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サラリーマンながら高額所得納税番付で1位になった清原達郎氏の本です。わが投資術 市場は誰に微笑むか [ 清原 達郎 ]私もネットで買おうとしたら、新刊なのに1週間待ち。それだけ話題になっているのでしょう。清原氏も投資ファンドを閉鎖して引退するということで、それまで難しかった過去の個別銘柄の取引等、結構踏み込んだ話が掛かれています。トレードに対して非常に深く研究しており、確かにこれだと体力が要るだろうと思います。是川銀蔵氏は「最後の相場師」と言われていましたが、その後を継げるような相場師だと思います。
2024/03/30
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皇位継承問題で全くやる気がない自公政権。ようやく女性宮家と男系皇籍取得の2案に絞ったそうです。元々、それくらいしか案はないと思うのですが。それはそうと、そもそも万世一系は本当なのか?ということに正面から疑問を呈する本。持統天皇と男系継承の起源 古代王朝の謎を解く (ちくま新書 1570) [ 武澤 秀一 ]建築家の視点から大和時代から奈良時代にかけての皇位継承に関する研究。皇位継承は元々、双系(男系と女系の両方)。それが藤原氏が自分の血を天皇家に入れるために男系のみに限定する流れを作ったという推測。確かに古代の女性天皇の多さには違和感があったのですが、これだと話がすっきりします。天皇制は明治期にも大幅に改変されていますし、それ以外でも権勢を持っていた人物の都合で適宜改変されていますから、天皇家を中心とする皇族が納得いく形であればいかようでも良いのでは?というのが個人的な意見。女性宮家を認めるとK氏が殿下に・・・という意見もありますが(私もK氏が殿下になるのは勘弁して欲しいとは思います)、それを言うと旧宮家にもお尋ね者がいますし(その息子が男系を強く主張しても・・・)、A宮家への継承自体に反対する人も。女性宮家と男系皇籍取得のいずれでも、将来的には不適切な人物が天皇になるリスクは排除出来ないので、それは女性宮家や男系の皇籍取得とは別に考えていかざるを得ないのだろうと思います。
2021/07/01
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安倍首相が軽々しく「総理も議員も辞めますよ!」と言ってしまったために死者まで出してしまった森友問題。亡くなった赤木さんの奥様の本です。私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ? [ 赤木 雅子 ]赤木さんの残した手記から取材等を通じて財務省近畿財務局がやってきたことを明らかにしていきます。とは言え真実を語っているのは赤木さんだけである以上、経緯の全てが明らかにはならないので、裁判で情報公開を訴えていくところで話は終わります。読んでいくと本当に切ない気持ちになります。全ての責任は担当者に押し付けて、その他の人たちは口止め料?で出世。安倍夫妻はとぼけまくり、調査は行わず。アキレ夫人は張本人なのに能天気。この2人だけは、絶対に許してはいけないと思います。
2020/09/25
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思想的には共感出来ないものの、知事、市長時代の政策実行能力はかなりのものでした。交渉力 結果が変わる伝え方・考え方 (PHP新書) [ 橋下 徹 ]どのような考え方で交渉に臨み結果を出してきたか。フレームワークは非常にシンプルにまとめられていて、いくつかの件での実際の交渉での経緯もわかります。また、トランプ流の交渉についてもコメント。ハチャメチャなようで、交渉のポイントはきちんとついているという解説は興味深かったです。これでいきなり交渉がうまくなるとは思えませんが、参考にはなります。
2020/09/05
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環境問題は、非科学的なことがいかにも科学的に証明されたかのように拡散していくのを見ていると、歯がゆい気持ちになります。そんな昨今のエセ科学に対する反論の書です。「地球温暖化」狂騒曲 社会を壊す空騒ぎ [ 渡辺正(化学) ]最近では、地球温暖化に関する話があまりに酷い。あれはIPCCがデータを不適切な方法で修正したため「危機」になってしまったもの。データ処理の方法について問題が指摘されたものの、多額の補助金をもらっているので引っ込みがつかなくなったIPCCと、何が何でも商売にしたい面々がそのまま突っ走ってしまっているもの。地球温暖化に関するCO2問題は、好意的に評価しても考えられる仮説の一つに過ぎず、仮に正しいとしてもIPCCが指摘するよりは遥かに影響は小さいだろうこと。グレダさんは、環境対策に消極的な大人よりも、自分の身近にいる、本当に悪党にも目を向けて欲しいと常々感じています。その辺の科学的な反論と政治的な事情をまとめたものです。今、人類が使える範囲では、エネルギーを使う限り、どの方法でも環境に負荷をかけています。環境団体は良いと主張しているけれども特に筋が悪いのがバイオマス。おそらく、産出されるエネルギー以上に投入エネルギーが多く、エネルギーの無駄遣いに他なりません。電気自動車にしたって、自動車自体は廃棄物を出さないものの、発電のためにはエネルギーを使っていますし、電気自動車本体に希少金属(精製にエネルギーがかかる)を多量に使っているので、全く省エネにはなっていません。電気自動車の環境上の利点は、汚染物質の排出源を発電所と工場に集中的に集められるため、その対策が比較的やりやすいことくらいでしょうか。ただ、著者の主張の中で賛成しかねるのが、省エネをしても、浮いた費用で贅沢してしまうのでやっても無駄との点。私は、例えわずかでも省エネを積み重ねていく(少なくとも無駄遣いしない意識を持つこと)で、環境に対する負荷が減る方向になっていくので、これは積極的に推進すべきだろうと思います。ただし、CO2削減のために無駄に資源やエネルギーを使うのは本末転倒ですが。
2019/12/14
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廃城、廃線等、廃が付いていると気になってしまいます。と言うことで、読んでみました。戦国廃城紀行 敗者の城を探る 河出文庫 / 澤宮優 【文庫】12城を調べた情報も交えて実際に登城したレポートです。元は10年ほど前に行ったものなので、現状よりも更に廃城感がある城も多いようです。私が登城したのは、このうち2城のみ。前から行ってみたいと思っていた城もいくつかありました。最近は何でもかんでも天守閣を建ててしまおうとう気運がありますが、廃城には廃城の良さがあり、あまり再建しないで欲しいというのが個人的な意見です。もちろん、著者もその方向です。
