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最上階らしい場所にたどり着いた、この時既に倒した刺客は20人を越えた。疲れ果ててきたカイ達にはもう戦う力は残っていなかった。「最上階だろう、もうかわすのが精一杯だな」「まだまだ最高幹部が残っているのよ、がんはろ!」「いるとすればBOSSだな?」住民のリーダー的な男が声をかけた。「あんた、名前なんていうんだ?」「わたしはリュウっていいます。格闘というものをかじったことがあるんで、ちょっと出しゃばったことしましたが」おそらく住民に名前を聞くなんて初めてだった。カイは、誇り高い住民が居たことに安心した。「俺より頼もしいや、この先どうしていこうか考えてみようか」すると、「何ラクしようとしてるのよ、隊長さん」マリアはちょっとふて腐れ気味のカイの肩を思い切り叩いた。「確かに、このままだとBOSS戦ってことになるでしょう、ま、まだ戦いになるかどうかはわかりませんが、それなりに武器を所持しているでしょうね、問題はそこですね」リュウはこちらに武器といえる物がないことを指摘した。「銃とか買ってる暇ないしね、この際、相手から奪っちゃうとか」カイの発言にマリアは「何どうしようもない事言ってるのよ、冗談は許せないわよ!」すかさずリュウが「いや、まんざらじゃ、それしかないんじゃないですか?」人気blogランキングへ
2006.05.24
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どのくらい時間が経っただろうか、ショウは脳に伝わってきた情報の中で、ある異変を感じた。スベェンが持っていたチップは、ショウの特製チップより直通なためか、僅かだが情報がショウの脳に紛れ込んでいた。「こりゃ、どうやら情報が変異するかもしれないな、スベェンにも予想がつくまい」スベェンにもさすがに時間が長いのに気が着いたが、ショウが受けているから情報が深いのだと思い、疑いもしなかった。しばらくして、記憶処理が終了し、チップの組み替えが終わると、ショウは眠りに着いた。普通の容量を遥かに超えていたために、休める必要があった。スベェンの考えはただ一つ、頭のいい、知識を持った者が幹部の先頭に立ってもらうことだが、尚且つ、ショウには元派遣スパイであったことで憎みも抱いていた。「あの3人は絶対に許せないが、ショウには仕事をしていただくので、それは解決しますね、あとの2人は・・・」冷めた表情で眠るショウを見つめるスベェン。しかし、その陰謀は予想もしない展開になっていく。カイ達に襲い掛かる薬漬け刺客との抗戦、一人の刺客の証言で刺客のほとんどが住民であることで、とどめはさせないことがネックだ。「知らないほうがよかったかな」カイが投げやりに言った。「そういうことは考えちゃだめ!知った以上は戦うより救わなきゃ」マリアにすっかり尻に敷かれた感じのカイだった。住民達にも変化が起こり、チップ搭載して時間が経っているのもあってその性能が発揮されるようになり、かつての住民とは思えない戦法を生み出し、一人一人素手で急所を外しながら倒していくテクまで習得していった。別の3人の住民グループに解毒を頼み、薬漬けの住民が元に戻り、そして仲間を取り戻していく間に、グループとしての一体感、責任感が生まれ、次第に"考える住民"に変わっていった。 人気blogランキングへ
2006.05.23
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主であるスベェンの考えを予測しながら、マシンに座らせた住民を見つめる事しかできないショウの目から涙が浮かんだ。今抵抗すれば、住民の命が危ないし、自分の作戦も失敗する。今ならまだ住民は死ぬわけではない、この段階なら救えるのだ。「しかし気になる、自分が開発したチップがここで大量生産され、薬漬けの住民にセッティングするのは何故だ、なんで薬漬けなんだ?」不完全なチップでは考えつくわけがなかった。それにはスベェンから行動に出るまで読めないとは不利な状態だった。「それにだ、スベェンが持っているあのチップだって私が作ったそのものかどうかも確信できない、ちくしょう、どれもこれも憶測だらけだ!」ショウの頭は知識の空っぽなチップと悔しい思いでいっぱいになった。「何がなんでもこの特殊チップをあいつに植え付けないと...イチかバチかやってみるか」自分でも想像つかない事だが、ショウは闇雲に動きだした。「そろそろ始めよう、私が座る」ショウはポケットからチップを取り出し、手に持ちながらマシンに座った。スベェンもニヤつきながら、バッグからチップを出してマシンにセットした。ショウが持っている特殊チップは他に使い道があった。セットしなくても通信機能が働くのだ。ショウの持つチップのキャップからケーブルを引っ張り出して、マシンの椅子にある端子に接続すると自動的に設定を開始しはじめた。そのため、マシンからの供給を断つことには成功した。「ここからが問題だな」心で呟いたショウは、スベェンに気付かれないようにするにはケーブル経由で行うが、それでは外部接続のせいか、時間がかかることがネックだ。スベェンに悟られる前に終わるのか?人気blogランキングへ
