前話

    -3-

「動くな!お前ら!」
ユウキは不良たちがアジトにしている貨物室に飛び込んですぐにリボルバー式の拳銃を構えて叫んだ。
 シリンダーは固定式でバレルが短い。
 シングルアクションなので自分でハンマーを起こさなければいけないのだが、そんなことをユウキは理解していなかった。
 不良たちの数は見たところ八人といったところだろう。
「おお、なんだぁお譲ちゃん。俺たちの家に遊びに来たのかい」
 そう言うと不良の一人―――リーダー格だと思われる男―――がユウキに近寄ってきた。
「動くな!!それ以上動いたら撃つぞ。お前らがこの町から出ていくと言うなら―――」
 ユウキが言葉を続けている最中にもリーダー格らしき男は近づいてくる。
 後ろにいた不良たちもそれに続いて近づいてくる。
 それに気圧されてユウキは後ずさった。
 半歩後ろに下げた足が何かに当る。
 ―――――壁だ。
「それ以上近づいたら本当に撃つぞ!」
だがユウキの手は震えていた。
「本当に撃てるのかなぁ。こんな風にな!」
 そう言った瞬間、耳を劈くような鋭い音がした。
 ユウキのすぐ横の壁に銃弾がめり込んでいた。
 リーダー格であろう男がいつの間にか手に持っていた拳銃の引き金を引いたのだ。
 その事実を理解して、たちまち表情が青ざめていく。
 ユウキはその場にストン、と座り込んでしまった。
 その震えた足はもう一度立つことを拒絶している。
「さーて、大人しくして――――」
「そうですねぇ。大人しくして貰いましょうか」
 不良たちの声を遮ってその後ろから声が聞こえた。
 そこにはカレノが立っていた。
 少し息が乱れているところを見るとここまであわてて走ってきたのだろう。
「なんだてめぇ。てめぇみたいなやつには用はねえ」
 そう言うと不良たちは手に持ったさまざまな獲物―――拳銃やライフル銃―――をカレノに向けた。
「リボルバー銃一丁、セミオート二丁、ライフル銃五丁ですか。いいものを持っていますね」
 そう言ったカレノは涼しい表情をしている。
「何余裕ぶっこいてやがる」
 それを見ていてイライラしだしたリーダー格なのであろう男が言葉を発した。
「それはですね皆さん。実はこの列車にひとつ前の町で手に入れた爆弾を仕掛けさせてもらいました」
「・・・なっ、何言ってやがる。そんなこけおどし誰が信じると思ってんだ」
少し驚いた表情をした後にリーダー格っぽい男が元の表情を取り戻して言った。
「本当かどうか試してみましょうか?」
 そしてカレノがニコッと笑った瞬間、手に持っていた起爆スイッチを押した。
 すごい爆発音がして列車内が揺れた、と思ったら隣の貨物室と共にそれに隣接した壁が吹っ飛んでいた。
 唖然とする不良たち。
 まだ微笑んでいるカレノ。
 そしてその隙にユウキのそばに歩み寄る。
「怪我はありませんか?」
 起爆スイッチを床に捨ててユウキに尋ねる。
「あ、ああ。大丈夫だ」
 不良たちと共に唖然としていたユウキが答える。
「じゃあ今のうちに逃げちゃいましょう」
 そう言ってカレノが歩き出そうとしてもユウキは立ち上がらなかった。
「どうしたのですか?」
「あの、その・・・」
 その質問に対して頬を赤らめて俯いてしまった。
 そして次にユウキが発した言葉は、
「・・・・・・腰が抜けた」
「・・・・・・・・・は・・・・」
「だから腰が抜けたと言っているだろう!!」
 ユウキが頬を赤らめて怒鳴った。
「ふぅ、まったく世話が焼ける子ですねぇ」
 そう笑いながら言ってユウキを抱っこした。
 お姫様抱っこを。
「なっ、何でこういう持ち方なんだ!!」
 いっそう頬を赤らめて怒鳴った。
「なんでって、そんなの決まっているじゃないですか」
「じゃあ何でだ!!」
「ズバリあなたの反応が面白いからです」
「あのなぁ!!」
 そんなこんなのやり取りをしていたら元の世界に戻ってきた不良たちが一斉にかれのたちの方に振り向いて銃を構え、
「てんめぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
 彼らもまた怒鳴った。
 いや、彼らの場合『叫んだ』の方が正しいかもしれない。
 そして引き金を引こうとしたがカレノの一言によりそれはできなくなった。
「――――――切り裂け」
 その一言により彼らが手に持っていたものは全て指ギリギリのところで切断されてしまったのだ。
 まるで鋭利な刃物で切り裂いたように。
スパンと。
綺麗に。
「――――――なっ」
 また唖然となる不良たち。
 唖然としているのは不良たちだけではなかった。
 ユウキもまたそれを見て何が起こったのかと疑問の表情をしていた。
 その隙にカレノはユウキを抱っこしたまま列車の外へ。
「ではお先に」
 そう言って手に持っていたものを投げつけカレノたちは走り去って行った。
 投げつけた物、それは、
「あの野郎、何置いて行きやがっ――――」
 そこで言葉が切られる。
 それは、
 それは爆弾だった。
 何処のカレノが呟く。
 満面の笑みを浮かべて。
「――――――爆発」
 爆弾は爆発した。
 遠くで不良たちの絶叫が聞こえた。

次回

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