2019/12/10
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韓国で話題になっている本。日本語訳が出たのですが入荷待ちとなっていて、少々遅れて入手。反日種族主義 日韓危機の根源 [ 李 栄薫 ]煽ってるだけの本かもしれないと思って手に取ってみましたが、事実を丹念に調べていこうという姿勢が貫かれているのは、韓国の歴史関係の本ではかなり珍しい。何人かの著者がテーマについて書いたものを集めた総説的なもの。韓国人の自己批判なので、韓国人(特に左派)はかなり不快に思い、日本の右翼は大喜びしそう。読んでいて感じたのは、著者達の左派による歴史改ざんを通じた赤化運動に対する危機感。こういう方々がいるうちは、韓国はまだ何とかなる可能性もあるでしょう。翻って日本。歴史解釈の問題を回避するため、学校では近現代史がほとんど触れられず。中韓の間違った歴史観や、政権の右に偏った歴史観、あるいは歴史小説が史実のような誤解を産んでいる状況。しかも足元では、政治的な記録が改ざん、抹消され、後で振り返れないことになりそうな状況。決して、韓国のことを嗤える状況ではないと思います。
2019/12/01
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かなり衝撃的なタイトルですが、非現実的とは言い切れないようです。すべてのマンションは廃墟になる (イースト新書) [ 榊淳司 ]マンションの問題は、構造物そのものもさることながら、一番は法的な問題。個人の財産権が非常に強いため問題が起きたときに物事を決めることが難しく、管理がまともに行えなくなるだろうとのこと。読んでいると、なるほどと思います。タワーマンションは、立地が良いので値下がりがしずらく当面は売却しやすいであろうことは良いですが、構造上の問題、管理の問題等々、問題山積。この本を読んだら、タワーマンションは怖くて買えません。
2019/10/11
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韓国の外交担当者だった著者が、前後の日韓関係につき記した本です。日韓外交史 対立と協力の50年 (平凡社新書) [ 趙世暎 ]韓国側の立場から、外交を客観的に書かれた本は、かなり貴重だと思います。韓国の立ち位置については必ずしも同意しかねるところはありますが、どのような状況で政権が判断を行ってきたかという点では、参考になります。最後は前大統領の朴槿恵氏の任期途中で終わっていますが、「史上最悪の日韓関係」との記載。今はその頃でさえ日韓関係は良好と言わざるを得ないくらいの惨状。日韓関係は常に問題がありながらも何とか崩壊せずに続いてきたのは、こういう外交官がいたおかげだろうと思います。残念ながら、今の韓国からはこういう外交官がいても左遷されて交渉の場からは外され、まともな外交が出来ていないところが問題。ここまで関係が悪化してしまうと、関係改善は相当難しくなってしまったかも知れません。
2019/10/10
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某サイトでは、この本を司馬遼太郎信者が罵倒していました。司馬さんに嫌われた乃木・伊地知両将軍の無念を晴らす [ 西村正 ]日露戦争の旅順攻防戦を中心に、司馬遼太郎氏の坂の上の雲を検証し、批判しています。歴史には「より正しい」歴史はあっても「完全に正しい」歴史はないとのある方の言もありましたが、司馬遼太郎氏の歴史小説があたかも正しい歴史かのように日本で流布されているのは、やはり問題だと思います。それだけ、司馬遼太郎氏の小説が素晴らしいと言うことの裏返しでもあるのですが。私は通説をきちんと検証してより正しい歴史を理解していこうという本が好きなのですが、こういう本が束になってかかっても、司馬遼太郎氏の影響力には叶わないのだろうと思います。
2019/09/21
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とあるビジネス書を読んでいたら推薦図書になっていたので、読んでみました。禅とオートバイ修理技術(上) (ハヤカワ文庫) [ ロバート・M.パーシグ ]禅とオートバイ修理技術(下) (ハヤカワ文庫) [ ロバート・M.パーシグ ]著者は、精神的な問題で電気ショック治療を受け、記憶に障害を受けた方。自分の実体験も踏まえながら、オートバイによるアメリカ横断を通じて、哲学的な思索、オートバイ技術のことを語り、そして最後は精神的な苦痛を乗り越える話です。詳しく書くとネタバレになってしまうのですが、年に1回当たるかどうかくらいの非常に面白い本です。ビジネスの話を脇に置いて何度も推薦してしまうビジネス書の著者の気持ちも良くわかります。
2019/06/09
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少子高齢化で定年後と相続をターゲットとした商売が増えています。定年前 50歳から始める「定活」 (朝日新書) [ 大江英樹 ]書いてある内容は、私から見ると概ねそうだろうと思うものでしたが、ということは、違和感を感じる人の方が多いのでは。こういう人たちに向けてビジネスをするのが、結構面白いだろうというのが読後感です。いずれにしても、一番の課題はコミュニケーション。女性は大丈夫ですが、男性は仕事でもしておかないと、難しいのだろうと思います。
2019/02/24
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自分が転職をしたときに、どんなことを考えてかを考えながら読みました。このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む転職の思考法 [ 北野 唯我 ]心構え、転職の進め方などがまとまっていて、転職するか否かに関わらず読んで参考にある本だと思います。転職当時を思い返してみると、全てとは言わないけれども、注意事項のところはかなりのところで無意識ながら考えながらやっていたという感じでした。日本は、転職すると裏切り者扱いされる雰囲気はあるので、やはり気を使います。私が一番気を使ったのは、転職活動をしていることを社内で絶対にオープンにしないこと。転職活動をしたことがオープンになったのに会社に残ったら、相当拙い雰囲気になるだろうと思います。
2019/02/08