2006.05.22
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研究室を見つけたのは四階だった。カイ達は急いで研究室に入り、解毒剤を探した。「急がないと、こいつの命か新たな刺客が来るか」部屋の奥に四つのロッカーが並び、薬品らしいアイコンが刻まれている。「ここか」左から開けていくが、解毒剤らしきものが見当たらない、このままでは間に合わない、と思った瞬間、物音もせずに、取り囲まれたような気を感じたマリアとカイ。「万事休すか」あきらめて戦闘にかかろうとしたら、マリアの横にあるテーブルの下にあるラックの中に瓶らしきモノが大量に見つかった。「これだわ、ここにあるの全部解毒関係よ!」「でかした、それを持って彼に注射するんだ、注射器は確かあそこに...」「どうしたの、カイ?」指を指した先には、新たな刺客、しかも十数人という極めてカイ達には不利な状況だ。「マリアは薬を持って裏の扉から出るんだ。ここはなんとか食い止めるから」「えっ、どう考えたってまずいでしょ、敵う数じゃないわ」すると、刺客達の数が後ろから一人ずつ減っているのだ。「どうしたんだ?」刺客達の影から声がした。「カイさん、ここは私達も援護しますよ、マリアさんは早く彼に薬を持って行って下さい!」頼もしい住民達の誕生だった。ショウが植え付けたチップがようやく威力を発揮仕出したのだ。住民達は一人ずつ引きずり出しては束になって刺客を倒していった。マリアは急いで薬漬けの住民のもとへ向かった。カイも住民達と共に刺客に立ち向かった。相手の刺客はいずれも住民であるが、チップのない純粋なタイプだった、いわゆる洗脳タイプという、極めて単純に戦闘だけを教え込まれた刺客だ。次々と倒していくたびに戦闘能力のない、ただの住民に戻っていった。「どうやって洗脳させているんだ、催眠術師でもいるんかい?」誰の仕業かは、いずれ相対することになる。人気blogランキングへ
2006.05.19
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「ありがとう」と自力で言い直した刺客。その意味は、このような自分を食い止めてくれたことに感謝している事を示していた。「自分は今わかった、団結するという意味が。」住民に戻り冷静を取り戻した刺客は、更に「私は、学習機能を植え付けられた、ある機械にかけられた、それしか覚えてない、すまない」「なんだって?機械ってあのマシンの事?」カイは驚き、マリアも「孤独を恐怖感に変えて人を変貌させようなんて、残酷すぎる」さらに彼はこんな事を言い出した、「髪の毛のない男もその場所にいた、ほら、あなた方と一緒にいた彼だ、きっとそうだ」「ショウだ、どういうことだ?」「きっとマシンの事で利用されてるんだわ。助けなきゃ!」まさか、と思い、マリアは焦って駆け降りようとしたが、食い止めた。「ショウを信じるんだよね」カイも「そうだ、こっちもやることいっぱいあるぞ」カイ達は薬漬けの住民を抱え、研究室を探すことにした。そこに行けば、解毒する薬品があるにちがいないと判断した。地下では、椅子に座らせられた住民がまた一人、薬漬けとなっていた。それを見つめる男がいた。人気blogランキングへ
2006.05.18
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パンチを喰らったがすぐに態勢を戻し、お返しの右腕を真っ直ぐに刺客を捕らえた。「あいつ、格闘経験あんのかぁ、すげぇーというか、おっかねぇ」カイは恐れ入った表情でマリアを見守った。住民達もマリアの格闘を見て、何やら動作を真似ているようだった。優位に攻めるマリアに刺客の表情が見る見るうちに弱々しくなり、ある程度傷めつけたマリアは攻撃を止めた。「うぅー、あぁー」刺客が何か言っているようだ、マリアは横たわる刺客を座らせ、耳を向ける。「えっ、何かしゃべってるな、マリア」「ええ、何か言ってるけど、よく聞き取れないわね」耳が比較的利くカイは、体臭のひどい刺客の前に来て我慢しながら、呟いている言葉を分析した。