バランスシート:物価の番人の剣にして鎧
株でも土地でも幸せの壺でも何でも買ったらよろしいがなというのは当然思うところだろう。しかし、結論から書くと、 中央銀行のバランスシートに国債以外の資産を大量に突っ込むことは上で書いた中央銀行への信頼を著しく損なう恐れがある。
試しに、日銀が買いオペで国債の代わりに大量の株を購入したと考えて見よう。で、不慣れな担当者が巨額の損失を出してしまったとする。
普通の企業であれば自己資本が底を突けばハイ倒産、ということになるのだが、日銀の場合は事情が全く異なる。なにしろ、お金を刷れるのだ。損が出たらその分余計に万札を刷れば万事解決だ。
世のファンドマネージャーが涎を垂らしてうらやましがる状況なわけだが、喜んでばかりもいられない。損を埋めるために余計に万札を刷れば、その分だけ不要な現金の量が増えてしまい、インフレが進行してしまうからだ。
つまり、 バランスシートが悪化した中央銀行は不可抗力としてインフレ政策を取らざるを得なくなる。こんな中央銀行が、(例えば石油ショックのようなイベントが起きた時に)うまく「インフレを抑える」と信じられるだろうか?
当然NOだ。その結果、この中央銀行が発行する現金は誰も使いたがらなくなる。誰もが血眼になって欲しがる現金が、ただの紙くずになる瞬間だ。ハイパーインフレーションというのはこうして起こる( IMFのピーター・ステラ
が中央銀行のバランスシートの悪化がどのような問題をもたらし、更にはハイパーインフレにいきつくのかといった問題を、いくつかの事例を引きながら研究している。興味のある方は一読されたい)。
日銀が伝統的、ないしは生理的にバランスシートの毀損を嫌がるのはこの辺りに理由がある(「日本は今インフレにしたいんだからそれでもいいじゃん」とお思いの方もいらっしゃるかもしれないが、それについては別稿で書くことにしたい)。
だから、 日銀の資産は大損をこく恐れの無い安全な資産で固めなければならない。で、一番安全な資産は何かというと、日本国債ということになるわけだ。だからこそ、前回書いたとおり、FRBもカナダ中銀も、資産の大半は国債+政府債務で固められているのだ(ECBは全然違うのだが、これについても別稿で)。
こうして、議論は「間違っている」とされた前回の前半部の議論、すなわち「現金の信用は国債によって裏付けられている」という主張に戻ってきた。
国債は現金の裏付けにはならないが、現金の裏付けである「中央銀行がインフレを必ず抑える」という信用の裏付けになるのだ。その意味では、前回の前半の議論は厳密には不正確だが、ショートカットとしてはそれほど悪くない理解だと言ってよいと思う。
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桜桃梅さん
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