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タイトルは経済学の本のようですが、経済学者の自伝です。経済学は悲しみを分かち合うために 私の原点 [ 神野直彦 ]私は経済学について基礎的なところを読もうと思って買ったのですが、いつまで経ってもそうならない(笑)ということで、想定外の本でしたが、これが想定外に面白かったです。経済学の知識はあった方がより面白いと思いますが、なくても全く問題ありません。著者の神野直彦先生は財政学専門だそうですが、世界的な経済学の主流とは離れています。大学評価に直結する論文の引用数であれば主流派に属する方が良いのでしょうが、こういうところを研究出来るところが日本の大学の良いところだと思います。日本だけでも、アメリカの雑誌が始めたいい加減な世界の大学ランキングに背を向けても良いのではと思います。
2019/01/22
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中国の状況は、予想以上に酷いようです。習近平のデジタル文化大革命 24時間を監視され全人生を支配される中国人の悲劇 (講談社+α新書) [ 川島 博之 ]世の中は、中国に忖度して真の中国について書かれていないか、反中派に忖度して、中国の悪い姿しか書かないか。本書は反中派側ながら、冷静な分析に基づいているように感じます。それにしても、中国のネット検閲は末期的。習近平や共産党に批判的な単語は検索さえ出来ないというのは知っていましたが、天安門、くまのプーさんあたりはともかく、「習近平」「毛沢東」「皇帝(習近平を揶揄)」「肉まん(習近平を揶揄)」「パンダ(警察官)」「8964(天安門事件)」も自動的に削除されてしまうそうです。しかも、英語の論文を読むことさえ制限されるのだとか。これでは、まともに情報を収集することは不可能に近いです。
2018/12/04
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少し前まではあり得ないことかと思っていましたが、現実的になりつつあるようです。米韓同盟消滅 (新潮新書) [ 鈴置 高史 ]韓国に提供した軍事情報は中朝に流れる可能性があるので制限されているという話は聞いたことがありますが、流出したのはスパイが入ったからではなく、20世紀末から。中国からは頼みもしないのに韓国が勝手に提供を始めたのだとか。アメリカ側でも、2010年頃から「米韓同盟は長くても20年は持たない」との認識が出だしていたとのこと。文大統領になって完全に反米親北になり、トランプも米韓同盟を負担と考えている以上、風前の灯火と言っても良いかも知れません。文大統領は北朝鮮の核を温存しようとするのも、この文脈に沿っています。私もスポットでは理解していたものの、どうしてこうなったかの流れはこの本を読んで納得。日本もこの流れを見た上で適切な対処をしないと、大変なことになるかも知れません。
2018/11/18
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近代日本の裏面史かと思います。山口組と日本 結成103年の通史から近代を読む (祥伝社新書) [ 宮崎 学 ]ヤクザは、時として権力と対峙しながら時として権力に協力し、ある意味必要悪として存在してきた部分もあるようです。ヤクザがそれなりの経済力を持つようになってきたのも、その時々で表の世界ではカバーしきれない役割を果たしてきたのも事実。ヤクザが様々な問題を起こしてきたことも確かですが、今のようにヤクザを排除するだけでヤクザが担ってきた役割を補完しなければ、世の中は円滑に進まなくなるかも知れません。
2018/10/09
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憲法に自衛隊を盛り込む話も出ていますが、それ以前にやらなければならないことはたくさんあるようです。◆◆自衛隊の弱点 9条を変えても、この国は守れない / 飯柴智亮/著 小峯隆生/構成 / 集英社インターナショナル日本人ながら米軍の将校になった著者との対談形式を取っています。立場上から発言に制約があり、奥歯に物が挟まったような発言も多くあるものの、内容自体は非常に説得力があります。残念ながら、自衛隊のあるべき姿がきちんと議論されてきておらず、実際には全く役に立たない代物になっているようです。米軍と連携するのであれば、個別の部隊としては機能するのでしょうが、上に行くほど全くだめ。首相もダメ、ましてや防衛大臣の人選も明らかに軽視されているような状態では、良くなりようがありません。一番印象に残ったのは、自衛隊幹部の情けなさ。雨の日の式典で、整列して待機している部下たちが雨に濡れているのに、幹部はテントの中で雨宿り。もちろん、まともな幹部もいない訳ではないそうですが、2割くらいとか。こんな状況では、厳しい戦場で部下が命がけで戦うことは期待出来ません。ましてや、防衛大臣が自分と首相のメンツを守るのために、都合の悪い情報は上げさせないようでは、お話になりません。
2018/09/16
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歴史学がヨーロッパで始まった故、ヨーロッパ史観が世界史に大きな影響を与えています。それに対して、アジア、特にシルクロードに当たる地域の視点で書かれた世界史の本です。世界史序説 アジア史から一望する (ちくま新書) [ 岡本 隆司 ]今となっては、どちらかと言えば文化的に遅れていると見做されている地域ではありますが、歴史的にはここを中心として見て、周縁的なヨーロッパや中国がその影響を受けてきたと言う方が、世界史を説明しやすいということのようです。。マッキンダーの地政学では、ハートランドという概念が提示されており、そちらも併せて読むと、非常にしっくり来ます。マッキンダーの地政学 デモクラシーの理想と現実 [ ハルフォード・ジョン・マッキンダー ]
2018/09/07
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子宮頸がんワクチン問題に関する本です。10万個の子宮 あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか [ 村中 璃子 ]当初、ワクチンの薬害の可能性のある事例が出て調査をしたものの、科学的にはシロ。とは言え、それを歪曲するような研究者(医者)、圧力をかける団体、それを伝えるマスコミの問題等々で有効なワクチンの接種が進まない。不適切な対応にWHOからは名指しで日本が批判されているのに、全く改善出来ず。生化学や経済学のように複雑なものを取り扱う学問は完全にシロクロの結論をつけるのが難しいので、そういうところにつけこみ自分に有利な風説を振りまく「エセ」学者は根絶するのは難しいのかも知れません。
