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| 著者・編者 | 孫崎享=著 |
|---|---|
| 出版情報 | 筑摩書房 |
| 出版年月 | 2011年05月発行 |
2010 年 9 月 7 日、日本の“領海”である尖閣諸島沖において、中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突してくるという、いわゆる中国漁船衝突事件が発生した。これに絡んで、菅直人首相は「尖閣諸島に領土問題は存在しない」と発言した。
だが、これ対しては以下のような違和感があった。
本書の著者は、英・米・ソ連・イラク・カナダ駐在、駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任し、2009 年に定年退官した外務官僚である。そして、「日本は、北方領土、尖閣諸島、竹島という領土問題を持っている」(198 ページ)という立場である。首相の発言の真逆をいっている。
だが、著者の主張は一貫しており、領土問題は存在し、日中・日韓・日ロの間で領土問題は「棚上げ」されているという。
著者は明治時代から太平洋戦争の戦後処理を経て国境問題を淡々と検証することで論理を補強しており、その欠陥は見当たらない。たとえば、「連合軍最高司令部訓令(昭和 21 年 1 月)においては、日本の範囲に含まれる地域として『四主要島と対馬諸島、北緯30 度以北の琉球諸島等を含む約一千の島』とし、『竹島、千島列島、歯舞群島、色丹島等を除く』」(139 ページ)と明記しているという。これが事実なら、竹島には“領土問題が存在する”。
少なくとも首相の断定的発言よりは、本書の内容は説得力があるし、そこから敷衍することで前述した疑問もすべて解ける。
とくに竹島問題については、韓国の同盟国であるアメリカが、同じ同盟国であるはずの日本との間で調整に入らないのはおかしな話である。もし竹島が発火点となって日韓紛争が起きたら、アメリカはどういう態度を示すのか? これも本書を読めば納得できる。
ただし、このような主張をしているのを見たのは本書が初めてであり、著者がミスリードしている可能性は捨てきれない。外交のプロが書いているのだから、一国民たる私に論理的欠陥を発見するのは不可能であろう。
本書を読んだ自分の考えを整理すると、領土問題が存在しているという可能性を捨てるべきではないということだ。領土問題の有無という結論に安易に飛びつく前に、本当に問題があるのかどうか自分自身の目で見て、耳で聞き、頭で考える必要がある。この点は、東日本大震災と原発事故を巡る一連の騒動でより明確になった。いまの政府もメディアも 100%信用できないし、頼ってはいけない。
もし一生かけても結論に到達しなかったならば、自分が知り考えたありのままの事実を子ども世代に伝えるべきだろう。歴史をねじ曲げてはならない。
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