2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
全2件 (2件中 1-2件目)
1
今日はよもやま話的に徒然と。先々週のお話ですが、ネコの噛み傷やひっかき傷からの化膿の手術で再発を繰り返している子がいました。通常、ネコの化膿の手術は細菌に汚染された部分をきれいに取り去ってから徹底的に洗浄して、新鮮な組織だけにしてから縫合してあとは抗生剤を数日間飲ませて終わり。という流れになります。が、最初の手術の時に行った細菌培養ですでに薬剤耐性菌が検出されていたので数少ない、抗菌効果のある抗生物質を使っていましたが、それでも再発を繰り返してました。で、私が担当する事になって再手術を行いました。再発を繰り返すネコの化膿でよくあるのが婁管(ろうかん)形成といって、化膿の大本の原因になるキズやゴミが身体の奥深くに「注入」された状態で、そこから体表に向かって管を形成して延々とばい菌を排出する状態です。なので当然、それを疑って念入りに調べましたが、それらしい管はありませんでした。で、残るのは先にお話した「薬剤耐性菌」の存在。通常、手術後は3日ほどで退院してあとは抜糸まで自宅で内服を飲んでもらいますが、この時は抜糸までお預かりして、病院で徹底的に洗浄を繰り返して、ようやく完治しました。抗菌は、どんなクスリよりも洗浄が一番なんですね。そこで問題なのが、この子の「薬剤耐性菌」が初診時すでに存在していたという事実。薬剤耐性菌の存在は主に病院内での怖い感染症の原因菌として知られていましたが、これは頻繁に抗生剤や消毒薬を使う病院で耐性菌が生まれるチャンスが多いからですが、最近では院内感染の代名詞的存在だった薬剤耐性菌が一般の家庭でも見つかるそうです。科学的に証明されたわけじゃないけれど、これはどうやら巷に溢れかえっている抗菌グッズや消毒グッズの影響が大きいようです。以前にもいきすぎたクリーン志向に対して少しお話しましたが、やはり「過ぎたるは・・」という事なのでしょうか。どんなに消毒したとしても、一般の家庭で雑菌をゼロにする事は不可能ですから、半端な抗菌行動で強い菌だけを選別して培養していく結果になっているようですね。この薬剤耐性菌、とても怖い細菌だというイメージがありますが、O-157のように特に毒性が強いわけではありません。性状としてはいたって普通の一般細菌と変わりはありません。単に「抗生剤にたいする耐性」が強くしぶとい細菌というだけなのですが、肺炎や気管支炎、化膿など細菌感染を起こした時にたまたま、原因菌に薬剤の耐性があると、現代医学ではなんでもない、簡単に治る病気が抗生剤が利かないというだけでペニシリンを発見する以前と同じレベルの治療しかできなくなるのです。しかもペニシリン発見以降、どんどん身体の免疫能力は薬剤依存性に退行してきていますから、免疫力を高めて自然治癒を促すという治療法もいまひとつ成果が出てこない事があります。これからの感染医療は、かかってから治療するよりも「いかに予防するか」がさらに重要になるでしょう。洗う事がなにより、どんな抗生剤よりも抗菌効果が高いと思っています。安易に抗菌グッズに頼るのではなく、きちんと「手を洗う」「うがいをする」などを励行して家庭に薬剤耐性菌が発生しないように気をつけなければいけませんね。ちなみにこのネコちゃん。今回の私の治療費はいただきませんでした。さすがに単なる化膿の治療で、再発を繰り返すのは治療の失敗に他ならないし、病院として恥ずかしい事ですから。
Oct 19, 2006
コメント(2)
