Dobrze Widzi Sie Tylko Sercem

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クロアチア・ポーランド(後半)3

エコロジーバスに乗って、国立公園の中へ入ってゆく。だんだん湖が見えてきた。湖の周りに散歩道が整備されており、観光者は好きなコースを歩いていくことができる。一日ではとてもではないが、全て周ることのできない広さだ。私たちは船乗り場へと続く散歩道を進むことにした。ものすごく、美しかった。言葉では言い表せない。それぞれの湖が各々異なった色をしている。海のように青い湖やグリーンの海、透き通った湖…これほどまでに透き通った湖を見たのは、私は初めてだった。青いきれいな湖は日本でも訪れたことがある。けれど、これほどダイナミックな光景を私は見たことがなかった。日本のみんなに見せたい、とすら思う。

透き通った水に浮かび、立ち止まっているたくさんの魚たち。そこで泳いでいるカモ。魚もカモも、全く人を恐れない。カモは餌を探すのに夢中になって、私の足元まで平気で近づいてくる。餌付けされているのか、魚はどこでも遊歩道の近くに多く集まっていた。同行している二人も感動しているようで、オリオルは 「Paradise!」 と言う。前にはふらふらしながら、家族に支えられて一生懸命歩いているおばあさんがいる。みんな感動しながらこの地を歩いているのだな、と思った。私も本当に感動して、普段はそれほど写真を撮らないのだけれど、ここでは50枚以上撮ってしまった。自分が見た景色をそのまま全て保存したい、と心から思ったからだ。この土地は、紛争時一時期セルビアの占領下にあり、その後クロアチア領に戻ったという。紛争の影響で一時期は危機にさらされている遺産としてリストにも載ったそうだが、その後もとの自然を取り戻し、リストからは除外されたのだそう。こんなに素敵な場所を、二度と戦争に巻き込んでほしくないと心の中で思う。

「富士山は世界遺産にはならないの?」 とオリオルに聞かれる。
「ごみがたくさんあるからね…」

散歩した後、船乗り場に着く。船に乗って青い湖を渡ると、パンや豚の丸焼きなどが売っている場所に着いた。ここで昼食をとることになった。

そら2


サシャはアイデンティティとしてはセルビア人だけれど、セルビアのパスポートの他にスロヴェニアのパスポートも持っている。つまり、スロヴェニアの国籍も持っている。おじいさんがスロヴェニア人なのだそうだ。

「スロヴェニアのパスポートをもらえて、本当によかったよ。スロヴェニアはEUに加盟したから、これでEU圏内に入ることができる。セルビア人はEU圏内に入るにはビザが必要なんだ。ビザを取得するのは難しいしね」

「ポーランドではEU加盟に反対してる人が多かったけど…。私の周りでは」 というと、

「なんで?信じられない。EUに入れば自由だ。セルビアでは月300(か400)ユーロしか稼げない。スロヴェニアは経済が好調だから月に900ユーロも稼げるんだ。そのうちスロヴェニアに行って働くつもりだよ」 と言う。

スロヴェニアは今年EU加盟した10カ国のうちの一国だが、その中でも加盟条件を優秀に満たしている優等生だ。

「セルビアもそのうちEUに加盟できるんじゃないの?」 というと、
「No. Never!」 と彼は言う。 「「絶対無理だよ。貧しすぎるから」

戦争のことは子供のときだったからよくは覚えてないけど、スロヴェニアに逃れていたそうだ。宗教が戦争の起きたひとつの原因だと思っているみたいで、彼は宗教には懐疑的だった。敬虔なカトリックのポーランド人とは大違いだ。

「今じゃみんな教会なんて行かないよ」。

みんな、というのは誇張かな、とも思うけれど。

「セルビアはオスマン帝国に支配されていたからprimitiveなんだ (ヨーロッパでないトルコに支配されていた、と言う意味で野蛮ということ)。 クロアチア人は自分たちが洗練されていると思っている (ヨーロッパ側の文化圏に支配されていたから)。 それが戦争の原因なんだと思う」
(クロアチアは) ハプスブルク (帝国の支配下) だったから?」
「そう。でももともとはセルビアもクロアチアもひとつなんだと思う」


彼にセルビア語とクロアチア語は同じなのかどうか聞いてみた。

「同じだよ。たまにわからない単語があるけど」

セルビア語とクロアチア語はほぼ同じ言語だと言うことは知っている。違いは使っている文字がラテン文字かキリル文字かに過ぎない。でもそれをあえて人為的に分け、差別化し、それぞれ独自の言語にしようとするナショナリスティックな人たちがいることをどこかで読んだことがある。だからこそ、彼が言語についてどう考えているのか知りたかった。「違う言語だ」と答えるとするなら、ナショナリストだからだ。

余談になるけれど、彼のメールアドレスは 「beskraj」 という単語から始まっていた。ポーランド語で「bez kraju」というのは 「国のない」 という意味(ポーランド語もセルビア語も同じスラヴ語。お互い多少似ているのでいくつかの単語は理解することができる)。彼は国なんて関係ないって思っているのかもしれない。あくまでもこれは私の推測だけど。

その後オリオルとサシャはリエカよりも南にある海沿いの町、ザダールへと向かった。ビーチへ行って泳ぐのだとか。いいなあ、と思いつつ、私はザグレブに戻った。
(つづく)


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