大河の源泉


鳥が囀る(さえずる)
黒一色の視界は徐々に赤みざしてゆき
覚醒を悟った僕は目を覚ました。
「ねぇ、起きた~」
甘ったるい間延びした声
寝起きのぼやけた風景の中無遠慮に映える綺麗に肩でとまってた真紅の髪
「起きたか、って聞いてるの。速く答えてよ、私たち結婚初日なのに何もしなかったのよ、そのことも問い詰めるんだから!」
「煩い、十五の若奥さんを愛せるほど僕の守備範囲は広くないよ」
先ほどから怒りをその笑顔に隠していたかのじょだけれどもうそろそろ猫を被る忍耐力がつきたようだ
頭を数回叩いて強引に目を覚ます。
「あんただって十三そこらのガキじゃないの!」
「酷いな、僕はこれでも十七だ。じゃ、勉強会があるから」
立ち上がり、かばんを取ろうとしたがその手は彼女に止められる。
「あんた、私のことなんて呼ぶ気?」
「なぜ答えなきゃいけない、早く行かせてくれ。この勉強会は定刻30分前が基本なんだ」
彼女は俯いた。
この娘は泣くときはいつもそうだ
「・・・だって」
力のない手を振り解いて僕は鞄を手に取った。
「行ってくる」
時間がないので着替えは後にしよう。朝食も太陽の昇り具合から遠慮せざる、食卓に飾ってあるのはもったえない限りだが。
「正午には帰る」
扉の閉まる音とともにうちの若女房の声が聞こえた気がした
「・・・だって、出会った時から一度もあなたから話しかけてくれないじゃない」

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