2018/09/03
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イメージとしては、沿岸には海賊が跋扈し、陸は混沌としているソマリア。我々がソマリアと認識している中にある、「自称」独立国のソマリランドへの潜入記です。謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア [ 高野秀行 ]著者の例えでは、ソマリアは「北斗の拳」の世界。私もイメージもそんな感じでした。自称独立国なのでちゃんと政府や議会、警察はもちろん、ビザまであるそうです。しかも、国境近くの紛争地域等を除き、基本的には外国人が一人で歩けるくらい治安は良好。国家制度はある程度民主的で、ある意味では日本より民主的ではないかと思うくらい。更には海賊の多いブントランドや首都のモガディシオのような治安上問題のあるところまで潜入。ソマリアを理解する上では恰好の本ですし、読み物としても面白かったです。外国から見てソマリアを理解することが難しいのは、氏族社会であるにも関わらず、外国に発信される情報はその氏族社会に対する情報が抜け落ちていること。国連や外国の援助がうまくいかないのは、そこの理解が抜けているからだとのこと。これは人種差別問題になりかねないデリケートなことだけに、ソマリア(ソマリランドも含めて)から発信される情報でさえその情報を意図的に除いているので、外国人が理解するには非常に難しいのでしょう。
2018/07/28
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最近、人生100年時代の話題が多いです。自分の体験だけで「何とでもなる」との楽観派、気合い派、退職金狙いのファイナンシャルプランナー等々、いろいろいますが、こちらは実例に基づく現実派でしょうか。定年前後の「やってはいけない」 (青春新書インテリジェンス) [ 郡山史郎 ]著者は元ソニーの役員。そんな方なら苦労していないだろう・・・と思ったら、そうでもないようです。退職後に人材派遣会社を経営しているだけあって、事例は多岐に渡り豊富。社長になれば講演で稼げるけれども、役員や管理職で実務から離れてしまっている人が結構難しいのだとか。それは納得。その他にも、定年前後での資格取得に対する否定的なコメント等、内容的にはオーソドックス。定年後はバラ色とは限らないけれども、絶望するほどでもない。個人的には、投資の話はもう少し突っ込んで書いても良いのではと思うものの、教科書的に参考になりそうな本です。
2018/07/19
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潜伏キリシタン関連遺産が世界遺産に決まったそうです。潜伏キリシタン世界遺産に=長崎など、国内22件目―ユネスコが登録決定このタイトルに「かくれキリシタン」ではなく潜伏キリシタンとしているところに、背景のいろいろなものを感じられます。この辺が良くわかるのが、こちら。消された信仰 「最後のかくれキリシタン」--長崎・生月島の人々 [ 広野 真嗣 ]この登録では、潜伏キリシタン信仰は消滅したことになっているようですが、実際は今でもかくれキリシタン信仰は残っているそうです。かくれキリシタンからカトリックへの改宗(復帰)が一部にとどまったことで、改宗しなかった「かくれキリシタン」にどう向き合うかが課題になっています。今回は消滅した村のみにスポットを当てることで、この問題を回避(逃避)しているとのこと。わかってはいても、こういうところまで政治的なことに翻弄されてしまうことは、非常に残念です。
2018/07/01
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アフガニスタンでの米軍基地へのタリバンの攻撃に関する実話です。レッド・プラトーン 14時間の死闘 [ クリントン・ロメシャ ]軍事的には非常に不適切な谷底にある小規模な基地。しかも、空軍基地からは離れており、支援体制も不十分。軍事的には米軍にとって重要でないものの、タリバンにとっては基地を壊滅させて米軍に辱めを与えれられそうな恰好な目標。そこで死闘が繰り広げられ、戦死者を出しながらも無事、生き延びることが出来た著者の記録です。タリバンの命を恐れない執拗な攻撃。米軍側の奮闘もさることながら、航空戦力の支援が開始されてからでさえ、なかなか撤退せずに奮闘するタリバンの粘りにアフガニスタンでの統治の難しさを感じます。紛争地域に軍隊を派遣するということは、こういうことが起こるということ。南スーダンの「衝突はあったが戦闘地域ではない」と屁理屈を並べるような程度の方々は、これを知って何と思うのでしょうか。在任中、あれだけ酷い状況でも全く反省せず、議員辞職どころか「また防衛大臣をやらせていただきたい」と宣うような元大臣や、答弁で「永田町よりははるかに危険」とジョークにしてしまう首相のような偉い方々にとっては、自衛隊員は単なる駒の一つに過ぎないのでしょうが。
2018/06/10
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感想欄では賛否両論ありますが、私はこういう本が好きです。巨人ファンはどこへ行ったのか? [ 菊地高弘 ]元・巨人ファンや関係者へのインタビュー等を交えながら、巨人ファンはどうなってしまったのかを論説(というほど固くはありませんが)しています。観客が増えたのは長嶋監督1年目で最下位に転落したときだとか、意外と手厚い巨人のファンサービス等、面白い話もありました。検証が甘い等というような堅いことは言わず、気軽に読めば面白い本です。
2018/06/07
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中国における政策実行の難しさがわかります。中国「絶望」家族 「一人っ子政策」は中国をどう変えたか [ メイ・フォン ]一人っ子政策のために女子は売られたり処分されたりいて、男女比が異常なことになっていることは知っていましたが、現場は更に酷いことに。一人を産んだら強制的に避妊手術をさせられたり、規定の年齢前に産んだ子供は当局に取り上げられる。2人目を産もうとすると強制胎堕や多額の罰金。中国も急激な少子高齢化で本来であれば子供をたくさん産むようにしたいものの、一人っ子政策実行のための要員がたくさんいるので、完全に廃止すると大量に失業者が出てしまう。しかも、その収入は当局にとっても重要な財源なので、違反者があまり減らないくらいの緩和しか出来ない状況。しかも、年金を始めとする社会保障制度が不十分なので、老後に頼れるのは子供と孫。そんな中で子供が死んでしまった日には、精神的なものはもちろんですが、金銭的にも破滅的なダメージ。中国の侵略的な対応が世界的に問題になっていますが、このような状況では、早晩軍事的な行動を起こすことは難しくなるかも知れません。
