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2017.09.26
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打海文三の最高傑作と呼ばれる作品を読んだ。

〇ストーリー

新宿である男が撃たれて死んだ。だがその射殺犯が福井県の海市の巡査部長であったことから,警察庁と警視庁合同の特別捜査班が海市に乗り込む事態となる。難民にあふれ,中・韓・露のマフィアが覇権争いをしていた海市では,現場の下級警官の殉職が相次ぎ,多くの下級警官と遺族による報復組織〈P〉が生まれ,一度は公安に壊滅されたかに見えたが,県警の公安部長を暗殺して見せた。だがそれから8年が経過し,〈P〉の活動は聞かれなくなり,マフィアたちも勢力図を確立し,一定の安定を見せていた。寄せ集めの特捜チームは,それぞれの思惑を抱きつつ,誰も信用が出来ない海市へと乗り込む。そこでは・・・

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なるほど,これが「ハルビン・カフェ」だ。ハードボイルドの傑作として噂の作品で,「機龍警察 暗黒市場」の一部のシーンが似ているとも言われてる。

「機龍警察」がシリーズものとして,作品世界の厚みを作り上げているのに比べ,「ハルビン・カフェ」はたった1冊で,海市を舞台にした作品を,そこの架空の歴史,複数の人々の人生を構築してしまった。

ハードボイルドが,1人称で描かれる暴力的,あるいは自己破滅な傾向のあるミステリーだとすると,この作品はその枠組みをはるかに超えていて,群像劇であり,歴史物語風でもあり,そしてシェイクスピアの悲劇のようでもある。「機龍警察」で,日本のエンターテインメント作品のスケールの大きさに喜んだが,それ以前にこうした作品があったということに驚いた。

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「一九七二年のレイニー・ラウ」と「ハルビン・カフェ」を同時に借りていたのだが,「ハルビン・カフェ」のページを開いた瞬間に,その作品の重さが伝わってきて,ついつい後回しにして読むのが遅れてしまった。



この重層的な世界観は,欠点というよりは,作品の特色なのだろう。実際に,前に進むのはゆっくりであっても,作品世界の〈今〉である7日間の描写は,きちんと描かれ,大きなロマンが最期に集束するポイントとして成立している。

この構成をきちんと緻密に制御している打海文三の手腕こそが,ここで称賛されるべきものだろう。最初は分かりにくくても,何度も語られる中で,きちんと人々の行動や心情が浮かび上がってくる。

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この作品で驚いたのが,打海文三作品の多くに流れていた「どこかで他人が自分のことを赦してくれるだろう」という甘えがすっぱりと消えていたことだ。

打海文三の多くの作品で,はみ出し者の探偵は,探偵事務所〈アーバン・リサーチ社〉の外部調査員となることで,必要な資格や支援を得て事件に向かう。はみ出し者が大手組織にぶら下がることで,自分が追いたい事件に取り組める,という理想的でありながら,どう考えても都合が良すぎる甘ったれた世界だ。

シリーズを離れ,福井県を舞台にしたこの作品は,中・韓・露のマフィアが路上では争い,キャリアとノンキャリア,警察庁系と公安系が県警の中では争うという,”どちらを向いても敵”という状況で,さすがに世界観が違う。

構成や文章を含めて,打海文三も並々ならぬ気概でこの作品に取り組んだ形跡がうかがえる。

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作品の読みにくさ,これまでの作風との違い,以外に問題となっているのが,真犯人の動機だ。

自分自身と同僚・親族の命に対する報復を行う〈P〉,そこから情報を聞き出し自分が先に〈P〉をつぶそうと画策する,公安と警察庁。そこまではロジックで理解が出来るのだが,真犯人の動機はどちらの派閥にも属さない。

複数の肩書と名前を用い,常に先を読んでいる天才的な男が,どうしてこの行動を取ったのかは読んでみてのお楽しみだ。きちんと説明はあるのだけれど,それに納得するかどうかは,また別の問題だし。



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個人的に気になったのが,知力・行動力も備えているとして登場した女性3名が,その後,見下していた男性と激しく関係を持つことだ。

強い女性に対して汚すような関係の成立を複数回描いているのは,気になってしまった。

真犯人も,彼を追う人々も同じような倒錯的な感情を秘めているということを描きたいのだろうか?そうだとしても犠牲になるのが女性ばかりといういのは,ちょっと偏りを感じてしまう。

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ぜひ,この世界観に酔ってもらいたい。
















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Last updated  2017.09.27 22:10:53
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