さくら咲く

さくら咲く

子供との対面



子供の処置に当たった新生児科の先生の説明がありました。

重度の肺低形成だったそうです。

左の肺が潰れていたことはもともと分かっていたことでしたが、

頼みの右の肺も機能していなかったそうです。

子供は産まれて直ぐにNICUへ運ばれ、

呼吸器で酸素を送っても呼吸が出来ず、そのため心拍が下がり、

薬で無理やり心拍を上げながら、酸素を送り続けたそうです。

それが2時間行われ、ついにこれ以上やっても無理だと判断され、

うちの旦那の了解を得て、処置を終了させたそうです。

「あなたの赤ちゃんは生きようと頑張ったのよ」

新生児科の婦長さんが言ってくれました。


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その後にやっと子供に会わせて貰えることになりました。

対面に行くときに主治医の先生と担当看護師さんも一緒に来てくれました。

地下へ連れて行かれると、「霊安室」の表示が見えました。

こんな所にいるんだ。

自分の子供がそこにいるなんて信じられませんでした。

また悲しみがこみ上げてきて、涙が止まらなくなりました。


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扉が沢山並んだ廊下がありました。

一番手前の扉の前に黒い服を来た葬儀屋の男の人が立っていて、

私達はその中に通されました。

中の空気はひんやりしていました。

祭壇の上に透明のケースがあり、子供はその中にいました。

立ち上がって覗き込むと、明らかに「生きていない」赤ちゃんが眠っていました。

それはとうに息を引き取っていて、

今はただ「保存されている」赤ちゃんでした。

そんな子供を見ただけで、

私が眠っている間にいかに多くのことが起こり、

「終わってしまった」のだということを感じました。

車椅子に戻ると、旦那に「抱いてあげる?」

と聞かれました。

私は一瞬ためらいました。

思ってもみないことを聞かれた気がしました。

何を怖がっているんだろう、私は母親なんだ。

「抱いて上げなきゃね」

言って抱かせてもらいました。

抱くと子供はひんやりとしていました。

こんなに冷たいんだ。

その冷たさに感情が一気に込み上げました。

「冷たいよぉぉ!」

思わず旦那に向かって泣き叫んでしまいました。


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冷たい子供を抱きながら、落ち着いて顔を見てみると、

自分の子供なのだという実感が込み上げてきました。

私の子供だ。この子が私のお腹にいたんだ。

それまでに感じたことのない、

その子への愛おしさを感じていました。

たまらなく可愛く思えました。

次の瞬間また泣き叫びました。

「かわいいよぉぉ!」

今度は旦那に向かって何度も何度も「かわいい」と言い続けていました。


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後ろで先生が黙って立ち去って行くのが分かりました。

その後、看護師さんも「ここは親子3人で」

と私の肩に手を置いて言いい、出て行きました。

私は子供を抱きながらうずくまり、振り返ることも出来ませんでした。

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暫く抱いた後、またケースに戻してあげました。

「お前、ウサギのまくら作ってたやろ。俺、完成させてきたんや」

そして、旦那のリュックからあのうさぎが、

ビヨンと垂れ下がった耳を付けて出てきました。

彼が裁縫やるなんて思ってもいなかったので驚きました。

とても完成したとは言い難い出来栄えでしたが、

彼の一生懸命な気持ちを嬉しく思いました。

私達はそっと子供の頭の下に枕を敷いてあげました。

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