2018/02/28
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一時期はやや感情的なトーンが多かった大前研一氏ですが、この本はトーンが落ち着いたものの、内容は今までよりも鋭いところに突っ込んでいる印象です。日本の論点(2018〜19) [ 大前研一 ]特に興味深かったのが、北方四島の返還交渉と原発の話。大前氏によると、ロシアから提案されているのは、北方四島については「沖縄並み」である民政のみ日本に返還し、軍政は引き続きロシアが持つということだろうとのこと。沖縄の軍政が日本には返還されていないと言う話であれば、沖縄に対する政府の冷淡な態度、「最低でも県外」とした鳩山元首相の発言は、アメリカの虎の尾を踏んでしまったことも納得行きます。また、今までは原発賛成派だと思っていた大前氏も、日本政府の緊急対策等に対する無責任さ等を見て、日本での再稼働は無理ではとの論調に変わっていました。各国首脳とも接触も多い大前氏がこれだけ明確に発言すると、影響力は少なくないと思います。
2018/02/25
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最近、3語で伝わる英会話だの、英語の語彙は200語で十分、みたいな雑な議論が多いと嘆きつつ、品格のある英語について実例を示した本です。英語の品格 [ ロッシェル・カップ ]英語は粗雑な言語ではなく、むしろ日本語より複雑なくらいだというところは私も実感として良くわかります。いろいろな表現が記載されており、実用的な本です。ただし、アメリカ人の文化的なバックグラウンドを英語の基本であるかのような記述が多いのは気になります。「アメリカ人の英語は良くわからない」とネイティブ以外から不評であるらしいことも、このアメリカ的なものを押し付けていることにアメリカ人が気が付いていないことから来るのかも知れないというところもうかがい知れます。
2018/02/09
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これは本当に面白いです。黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い [ 畠山 理仁 ]選挙のいわゆる泡沫候補について20年に渡る取材を基に書かれています。著者は実態を適切に表現するため、無頼系独立候補としています。2016年の都知事選は21人もの候補者が出馬しているものの、マスコミに報じられるのは有力候補3名が大部分で、残り18人は申し訳程度。民放だと、都知事選放送時間の97%は3候補で、残り18人に割かれるのはたったの3%。選挙公報を流すNHKでさえ、3候補に半分以上の時間が割かれていたそうです。一般には、泡沫候補は単に目立ちたいだけくらいの感覚が強いですが、実際に取材してみると彼らの真摯さとともに、現在の選挙制度の問題点が浮かび上がってきます。有名どころではマック赤坂氏。彼も最初は普通に公約を訴えていたらしいですが、注目されないことには選ばれないということで、あのようなパフォーマンスを行うようになったのだとか。政治家は「選挙には金がかかる」からとお金集めを正当化していますが、有力政党のバックアップが得られるような候補者以外の当選を封じるため、敢えてお金がかかる選挙制度にしている側面が非常に強いそうです。ある程度の票が取れないと没収される供託金にしても、ない国がほとんどで、あっても数万円程度。それに対して日本は数十万円から数百万円。また、ポスターを印刷して全ての掲示板に貼るだけでも、業者に頼むと百万円単位になってしまい、知事や国会議員に当選しようと思えば一千万円のオーダー。選挙期間が長ければ、地道に自分で貼って歩いたり演説して知名度を上げることも出来ますが、日本では選挙期間も短い。先のとおりマスコミの報道も無頼系独立候補は無視に近い状況ですから、無頼系独立候補はマスコミを通じて選挙民に訴えることも難しい。そうなると、有名人か、二世議員のようにバックアップ体制が出来ている候補が圧倒的に有利。自民党が議員年金復活とかいう寝言を言っていますが、選挙制度を見直してお金をかからなくすれば、それだけで彼らの引退後の生活費分くらいは浮きます。しかも、立候補する人も増えるでしょう。現に、選挙に当選する見込みがほとんどないのに、政策を訴えたいがために多くのお金と時間を費やしてまで選挙に臨む方々がいるのです。飯のタネに政治家をやっている連中よりも、無頼系独立候補の方々に政治家になってもらう方が良いかも知れません。
2017/12/16
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アメリカ同様、イギリスでも格差問題は絶望的なまでに酷くなっているようです。チャヴ 弱者を敵視する社会 [ オーウェン・ジョーンズ ]タイトルのCHAVS(チャヴ)の語源は、ロマ語の子どもで、白人の貧困層を指す言葉。イギリスでは、人種、LGBTに対する差別発言をすると、エリートであれば政治生命、会社生命に関わることもあるくらい厳しいのですが、同じ白人の貧困層についてはあからさまな差別が横行しているそうです。そもそもそのような差別が許されるのは、サッチャー政権のときに公営住宅の買取制度により富裕層と貧困層の住む場所が隔離され、それにより両者間の交流が減って格差が身分制に近い状況になっているのだとか。しかも、製造業の衰退により、授業料の高いパブリックスクール出身でないと高収入の仕事が得ることが難しくなっています。マスコミが富裕層出身でほとんど占められるようになったことで、貧困層の側からみた報道がほとんどなくなってしまったことも差別に拍車をかけているとのこと。読んでいると本当に嫌な気分になりますが、日本も他人事ではありません。
2017/11/26
