あの時見た明日香の梅並木の道で、微笑みながら美しい声で歌を詠んでいる…





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2013/11/24 05:31:07 PM
コメント(3) | コメントを書く
[日本史関連] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:私の中の額田王~」「万葉群像」より(11/24)  
Herman さん
昨日という憎悪は消え
明日という希望がやってくる
その夜の一瞬に全てを賭けて
愛という真実をつかむのだ (2013/12/07 10:11:00 PM)

Re[1]:私の中の額田王~」「万葉群像」より(11/24)  
何故それを御存じなのでしょうか? (2013/12/26 06:54:28 PM)

Re[2]:私の中の額田王~」「万葉群像」より(11/24)  
Herman さん
藤原大和さんへ
あなた様と私は30代の頃面識があります。
遠い昔の思い出になりました。
あなた様が現在ご健康でお幸せであると
信じております。 (2018/12/25 11:15:11 AM)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Comments

Herman@ Re[2]:私の中の額田王~」「万葉群像」より(11/24) 藤原大和さんへ あなた様と私は30代の頃面…
藤原大和 @ Re[1]:私の中の額田王~」「万葉群像」より(11/24) 何故それを御存じなのでしょうか?
Herman@ Re:私の中の額田王~」「万葉群像」より(11/24) 昨日という憎悪は消え 明日という希望がや…
Kay@ Re:愚劣とすらいえない山本太郎(10/31) Happy Birthday‼ 夢、叶いましたか?
らっぴぴたん @ Re:菅をクビに出来ない民主党(07/24) こんにちは。 このタイトルには全く関係あ…

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: