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著者・編者 | 五藤光学研究所=著 |
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出版情報 | 成山堂書店 |
出版年月 | 2023年7月発行 |
あなたはプラネタリウムを見たことがあるだろうか――わが国はアメリカに次いでプラネタリウム投影機の設置台数が多く、 日本プラネタリウム協議会 (JPA)によると、年間のべ900万人の人がプラネタリウムを見ているという。これは 東京ディズニーシー の年間入園者数に近い人数だ。
今年(2023年)は、 光学式プラネタリウムが誕生してちょうど100年 になる。それを記念し、天体望遠鏡メーカーであり、国内外に多くのプラネタリウムを納品している 五島工学研究所 が編者となり、プラネタリウム製造メーカーの社員や、プラネタリウム施設の運営や投映(解説)を行う解説員が、その誕生から現在までの移り変わり、仕組みや楽しみ方、魅力などを、余すところなく語ってくれる。
半球型のドームに星空を投映する 光学式プラネタリウム は、1925年にオープンする ドイツ博物館 が、来館者に天体の運動を学んでもらうために、カールツァイス社が1923年に開発した「 ツァイスI型 」が最初の製品だ。当初はドイツの星空しか投映できなかったが、緯度を変更できる運動軸を設け、南半球の恒星原板を加え、世界中の星空を投映できる「 ツァイスII型 」は世界各地に輸出され、1937年に大阪市立科学館にも納品された。
光学式プラネタリウムの面白いところは、 プトレマイオスの天動説を、最新の科学技術を使って忠実に再現 しているところである。日周運動、緯度回転、歳差運動はもちろん、太陽や月、惑星の運動も機械的に(のちにコンピュータが支援動作する形で)再現できる。
その後もプラネタリウムは進化していく。
初期のプラネタリウムは、実際の夜空で人間の目で見ることができるとされる6.25等星までの6,500個を投映することができた。1990年代後半には7等星までの数万個を投映できるようになったが、1998年に 大平貴之さん
が開発した「 MEGASTAR
」は一気に11等星までの170万個の星を映すことができる。
光学式プラネタリウム
は、 恒星原板
と呼ばれる板に小さな穴を開けて、電球やLEDで照らすことでドームに星空を映し出す幻灯機のようなものだ。 MEGASTAR
以前は手作業で 恒星原板
に穴を開けていたが、電子回路の基板を製造するのと同じようにガラスに蒸着した金属をエッチングすることで、直径0.005mmという極めて小さな穴を開けた 恒星原板
が製造できるようになった。
2007年に 多摩六都科学館
に導入された「 CHIRON II
」は1億4000万個を超える星々を投映でき、ギネス世界記録に認定された。
また、南北2つあった恒星球が技術の進歩で1つになり、惑星棚を別装置にすることで、現在の光学式プラネタリウムはコンパクトな1つの球体となり、見る人の視界を妨げることが無くなった。
1981年に登場した デジスター
は、ビデオプロジェクターの映像を、魚眼レンズを使ってスクリーン全面に映すもので、コンピュータの画面をそのままスクリーンに映し出すことができた。光学式プラネタリウムでは表現できない、宇宙空間で見た星空をも投映できるようになった。のちに デジタル式プラネタリウム
と呼ばれるようになる。
ただし、星の美しさでは、デジタル式より光学式に軍配が上がることから、両者の利点をあわせもった ハイブリッド式プラネタリウム
が導入される施設も増えている。
また、2012年に発足した 日本プラ寝たリウム学会 は、毎年11月23日の勤労感謝の日に、「全国一斉熟睡プラ寝たリウム」というイベントを全国各地のプラネタリウムで行っている。プラネタリウムで眠くなる方は参加してみてはいかがだろうか。
私が通っていた中学・高校には 五藤光学研究所
のプラネタリウム「 S-3
」(ビーナス)があった。1970年に設置されたもので、投映できる恒星は4,500個。操作法を学んだ生徒が操作することが許されており、南半球への旅はもちろん、毎年の学園祭では 冨田勲
のシンセサイザーサウンドを流しながら歳差運動軸を使ってギリシア神話の時代に遡ったり、SF映画に登場する未来の星空を案内した。
夕陽が沈みドームが徐々に暗くなり、やがて吸い込まれるような満天の星空が目の前に展開する――プラネタリウムの操作をしながら、 観客の「おー」という低いうなり声
を聴くと、いよいよ私の語りがはじまる。このライブ感と、日の出の後の観客との質疑応答は、天文学の知識だけでなく、私に大きな自信を与えてくれた。
渋谷の 五島プラネタリウム
にもよく足を運んだ。金曜日の最終投映「 星と音楽の夕べ
」――彼女がいるわけでもないのに、クラシック音楽を聴きながら宇宙へ思いを馳せた。
やがて結婚して子どもが産まれ、多摩六都科学館のプラネタリウムを見た。残念ながら、 CHIRON II
導入の少し前だったが。
プラネタリウムは、見る者も操作する者も、自然科学を学ぶ楽しさを教えてくれる最高の教材である。
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