さくら咲く

さくら咲く

出産前夜



最後の最後でマグネゾールの速度をまた速くされ、

また体が熱くなっていきました。

心臓がどきどきして落ち着きませんでした。

ベットを起こした状態でずっと我慢していたら、

少し辛さが和らいできたように思えました。

そして、テレビを付けてみました。


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テレビ朝日の「テレビのチカラ」がやっていました。

心臓病の由美ちゃんの話でした。

日本で心臓移植手術を受けられない。

助かる方法は渡米して手術を受けることだけ。

そのアメリカでの手術費用、約9000万円を番組の募金で集めて、

いよいよ渡米するところでした。

由美ちゃんの主治医の先生が出ていました。

その先生とは会ったことがありました。


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何年か前、アメリカのフィラデルフィアへ行ったときのこと、

帰りの飛行機で隣り合わせた外科医の先生でした。

飛行機の中、その先生とずっと喋っていました。

その中で先生が言った言葉を思い出しました。

「アメリカに比べれは日本の医療は遅れているね」

と、考え深げに言ったことでした。

私はその時、他人事のように聞いていました。

でもその時になってその言葉の重みを感じていました。


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「胎児治療」は海外では普通に行われているのだ。

日本に住んでいるために、うちの子には今まで何の治療も受けられず、

肺が潰れたままの状態で産まれてこなければならない。

「私もアメリカに行きたかった」

由美ちゃんを見ていたら羨ましい気持ちになりました。


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その番組を見て泣いていたら、お腹に力が入ってしまいました。

「いけない!」と思って直ぐにテレビを消しました。

張りの間隔が10分おきになってしまいました。


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10時近く、担当看護師さんが、激励に来てくれました。

その看護師さんは一生懸命に私の精神面をサポートしてきてくれた人でした。

時間があればいつも私のところへ来て、話をしてくれました。

それまでの2ヶ月を二人でしみじみと振り返って、

「~さん、段々母親らしい顔になっていったよ。よく今まで頑張ったね。」

と言ってくれました。

私は頑張れたかどうかは分かないと思ったけれど、

言われて何だか清々しい気持ちになっていました。

病院に対しての不平不満も消え、

子供の生死に対する不安も無くなっていました。

子供は普通に元気に産まれて来る気さえしていました。

「初めは不安でいっぱいだったけど、今はただ純粋に、明日子供に会えるのが楽しみです。」

と、言いました。早く子供に会いたい気持ちで一杯でした。


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旦那からメールが来て

「ビデオテープ買っておいたよ」

と書いてありました。

旦那が楽しみにしていてくれるのが嬉しくなりました。

私も素直な気持ちになって返事しました。

「今まで私の我がまま聞いてきてくれてありがとう。毎日お見舞いにくるの大変だったでしょ。

明日から親子3人、仲良くやっていこうね」



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