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2006年11月13日
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カテゴリ: 日記
国民が「いざなぎ越え」景気を実感できない理由

 10月12日に発表された月例経済報告で、景気の基調判断は「回復」とされた。これで、2002年2月に始まった景気拡大が57カ月連続となり、戦後最長のいざなぎ景気(1965~70年)と並んだ。おそらく11月の報告でも、景気回復という判断が示されることは確実で、いざなぎ景気を上まわる景気拡大となることは間違いない。

 いざなぎ景気の当時は、乗用車(カー)、クーラー、カラーテレビが、「3C」あるいは「新三種の神器」と呼ばれ爆発的に普及。国中が活況に沸いていた。いざなぎ景気という名前は、ご存じのとおり、古事記に記されたいざなぎ・いざなみによる国生みの伝説にちなんでいる。それ以前にも、戦後には神武景気、岩戸景気という好景気の時期があったが、それを上まわる前代未聞の景気拡大として、いざなぎ景気と名付けられたわけだ。

 今回の景気拡大は、それを上まわる記録的なものだというのだから、国中が大いに賑わっていてもおかしくない。

 だが、一般の国民は本当に景気拡大を実感しているだろうか。おそらく、これをお読みになっている人の9割以上は「ノー」と答えるに違いない。それはなぜか。

国民が景気拡大を実感できない理由は、大きく分けて二つある。

 一つは、成果が勤労者(サラリーマン)に分配されていないことだ。これは、数字にはっきりと表れている。

 今回の景気拡大が始まった2002年1~3月期から、2006年4~6月期まで、名目GDP(年率換算)は21兆円増えた計算になる。ところが、その間、サラリーマンの所得は4兆円も減っているのだ。

 これはどういうことか。つまり、資本家はこの景気拡大期に25兆円も所得を増やしたのである。サラリーマンに分配する報酬を減らして、自分たちだけが景気拡大の甘い汁を吸っているというわけだ。



 その一方で、すき家や吉野家では、少しでも食費を浮かそうとしているサラリーマンで賑わっているのだ。

 大都市の中心部には次々に高層ビルが建てられ、大企業や外資系企業がテナントとして入居している。その一方で、地方の商店街はシャッター通りとも呼ばれるほど閉店が相次ぎ、若者の失業者が増えている。

 これが、「いざなぎ越え」景気拡大の真の姿である。

 今回の景気回復は、単に回復力が弱いというだけではない。いざなぎ景気では、日本国中の多くの人に成果が行き渡ったのに対して、今回の景気回復で恩恵にあずかっているのは、労働者でなく資本家、地方でなく大都市、中小企業でなく大企業なのだ。

 この景気拡大に、あえて名前を付けるとすれば「格差景気」というのがぴったりだろう。

国民が景気拡大を実感できないもう一つの理由は「税制」である。

 今回の景気拡大の間、2002年度から2006年度において、個人に対してどれだけ増税があったか覚えているだろうか。配偶者特別控除の廃止、老年者控除の廃止、定率減税の半減、これだけで3.9兆円の大増税である。しかも、定率減税は、全面廃止に向けて動いている。

 それだけではない。たばこや発泡酒の税金も2度にわたって引き上げられた。さらに、厚生年金保険料や健康保険料も上がり続けている。

 国税庁の「民間給与の実態」によれば、サラリーマンの年収は昨年まで8年連続で下がっている。そのなかで、税金が上がり、社会保険料が上がっていくのだから、庶民に景気回復の実感などあるはずがない。

 一方、法人課税は、その間に1.4兆円も減税された。しかも、上場株式の売却益に対する税率は、2003年から10%に引き下げられている。汗水垂らして働いた人びとの税金を増やす一方で、株を売り買いして濡れ手で粟の金儲けをしている面々の税金は下がっているのである。これほど理不尽なことがあるだろうか。

 これに飽き足らずに、経済財政諮問会議は、法人に対するさらなる減税の検討を始めているというから驚きだ。



 これだけを見ても、安倍総理の経済政策は、金持ち優遇、サラリーマン冷遇であることが分かるだろう。小泉政権における弱肉強食の新自由主義と何ら変わりないのである。

 だが、そんな政策にもかかわらず、内閣支持率は60%を超えている。果たして、日本人にはそんなに金持ちが多かったのだろうか。さもなくば、日本人はよほどのお人好しであるというしかない。

 このようにサラリーマンにとって、ほとんど成果が実感できない今回の好景気である。もっとも、数字上とはいえ好景気が続いていればまだまし。実はそれすらも危うくなっているのだ。

 月例経済報告での景気回復の判断材料となっているのが「景気動向指数」だが、それを見ると景気の減速傾向がうかがえるのである。

 景気動向指数では、「先行指数」「一致指数」「遅行指数」という三つの数字が作成され、景気を判断する材料とする。それぞれ、先行指数には「景気の先行きの予知」、一致指数には「景気の現状の認識」、遅行指数には「景気の局面の確認」という意味合いがある。



 これだけを見ると、景気回復はまだまだ続きそうであるが、問題は先行指数である。先行指数は2カ月連続で50%を割り込み、8月の指数はなんと20.0%。景気の先行きに不安があることを示しているのだ。

 なぜかといえば、先行指数の算出に使われている12の指標のうち、現時点で実績が明らかになっているのが10指標あり、そのうち8指標が悪化を示しているからだ。

 8指標のうち、最終需要財在庫率、消費者態度指数、長短金利差、東証株価指数、中小企業売上見通しの5指標は前月に引き続き「悪化」を示した。そして、前月は「改善」であった新規求人数、耐久消費財出荷指数、日経商品指数の3指標は、同月、「悪化」に転じてしまったのである。

 このように、景気の先行きを予知する「先行指数」を見る限り、今回の景気拡大は既に息切れをしつつあるようだ。となると、今回の景気拡大は、その果実をサラリーマンが味わうことなく、減速に向かうのかもしれない。

 ところが、そんな状況にもかかわらず、表面的な景気拡大の長期化を受けて、日銀が再利上げをするという観測が強まっている。もし、そんなことになれば、今回の景気拡大はあっというまに終焉を迎えるだろう。


森永 卓郎氏(もりなが・たくろう)

 1957年東京都生まれ。東京大学経済学部卒。日本専売公社、日本経済研究センター(出向)、経企画庁総合計画局(出向)、三井情報開発総合研究所を経て、91年から三和総合研究所(現UFJ総合研究所)にて主席研究員、現在は客員主席研究員。獨協大学特任教授。テレビ朝日「ニュースステーション」コメンテーターのほか、テレビ、雑誌などで活躍。

 専門分野はマクロ経済学、計量経済学、労働経済、教育計画。そのほかに金融、恋愛、オタク系グッズなど、多くの分野で論評を展開している。日本人のラテン化が年来の主張。





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最終更新日  2006年11月16日 08時55分02秒
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