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これを読んでいると、気持ちが重くなります。ブラック奨学金 (文春新書) [ 今野 晴貴 ]昨今の大学授業料値上げは驚くばかり。国立大学でさえ、初年度の入学金と授業料は100万円近く。しかも、世の中の給料は上がらないのですから、負担感が大きいのは当たり前。今では大学生の4割が奨学金を借りているそうですが、その奨学金も酷いことになっているそうです。かつては教職や研究職になると育英会の奨学金返済が免除されていましたが、その制度は廃止。国立大学の成績優秀者に対する授業料免除制度も、成績優秀でも予算が足りないと対象外に。しかも、奨学金は保証人と連帯保証人を要求されて債権は民間に任されているので、取り立ては相当厳しいのだとか。学生が卒業した段階で100万円単位の借金を背負ったら、それは大変。非正規だったり、ブラック企業に勤めたのに退職したら、あっと言う間に返済不能。若者の車離れも当然の結果かと。しかもリスケはほとんど出来ず、保証人に一括返済を迫り、保証人が亡くなったらその債権が連帯保証人、更には相続人のところにまで。最近は若手研究者も期限付きが多いらしいですが、こんなことでは日本の教育が破綻するのではないでしょうか。学生が集まらなさそうな獣医学部を作るのに100億円もの補助金を注ぎ込むお金があるなら、もっとやることがあるのではと思います。
2017/10/24
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これは非常に面白いです。異文化理解力 相手と自分の真意がわかるビジネスパーソン必須の教養 [ エリン・メイヤー ]異文化の違いを調査に基づき定量的に評価し、実例を挙げながらわかりやすく解説しています。面白かったのは、英蘭翻訳ガイド。ネットからの引用だそうですが、非常にわかりやすいです。イギリス人は皮肉を遠回しに言う文化、オランダ人は正反対なので、同じ言葉でも全く違う解釈をしてしまうとか。例えば、イギリス人が「それは独創的な観点だね」と言えば、意味するところは「君の意見は愚かだ。」ですが、オランダ人は「気に入ってくれた!」と解釈してしまう。イギリス人は「とても興味深いですね」と言えば、意味するところは「好きではありません」、オランダ人の解釈は「いい印象を与えたぞ。」これは、文化的な背景を知らないと、完全に誤解します。著者は異文化コミュニケーションの専門家なので、どの文化の人が読んでも理解出来るように配慮されており、深い内容なのに読みやすいという稀有な本になっています。
2017/09/15
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排ガス規制違反のニュースを見たことがありますが、内情は相当酷いようです。フォルクスワーゲンの闇 世界制覇の野望が招いた自動車帝国の陥穽 [ ジャック・ユーイング ]ディーゼルでアメリカのNOx規制を守れる技術開発に苦労し、コスト削減のためにコンピュータシステムの不正でテスト時だけNOxを下げるシステムを導入。その後は、嘘の上塗りを重ね、会社の存亡に関わるような状態に。最近、ヨーロッパで電気自動車の議論が急激に高まっていますが、NOx規制の影響も相当あるのではと思われます。
2017/08/25
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著者は日本経済専門のジャーナリストだそうです。ジャパナイゼーション 日本の「失われた数十年」から、世界は何を学べるのか [ ウィリアム・ペセック ]政治、経済、文化と日本についていろいろなテーマで書かれています。私の読後感は、「新聞は自分が知らない分野については、非常に良く書けているように見える」という言葉がぴったりする内容。確かにいろいろな文献等を読んでいるのは良くわかるのですが、あまり自分の頭で考えずに、「権威のある学識経験者の言葉だから正しい」というような決めつけ的なところが多いという印象を受けました。とは言え、アメリカのジャーナリストから見た日本、別の言い方をするとアメリカの新聞に掲載されている日本と言うのはこういうものなのかと言うことを知る上では、参考になります。
2017/08/19
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私は歴史関連の本を読むのが好きなのですが、知れば知るほどいかに教科書的なレベルでの歴史は歪められたものかということを実感せざるを得ません。こちらは、ハプスブルク・スペインのイメージがいかにして作られたかということを検証した著書です。ハプスブルク・スペイン 黒い伝説 帝国はなぜ憎まれるか (単行本) [ ジョセフ・ペレス ]独立戦争時のオランダから、ヨーロッパを中心とした諸外国、ローマ法王まで、正にプロパガンダ合戦。一旦イメージが出来上がってしまうと、トンデモ話さえ後世にオペラとなって真実と勘違いされて広められたりと、誤解が誤解を産むことにさえなってしまったようです。植民地政策で一番残酷だったのは、征服時に住民を虐殺したスペインとのイメージがありますが、スペインは労働力が必要なため虐殺はあまりなく(あの当時の植民地支配というレベルでは)、むしろ欧米人が持ち込んだ病気に抵抗力のない現地人が相当のダメージを受けたことが大きいのだとか。むしろ、現地人(俗にインディアンと呼ばれる人達)を虐殺したアメリカの方が酷かったというのが著者の結論。旧スペインの植民地では、スペインが侵略する前の現地人と混血が今でもそれなりの割合を占めているものの、アメリカではインディアンは保護区に隔離され、絶滅危惧種とも言うべき少なさになっていることから見ても、アメリカがやって来たことの壮絶さがわかるだろうとのこと。いろいろ異説もあるでしょうが、アングロサクソンは「法に基づいて」残虐な行為をすることには長けているというのは感じていましたので、私は非常に納得しました。
2017/08/05
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かつて村上ファンドを率いて世の中の注目を集めた村上世彰氏の著書です。生涯投資家 [ 村上 世彰 ]私は村上氏に対して肯定的ではないにしても、少なくとも否定的な印象はありませんでしたが、欧米にいそうな収益第一主義かと思っていました。この本を読むと、意外と熱い考え方がわかり、興味を惹かれました。もっとも、一番参考になるのは、投資判断に関する部分。会社のガバナンスに問題がある会社に投資して体制を改善し、うまく行けば会社が良くなり、株価が騰がって投資も成功という部分は、非常に納得。ホリエモンとはニッポン放送買収劇で微妙な関係になったのかと思っていましたが、最近は一緒にビジネスに投資する等、意外と良い関係みたいです。
2017/07/29
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著者は鎌倉時代の名刀再現に成功した刀匠です。名刀に挑む 日本刀を知れば日本の美がわかる (PHP新書) [ 松田次泰 ]かつて正宗を見たときに、あまりの美しさに心を奪われたのですが、この本を読むと納得。日本史上で最も完成度が高いと言われている鎌倉時代の日本刀を再現する過程を書いているのですが、日本刀の鑑賞法等についても書かれていて、引き込まれるように読みました。「刀の組織が不均一であることが美しさと強度の両方を兼ね備える重要なポイント」だそうです。これは言われて見ると納得。城の石垣も、あまりきれいに揃っていない方が強度が高いという話を思い出しました。
