敏洋の 読みもの三昧

敏洋の 読みもの三昧

2026.01.02
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カテゴリ: 物語り

 結局男は、ちいさな広告会社にころがり込んだ。

社長に、事務員ひとりの会社だった。

なりふり構っていられる状態ではない、

きょうの糧のためにもと、履歴書から大学卒と商事会社つとめをはずした。

毎日、足を棒にしてスーパー・商店をまわった。

ひとつの契約高が 数万円の仕事を取ることに、なんど頭を下げただろうか。

炎天下を、自転車で走りまわりもした。

夜になると、疲れはてて泥のように眠りこけた。

 ミドリは、相変わらずやって来た。

しかし男の帰りが遅いことが多く、すれ違いの日々がつづいた。

そんなある夜、帰りが十一時を過ぎた。

鍵のかかっていないドアに驚きながらも、疲れから深く考えもせず部屋にはいった。

 と、暗闇のなかにミドリがいた。

月明かりで、辛うじてミドリだとわかった。

ミドリは、男の胸にとびこむと、火がついたように泣きじゃくった。

こんな遅くまで男を待ちつづけたことはない。

ただ事ではないと感じ なんとか落ち着かせようとするが、ミドリはさらにはげしく泣いた。

 男は、久しくミドリを抱いていないことを思いだした。

しかし、そのことではないようだ。

男がミドリの唇を吸うと、ミドリは激しく求めてきた。

久しぶりのミドリの感触に、男の性欲が爆発した。

「夕食後の団らんの時だったの」。

ミドリは、ポツリポツリとことの顛末を話しはじめた。

「母と妹の3人で、貴方のことを話してたの。

毎日お部屋に行って、お掃除をしたり、夕食の支度をしたりしていることを」

 男はあくびをかみ殺しながら、ミドリの話が早く終わってくれることを待った。

こんな時間までなぜ待っているのか? 

そのことが気になって仕方がない。

会社帰りに寄ったにはしては、服装がカジュアルすぎることが気になった。

「ふたりはわたしたちのことを応援してくれているし、武さんのことが好きだから、にこにこと聞いてくれたわ。

ここ2、3日は残業の連続やら、兄が迎えにきたりしてアパートに寄れないから、寂しいって」

 いつ帰ってきたのか分からない道夫兄さんが、キッチンにはいるなりだったの。

「冗談まじりの会話だったのに、とつぜんに道夫兄さんが怒りだしたの。

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最終更新日  2026.01.02 00:00:15 コメントを書く


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