私が、まだ仕事がなく、ある工場で夜勤をしていたときの話だ。
今年と同じような、暑い夏の年だった。
この工場では、紙コップをつくるのが仕事で、作業時間前に、みんなでラジオ体操をして、上司の訓話をきく。
その上司がある日、話した出来事だ……。
きのう、取引先の製紙工場で、こんなことがあった。
作業時間が終わり、工員の点呼をしていると、出稼ぎのAさんの姿だけが見あたらない。
みんなの話を総合してみると、Aさんを最後に見かけたのは、パルプチップの搬入口の近くだったという。
製紙工場では、このパルプチップを細かく砕き、紙の原料とする。できた紙は、真っ白な長い帯となってでてきて、ロールに巻き取られていく。
印刷所は、この紙のロールをまるごと仕入れて、本や雑誌をつくるわけだ。
さて、Aさんは、どうしたのだろう、と皆で話しているうちに、工場のなかが大騒ぎになった。
みんなの頭に悪い予感が走った。
あわてて、工場内に駆けつけたところ、工員たちがひとつの紙のラインの前で、呆然と立ちつくしていた。
そう、そのラインからは、真っ白な紙が、途中から、突然、真っ赤に染まって吐きだされていたのだった。
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