完読したラブレー『ガルガンチュア物語・パンタグリュエル物語』(岩波文庫)全5冊について、もう少し。
ラブレーは、16世紀フランスの作家。当時のフランスは、既成の教会勢力と、改革派の勢力が、ぶつかりあい、宗教的には、きわめて不安定な時代だった。
ラブレー自身は、修道院に勤めたり、医者をしたりして暮らしていたが、『ガルガンチュア物語・パンタグリュエル物語』を発表するごとに、発禁処分になり、いつ裁判にかけられるかわからないので、逃避生活が続いた。
『ガルガンチュア物語・パンタグリュエル物語』は、フランスに伝わる巨人伝説をもとに、ラブレーが想像の翼を広げたもので、民話的猥雑な笑いの要素がふんだんに盛り込まれている。
言葉遊びや駄洒落が頻繁にでてくるので、翻訳は不可能といわれていた。
下手をすれば、ただのお下劣な話になってしまう。
その不可能といわれた翻訳を成し遂げたのは、訳者渡辺一夫の努力のたまものである。
和訳をそのまま読んでも、意味不明の個所がたくさんあるため、岩波文庫版には、1冊の半分が注釈と解説にあてられている。
渡辺先生は、ありとあらゆる海外の注釈本を参照しながら、注釈をつけたようだ。
なかには、宮武外骨や南方熊楠まで、引用されているのには驚いた。これらは、主に、猥談に関する項目で引用されている。
この注釈だけでも、じっくり味わうことができる。
『ガルガンチュア物語・パンタグリュエル物語』では、ラブレーの辛辣な社会風刺がいたるところに顔をだすのだが、それがパリ大学神学部に再度にわたり摘発される。
そのため、ラブレーは、毎巻、風刺が目立たないように、物語をさらに猥雑に、さらに空想的に味付けする
まさに、そここそが、本書の魅力、読みどころとなっているのである。
ラブレー作品の、特徴のひとつとして、派手な糞尿譚がある。ウンコ、ショウベン、ゲロの類の話がふんだんにでてくるのだ。
それが、この物語を、さらに滑稽な味にしたてている。
この訳書が、ただの下品な話になってしまわなかったのは、渡辺氏の筆力であろう。
だから、ラブレーを味わいつつも、半分以上は、渡辺氏の手業を味わっているのと同じだ。
この次には、ラブレーが影響を受けた、エラスムス『痴愚神礼讃』(岩波文庫)を読むことにした。
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