日本語はダメか2

日本語はダメか2

2013.03.31
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カテゴリ: 女 男 愛
 目の前にいなくたって、おまえは私のすぐそばに、いつだっているんだよね。

 花冷えと言うんだろうか。寒いこの三月の末。春を迎える前には、いつだってこのような「儀式」を通らなければならないんだよね。
 思い出というのも、おまえが「消えてしまった」という儀式を通らなければ出来上がっていなかった。

 九官鳥が、突然死んでしまった数年前のある春。
 庭に深い穴を掘って、九ちゃんを埋めた。
 おまえは、私の肩に乗っていた。風の強い時だったね。何度かあおられて飛び上がってはまた肩に掴まった。
 羽が伸びていることを、私は忘れていた。おまえと一緒にいるためにはやらなければならなかった儀式……風切り羽をカットしなければならない時期だったのに、忘れていた。
 ああ、強い風が吹いた。
 おまえは風になってしまった。上空へ舞った。

 近くの「憩いの家」の屋根の向こうに消えたおまえを呼び続けた。

 一度戻ったんだったね。
 私の肩に掴まろうとしたその時、あんたはそのまま風に飲み込まれた。
 でも、自分の家を忘れていなかったね、三階建ての高い屋根に止まった。私の書斎のある部屋の上。
「シャンシャン シャンシャン」
 ブロック塀のそばに立ちながら、見上げて名を呼び続けた。
 名を呼ばれるとじっとこちらを見下ろしていた。
 私は玄関へ向かった。二階の自分の部屋からあんたを呼んだら捕まえられる、と思いながら。
 おまえもそのまま東の方へ飛んだ。
 そして、永遠に、現われなくなってしまった。

 屋根の上から見下ろしていたあんたと眼があったよね。

 眼はそう言っていた。

 あのとき、私が西の方へ走っていれば、と今でも思っているよ。
 そっちは公園だから、おまえと私を遮るものはない。おまえは、その眼いっぱいに私を容易に見つけ、簡単に私の元へ戻ったかもしれない。
 玄関へ向かった私と同じ方向へおまえは羽ばたいた、そのまま、西風に流されてしまった……。


 おなか、減ってないかい、寒くはないかい。
 怖いこと、ないかい。

 風よ風、風かぜ、吹くな、暴れるな。

 寒い春。
 風は吹いていないけれど。





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最終更新日  2013.03.31 11:23:08
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