日本語はダメか2

日本語はダメか2

2015.01.08
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カテゴリ: 才能 天賦 能力
<六月十八日 今日から、私の折りにふれての感想をこのノートに記すこととする。星ひとつない闇夜。蛙(かえる)が鳴いている。私はもりもりと勉強しなくてはいけない>。宮尾登美子さんの物書きとしての人生は、こんな一文で始まった。一九四七年のことである▼宮尾さんは十九歳の時、生まれたばかりの長女を抱いて旧満州(中国東北部)に渡った。死線をくぐり抜け、終戦の一年後に高知に引き揚げたが、待っていたのは結核の発病。風の吹く日に寝ていると、ガタガタ家を鳴らす風音が、近づく死の足音に聞こえたそうだ▼「何をして死んだらいいのか」。そう自問し、幼い娘への親の務めとして、誰も耳を傾けようとせぬ自分の戦争体験だけは書き残そうと思ったという▼そうして記し始めたのが、粗悪なノートに綴(つづ)った日記。そこには殻を必死で破ろうとする二十一歳の女性の思いが、刻まれていた▼<七月四日 金の月が昇る。なんという荘重さ。私はいま、書きたい、書きたい、書きたい、書きたいばかり><八月十五日 私はいま、すべてを文学へ打ち込もうと決心している。ガッキと取り組んで、これに負かされたとき、私の人生は終わりである>(『宮尾登美子全集』)▼激しい歴史の波の中で必死に生きる女性の生きざまにガッキと取り組み、書いて、書いて、書き続けて、八十八年の人生の幕を静かに閉じた。





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最終更新日  2015.01.08 14:12:35 コメントを書く


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