2017/07/15
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オリンパス事件で逮捕された野村證券の方の本です。野村證券第2事業法人部 [ 横尾 宣政 ]証券会社ながら体育会系で気合いのみという感じではなく、様々な投資商品に精通しており、様々な取引について詳細に書かれていたのが面白かったです。とは言え、本筋はそちらではなく、オリンパス事件や損失補てん等の実態。関係者はほぼ実名で、かなりリアル感が。国税や検察が自分達の都合で冤罪を作り上げていく状況も、詳細に書かれています。損失補てんでは、問題が見つからなかったのに捜査に多大な人員を投入したから追徴課税を払えと圧力をかけ、それを無視したらマスコミを使って会社を叩かせる。オリンパス事件では、立件しようとした内容が無理筋だと判断したら、いきなり別の容疑で起訴して(それでもストーリーに無理があるけれども)有罪に持っていく。これでは、暴力団と違うのは、名刺の代わりにマスコミを使い、武力の代わりに刑務所を使うことくらい。それでも、村木氏の冤罪のおかげで、かなりマシになったのだとか。任意のときからの事情聴取の可視化が重要と訴えていますが、正にそのとおりだと思います。
2017/07/11
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最近の「使える英語」の風潮に批判的な本です。英語の害毒 [ 永井忠孝 ]私も仕事で英語を使うので、英語を使えることの便利さは十分承知しておりますが、あまりに通じる英語にばかり目が行き過ぎているというのを常日頃感じていました。書かれていることはちょっと言い過ぎではないのかと思うところは多々あるものの、害毒というくらい刺激的な表現を使うくらいでバランスは取れるかも知れません。筆者も外国語習得のメリット自体は否定していないものの、方向性を見誤ることの危険性を指摘しています。英語を学ぶということは、その分、他の能力開発にかける時間を減らすことなりますし、日本人がどんなに英語を使えるようになっても、母国語話者には叶わない。それであれば、2流の英語話者を目指して貴重なエネルギーを使い過ぎるより、割り切って必要なレベルを見極めて、他に重要なことにもエネルギーを投入するということが重要だと思います。
2017/07/04
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昨今の国際情勢によって、日本でも戦略論が売れるようになっていると感じます。タイトルは過激ですが、内容は真面目な本です。戦争にチャンスを与えよ 文春新書 / エドワード・ルトワック 【新書】ルトワック氏は、戦略論ではかなり有名な方。現状の戦争がなかなか収まらないのは、外国が介入することにあるという主張で一貫しています。人道支援でさえ、戦争の継続に力を貸してしまっている現状。燃料が残っているところに燃料を追加してしまうと、それが平和目的であっても別のところで火がついて燃えてしまうという例えがぴったりすると感じます。逆説的で気が重くなりますが、ガス抜きに適当な方法がない場合は、認めざるを得ないのでしょうか。
2017/05/23
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ここまで来ると、他人事ではありません。正社員消滅 (新書610) [ 竹信三恵子 ]飲食等の会社では、非正規の割合が9割に達するところも。本部は正社員が多いでしょうから、店舗はほぼ非正規ということでしょうか。非正規は簡単に辞められるのが一番のメリットだと思っていましたが、最近はそれさえ大変なのだとか。そんな社会になって、一人当たりの労働生産性が上がるとは思えません。非正規が増えて来ると、正社員と非正規の争い以外にも非正規同士の争いも起こり、不満が会社にぶつかっていかなくなるようです。旗振り役の中に、あるときは名ばかり経済学者として政府の委員会で正社員廃止を訴え、またあるときは人材派遣会社の経営者として補助金をたんまりもらうヤワラちゃんの影がちらついている辺り、やはりという印象。この本は少し偏っているかと思うところもありますが、労働者側にとって防衛手段の参考になるという点ではお勧めです。会社も攻めるポイントを考えれば、結構弱点があるということは、知って置いた方が良いと思います。市場と権力 [ 佐々木実 ]
2017/05/19
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最近、欧米各国の選挙にロシアが関わっているとのニュースが頻繁に出て来ます。冷戦が終了して少しは落ち着いたのかと思っていましたが、そうでもないようです。とは言え、かつてに比べると情報が出て来るようになったことは確か。これは、元KGB諜報員による本です。MI6対KGB 英露インテリジェンス抗争秘史 [ レム・クラシリニコフ ]私も西側の情報機関関係者の本は何冊か読んだことはありますが、旧ソ連側というのは初めて。彼らから見たイギリス情報機関であるSIS(世の中ではMI6と呼ばれることの方が多いですが)とKGBの死闘について詳細に書かれているので、非常に興味深いです。情報機関の書いた本というのは、どの程度が本当でどの程度が情報操作なのかを判断するのが非常に難しいのですが、かなり真実に近いところを書こうとしている印象は受けます。それにしても、まるで内部告発かのようにMI6の内情を書いているというのは、さすがKGBです。イギリスから出版されているものを読むと、旧ソ連やロシアに対して印象が悪くなるように書かれていますが、これを読むとイギリスの情報機関はKGBよりも更に悪いのではないかというくらい。旧ソ連側から書かれている点を差し引いても、少なくともKGBと同等くらいには酷いことをしているのでしょう。やはりイギリス紳士というのは、腹黒紳士だというのが実感です。日本がロシアとの国交正常化を行おうとするとどこからともなく横槍が入るそうですし、トランプ大統領がロシアとの関係改善に進もうとしているときに足を引っ張られている感がありますが、おそらく英米辺りの情報機関は何らかの関与をしているのだろうと思います。
2017/05/14