いつもの診察。その日も大過なく終わろうとしていました。そんな夕方に来院した小さな小さなワンちゃん。体重2.2kg、11歳のチワワの女の子でした。「昨日は熱が41度もあって、すぐに冷やしてあげて、今は多分平熱だと思いますが・・」とお母さんが心配そうに連れてこられました。ここ2、3日元気がなくて、一昨日は1回だけ吐いたそうです。「他には吐いてませんか?」「一回だけです」「鼻先をペロペロ、しきりに舐めてませんでしたか?」「あっ・・・」実際に吐かなくても、嘔吐感があるとしきりに鼻先を舐めるんです。確かに病院で計った体温は平熱でしたが、年齢も年齢だし、腎臓や肝臓に異常はないか念のために血液検査をする事に。秋の長雨もあって、熱中症は考えられませんでしたし、人間の感冒症のようなもの?というには熱が上がりすぎです。一番気になるのは診察中もしきりに鼻先を舐める仕草。最初は老齢のワンちゃんだし、心臓も悪いようだからもしかして腎不全?とアタリを付けての検査のはずでした。採血と、触診のためにお母さんからワンちゃんを預かってすぐおなかの異常に気が付きました。そんなに大きく膨れているわけじゃないけれど、おなかの張り具合が正常な子とは何かが違う・・避妊していない子でしたので、陰部も調べてみましたが腫れや充血もなければオリモノもありません。所謂、子宮蓄膿症の子とはどこか違うし、腹水が溜まっている様子もないのだけれどおなかの感触がおかしいんです。電解質と血球性状の検査結果、白血球数は正常よりほんの少し高いだけで、若干の貧血がある程度だけれど電解質はボロボロでした。検査結果を待つ間、念のためにエコー検査もしてみると直径1cm~2cm程度だけれど確かに子宮が腫れています。腹水らしきものもないし、続けて撮ったレントゲンでも所々にコブのような物が見えるけれど子宮蓄膿症に特徴的な画像ではありません。子宮の様子では腫れ方もそれほど酷くないし、まだ時間的に余裕がありそうにも見えました。生化学検査でもALPという酵素が酷く高い以外には異常がありません。飼い主さんは内科治療でどうにかならないかとおっしゃいましたが私はボロボロにバランスの崩れた電解質と異常に高いALPの数値がどうしても気になって飼い主さんを説得して緊急手術をする事にしました。子宮蓄膿症の、電解質異常が進んだ子で助かった子はほとんどいないのです。おなかを開けると、じんわりと白い液体が滲み出てきます。破裂してる!大至急、一旦帰られた飼い主さんを電話で呼び戻してもらって、手術に立ち会って頂く事にしました。獣医師としての保身から、状況を見てもらいたいとの思いも当然ありますが何より術後の麻酔から覚めない恐れがあったので、飼い主さんの声を聞かせれば覚醒してくれる可能性があるからでした。エコーでもレントゲンでも、それほど子宮が大きくなかったのはこのせいでした。破裂と言っても、子宮の一部が壊死してそこからじわじわと滲み出ているだけだったので膿が漏れている事が判らなかったのです。手術は手を止める事なく淡々と進んで膿で汚れたおなかからとにかくまず子宮と卵巣を摘出して、腹膜炎を起こして変色した脂肪をできるだけ除去して、あとは抗生剤を混ぜて暖めた生理食塩水で徹底的に腹腔洗浄して無事終了しました。すぐにお母さんとお嬢さんに呼びかけを始めてもらって10分くらい経った頃、どうにか麻酔から覚めてくれました。最初のヤマをこえてくれてほっとしながら、第2のヤマは手術の翌日を無事に迎えれるかどうか、第3に術後3日から5日目に術後腎不全を起こさないかどうか。それを乗り切るまではまだ予断は許さない事を説明してICUに入院の用意をすると、飼い主さんにはその夜はお帰り頂きました。そして今朝、お水も飲んで、元気に立ち上がって尻尾を振っているワンちゃんを確認して今帰宅したところだったりします。この姿を見たら、きっとお母さんも喜ぶでしょう。が。。子宮蓄膿症は、原因になっている子宮を摘出すると途端に元気になります。ところが、手術の前から腎不全になっていたり、電解質バランスが崩れて悪液質になっている子の場合、元気に回復していたはずの子が突然、術後3日目とか5日目頃に急性の腎不全に陥ってあとは治療の反応も悪いまま亡くなるケースが非常に多いんです。ましてや子宮破裂。点滴や抗生剤プログラムなど、私に考えられる全てを予測して、打つ手は全て打ちました。あとはこの子の頑張りに期待してこのまま順調に回復してくれる事を祈るだけです。こういう時、いつも院長が口にする「獣医療は治すのではなく治るのを手伝うだけだ」という言葉が身に染みます。
Oct 5, 2006
コメント(6)
全2件 (2件中 1-2件目)
1


