Ability~一章~〔Ⅳ〕

「貴様も直ぐ其の男と同じ所に葬ってやる!」
旅人―否邪気は再び力を溜め始めた。其の時だ。カイルから貰った玉が光を放ち始めたのだ。そして姿を変えていく。其の姿は此の世界に住んでいる者ならば一度は見た事が有るであろう杖。昔ハゼスを封印したカイルが使っていた杖だ。
邪気は今までに無いほどの攻撃をするであろう。すさましいほどのどす黒い光を放っているのだ。
「ふっ・・・此れで最後だ・・・」
声と共に溜め込んだ力をアネルにぶつけ始めた。全ての攻撃を終え死んだと確信し、其の場を去ろうとした。
「ちょっと待ちなよ・・・。まだ・・・死んでない・・・。今度はこっちから行くよ?」
穏やかな口調だった。しかし殺気すら感じた。杖を空高く振り上げ何かを唱え始めた。
「我が名はアネル・ハミアル。汝と主となる。我が聖なる力を汝に与えん。汝長年の眠りから覚め汝の力を今放て!カイル・シムアルに代わり我が命す!聖光( セイントライト ) 」
「っ・・・貴様っ・・・カイル・・・!?・・・覚えておけ・・・我は死なぬ。・・・我は必ずや」
全てを言い終わる前に杖が邪気を吸収した。其の杖は邪気を浄化し破壊された所が元に戻って行く・・・。そして黄泉魂(死んだ者の魂)が村を彷徨う。
実に不思議な光景であるのにアネルには不思議なことでも何でもなかった。唯・・・自分にこんな力があったのか…と思ったぐらいだったのだ。
不図アネルは正気を取り戻した。そしてセルハの存在を思い出した。
「セルハ!…セル…」
必死に呼びかけた。自分を庇って死んだなどアネルにとってはお節介な事極まりない。お礼の一つでも言ってやる気にはなれない。だから尚更死んだなど許せるはずがないのだ。
「…っぅく…」
「セルハっ!」
セルハが生きていた事に少々ホッとした。
「ア…ネル…。」
死にそうな声を上げ呼んだ。
「何?」
「…腹減った…」
何を言い出すのかと思えばこの少年…第一声が腹減ったですか?そんな呑気な事を言い出したセルハにアネルの反応は酷い物だった。
「セルハ…」
穏やかで其の上笑顔で呼びかける。次の瞬間…
「死んで来い」
とても低く、殺気の入り混じった声を出した。アネルは…否二人は知らない。セルハは先程まで本当に死んでいたのだ。あの不思議な力のお陰だろう。つまりは其れ程までに強い力なのだろう。治癒の能力者ですら一度死んだ者を生き返す事は難しい…。嫌、無理だ。死んだ者を生き返せる者は数が知れている。あと…もう一つ解ったことがある。馬鹿は死んでも治らないとはよく言ったものだ。本当の事なのだから。そして其の時…
「こいつさっきまで本当に死んでたぜ?」
「何言ってんの?今現にこう…して…」
上の方から聞いた事の無い声が聞こえたのだ。

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