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今更というような前の本ですが。まほろ駅前番外地 [ 三浦しをん ]舞台となっているのは、まほろ駅こと町田駅周辺。映画を見た訳ではないのですが、かつて町田に住んでいたものとして、読んでみたら面白いかと。ちなみに、著者の三浦しをんさんは、古本屋業界では有名な町田の高原書店でもアルバイトをしていたそうです。古本屋というのはお店に入ると時空が歪んでいるかのような変な感覚になるのですが、高原書店は4階建てのビルですから、その歪み方が凄いです。これは、同じ大きさでもブックオフでは味わえない感覚。読後感ですが、これは面白かったです。ただ、私の場合は町田の風景を思い浮かべながら同じ空間を感じて読んでいた部分もあり、そこを実感出来ない人が読んで面白いのかは良くわかりません。こうやって読んでみると、町田というのはなかなか個性的な街だと実感しました。【新品】【ブルーレイ】まほろ駅前番外地 Blu−ray BOX 瑛太
2017/04/30
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少し古い本の文庫版ですが、アメリカを理解するのに良い本です。イスラームとアメリカ新版 [ 山内昌之 ]著者の山内氏は、バランスの取れた歴史観を持っておられる方で、この本も多文化的な観点からアメリカの光と影を見ている面白い本です。2000年前後に書かれた論評なので少々古いながらも、現在でも十分通用する内容。こういう本が文庫の形で再度発行されるのは、とても歓迎すべきことだと思います。
2017/04/25
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元海兵隊のアメリカ人の本です。アメリカ人が語るアメリカが隠しておきたい日本の歴史 [ マックス・フォン・シュラー ]韓国にも駐留していた関係で、韓国に関する記述が本の半分。韓国に対しては非常に手厳しい。中身は日本に良く書き過ぎているところもあるかと思いますが、いわゆる日本礼賛本と違って実体験に基づく部分も多く、特にアメリカに関する記述(批判)は読んでおいても良いかと思います。
2017/04/06
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問題は温暖化ではないようです。日本の漁業が崩壊する本当の理由 [ 片野歩 ]最近、諸外国に対して買い負けしている等、魚については良い話を聞きません。乱獲は世界的な話と思っていましたが、この本によると、少なくとも欧米では資源のコントロールが進んで状況は改善しているようです。一方、日本近海の状況は酷いの一言に過ぎます。今の状況は、全ての人を不幸に陥れているのかも知れません。
2017/04/01
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京都ぎらいの中で、著者が嫌味を言われたとして出て来る杉本秀太郎氏。とは言え、その文章はため息が出るほど美しいとのことでしたので、読んでみました。洛中生息絶版なので手に入れるのが難しいのですが、Amazonの中古本を頻繁にチェックしていたらたまたま見つかったので、買いました。当時は結構売れたようなので、マメにチェックしていれば出て来るだろうと思います。短編集なのですが、文章が幻想的に美しい。しかも、失われた京都が浮かび上がってくるので、書かれた時期(1970年代)と現代の差があるおかげで、更に深みを増しています。こういう本は是非、復刻版を出して欲しいです。京都ぎらい [ 井上章一 ]
2017/03/11
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これからは「想定以上に」長生きすることを前提に考えないといけないようです。LIFE SHIFT(ライフ・シフト) [ リンダ・グラットン ]今の人口統計に使われている方法では寿命の延びを考慮しておらず、一般に言われているよりも10年ごとに2、3歳寿命が長くなると見込まれ、産まれたばかりの子供なら半数以上が100歳以上生きることを前提にすべきとのこと。そのためには、有形資産(要するにお金)だけでなく、無形資産(収入を得るための生産性資産、健康等)も今までと違う長期戦略が必要。長生きすることで働く期間を長くせざるを得なくなるでしょうが、そうなると若い時に学校で勉強した能力だけで最後まで突っ走るのは、かなり無理があります。積極的に副業を認める会社が出てきていますが、時代に即しているということでしょう。最近、若者の自分探し、地元を離れないマイルドヤンキー等に対して否定的な意味で取り上げられることが多いですが、むしろ100年時代に適した戦略であるようです。「今どきの若い者は」という言葉がありますが、いつの時代も若者は社会の変化に柔軟に対処し、自分達のビジネスモデルに固執する上の世代がそれを理解出来ずに批判的な意見を投げかけているということでしょうか。上の世代は(私もそちら側に含まれてしまいますが)、もっと若者達を見習うべきなのかも知れません。
2017/01/27
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巷ではアメリカ社会の崩壊が話題になっていますが、本当に危ないのはヨーロッパかも知れません。ユーロから始まる世界経済の大崩壊 格差と混乱を生み出す通貨システムの破綻とその衝撃著者は安倍政権に昨年アドバイスをしたとニュースになった経済学者の一人、スティグリッツ教授。この人が雑誌に投稿した文章は読んだことがあるのですが、まとまった本を読むのは初めて。そんなに文章が堅くないのに何となく読みにくい感があるのは、自明とは言えない(少なくとも私は同意できない)ことを自明であるかのように議論を進めているためかと思いますが、全体としては非常に鋭い視点であることは確かです。ユーロは通貨統合により為替レートによる調整が効かず、しかも金融政策も財政政策も各国政府が取れる手段が著しく限定されてしまっているため、事態を打開する手段がほぼない状況というのが問題。打開策についても提言されていますが、実行に移すのは「政治的に」難しそうです。
2017/01/15
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三種の神器はわかっても、その由来は全く不明。神話が作り話と認識している人がほとんどなのに、神話に基づいた三種の神器が存在している理由は何か。という、研究されていそうで意外と研究事例が少ない三種の神器の由来につき検証しようとした本です。三種の神器 [ 戸矢学 ]同時代の文献がないような古いことを検証していくというのは、かなり大胆な推測をせざるを得ないのですが、そんな制約の中でこれだけの推論を作り上げたところは非常に興味深いです。全体として納得感のある説で、非常に興味深く読めました。
2016/12/22
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