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profile:山本ふみこ
随筆家。1958年北海道生まれ。つれあいと娘3人との5人暮らし。ふだんの生活をさりげなく描いたエッセイで読者の支持を集める。著書に『片づけたがり』 『おいしい くふう たのしい くふう 』、『こぎれい、こざっぱり』、『人づきあい学習帖』、『親がしてやれることなんて、ほんの少し』(ともにオレンジページ)、『家族のさじかげん』(家の光協会)など。

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2013/10/22
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カテゴリ: うふふ日記
 初めて会うひとに、「山本さん、もっと何と云うか、太めのひとかと思っていました」とか、「割烹着の似合う感じのひとをイメージしていた」という感想を伝えられる。
 わたしの書いたものを読むひとの多くが、割烹着を着た小太りのおばさんを想像するらしい。一度くらい、「想像通りのひとだった」と云ってもらいたいなあと思いはするが、わるくない、小太りのおばさんというのは。
 おばさんというところは合っているが、わたしは太ってはいないし、割烹着も持っていない。それでもどうやらわたしは太めのひとが好きらしく、それも、知的で太めのひとが好きらしく、友人には、博学多識で太めのひとが少なくない。先月久しぶりに会った太めの友人が、太めでなくなっていたのには驚き、とてもさびしかった。しゅっとして、細身のパンツがよく似合っていたけれども。
 ——体重とともに、知の重量が目減りしていたら、どうしよう……。
 と、恐ろしく勝手なことを、一瞬だが考えたりした。

 知的で太め、ということなら、わたしの相棒は申し分ない。
 彼女は、紛(まが)うかたなき小太りのおばさんだ。つきあいはそう古くなく、と云っても、そろそろ2年になるところだ。
 外出するときは、いつも一緒だ。
 初めてのひとと挨拶する場面には、彼女がそっと名刺入れをさし出してくれる。電車のなかで本を読んでいるときも、絶妙のタイミングで付箋を手渡してくれるし、ランチのパンを持て余したりすると、ポリエチレン製の袋を手に握らせてくれる。手帖、シャープペンシル、絆創膏、リップクリーム、気に入りの店のポイントカードの収まったカードケース、エチケット袋、折りたたみのエコバッグなんかをあわてず騒がず……。 

 このよき相棒がやってくるまでのわたしの鞄のなかみは、整頓されているとはいえなかった。名刺入れ名刺入れ、と探したり、手帖のありかを手でさぐったり、しまいには鞄のなかに顔をつっこんで「おーい」と……。 あれは大佛次郎(おさらぎじろう)の短篇だった。たしか、「望郷」ではなかったか。うろ覚えだが、父と娘との再会のものがたりだ。父は久しぶりに会う娘に、鞄を見せてほしいと頼む。娘が自分のハンドバッグをさし出すと、そっとなかを見る父。ハンカチーフ、ちり紙、財布、化粧袋などがきれいに納まっている様子に、娘がどんな女性に成長したかを知って感じ入るというはなしである。 一所けん命書架をさがすのだけれど、誰かに貸したかさし上げたかしたのかもしれない、「大佛次郎」の文字さえみつけることができなかった。近く読み返したいものだ。
 さて、「望郷」を読んだとき、こころから恥ずかしかった。もしわたしの父がわたしの鞄のなかを覗いたら、さぞびっくりするだろう、と思った。自分の娘が鞄のなかの始末もできないことを知って、きっと落胆するだろう。褒めてもらえるところがあるとしたら、必ず本が入っているところだけだろう。

 しかし、鞄のなかみの様子はあらたまらぬまま年月(としつき)が流れた。
 それがどうして鞄のなかみの整頓を助けてくれる相棒とめぐり合ったか。それはあれ、太めの好きなわたしが、ある店で腰が張ってぽてっと坐りのよさそうな姿を見て、ひと目惚れしたからだ。
 それから2年になるが、相棒の働きはめざましく、わたしの鞄のなかみはじつに落ちついたものである。


ブログ小太りのおばさん.jpg

気に入らなかったのか、みっこちゃん(名前は
みっこちゃんなのです)、
「なかみを出したら、そんなに太くないんです。
何も入れないで、ほっそり写してください」
と云いましたので、ご覧のとおりです。
大きさは、縦16×横22×マチ8.5cm。

            *

なかみは……
・名刺入れ
・手帖、シャープペンシル
・一泊分の基礎化粧品(すべて試供品)
・リップクリーム、メンソレータム
・ピルケース(百草丸)
・絆創膏
・カードケース(店のポイントカード、図書館カードなど)
・ティッシュペーパー、紙おしぼり
・エチケット袋
・折りたたみエコバッグ
・ポリエチレンの袋数種(チャック付きのものも)
・付箋、ぽち袋、小さい便箋、サインペン
・小銭入れ(小銭の他千円札3枚入り)
・小さいはさみ
・三女が保育園時代につくってくれた折り紙の「お守り」

             *

皆さんへ
つねに携帯するものとして、「こんなのを持っていたら大活躍した」
というおはなし、ぜひ聞かせてください。





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最終更新日  2013/10/22 10:19:52 AM
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