「何て?」しばらくすると、カイは立ち上がり、「こいつ、さっきから『ありがとう』の一点張りなんだよね。どういうことか解る?」すると住民の一人が言い出した。「あのぉ、この人多分住民の中でも最も孤独を求めて接触を拒んでいた者に違いないです」マリアは「どこで解るの?」「さっきまでのとは変わった顔付きでわかったが、その男の目をしている」住民達にとってはかなり有名のようだった、団体を拒み、自力で生きてきた住民に刺客として選んだ主は孤独である寂しさと不安感と恐怖感を植え付けておいて、麻薬のような薬品を服用させ、それらの恐怖感から逃れるための戦闘機能だけを重点して学習させていた。「ありがとうって言うと、こいつは、自分を止めて欲しかったのか。仕方なくやったということか?」人気blogランキングへ
2006.05.17
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カイ達は監視がある3階に再び突入した。ここからは何が起きても不思議ではない状況だ。すると、上から何やらうめき声が聞こえてきた。カイ達はビクッとした。「いつもとは状況が違ってるかな」「あの声、人間なの?」そう恐怖感に包まれている時、今目の前に姿を現した刺客は、外観は普通の人間だが、猫背で、目の焦点が定まっておらず、ヨダレを垂らして、のっさりと歩いて来た。まるで麻薬に侵されたようにうろたえている症状に、カイ達は驚きを隠せなかった。「あいつ、やばいんじゃないか、しかも一人さまよっているなんて、刺客なのか?」カイ達はその男を避けて通り過ぎようとした瞬間、「バシッ」と音を起てて住民の一人を殴り付けた。「やはり刺客だったか、ちくしょう!」すると、「て、てめーらの、こーどーはあ、おーみとーしなんだよぉ」と言った瞬間、刺客の目付きが変わった。刺客を上回る恐怖感ある顔付きに変貌した。カイは、「こ、こいつ、危険過ぎる」と怯え切った声で住民達の前で体が震えていた。その様子を見兼ねて、マリアは、「しょうがないわね、あたしの出番かな」誇らしげな口調で先頭に立つマリアを見て、カイは「マリアってなんかやってたんだっけか!?」「あら、言わなかったっけか!?」「言ってない言ってない」次の瞬間、刺客に対してマリアは回し蹴りをお見舞いした。刺客はもろに受けて倒れ込んだ。「こう見えても昔、格闘やってたのを思い出したわ。チップが引き起こしてくれたのね」記憶とは、時間が経過しても経験ある限り再び体を動かすことがあるがまさにそれが今、発揮された。「うげっ、すげぇのがいるじゃねぇーかぁ、そぉくるんじゃあ、」すかさず立ち上がり、薬漬けとは思えないすばしこい動作でマリアの横に動き、右手を振り下ろしてきた。人気blogランキングへ
2006.05.16
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構えながら、時にはナイフを突き付けながらも静かに移動し、そのまま2階まで降りて来た。「なあ、監視カメラとかあるのか?いつまでこんな事やっていればいいんだ?」疲れが出て来たカイに、「監視が届くのは3階から上だ、幹部らが安全なようになってるからな、もうここは大丈夫かな」刺客忍者がそう言うと、座り込んでしまったカイ。「運動が足りないようだな。なんなら、君達と来た住民の中にでも紛れようか?」刺客がそう言うと、マリアは、「あんた、頭冴えてるねぇ、まるでリーダーね」カイは思い出したように「お前、チップ入ってるだろ!?」「そんなところだ、だから刺客になったのも比較的新しいんだ、多分、考える住民が雇われたのはこの部隊が初めてだろうな」「部隊って!?」その後、後から数人の刺客が現れ、カイ達を囲んだ。「もちろん、君達を襲うつもりはないよ、ここは入会金いるのかな!?」連れて来た住民十人、刺客から入る住民が五人、マリアとカイで十七人となる。カイ達は喜び、明るく迎えると、すぐに「これからだぞ、幹部に食らい付いて決着付けないとな」カイが急にいばりながら告げ、再び上に上がりはじめた。幹部は、再びやってきたカイ達に異変を感じて、別格の刺客を送り込んだ。この人間、普通と様子がちがった。人気blogランキングへ
2006.05.15
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刺客忍者は構えを止めずに密かに説明を始めた。「聞いてくれ、これはハッタリなんだ、あんた達に上がって来ないようにと幹部から言われているが、俺達はこんなことはしたくないんだ。」刺客忍者がそういうと、カイは構えを止めようとした。だが、「だめだ、構えていろ、見られているかもしれないんだ。」刺客忍者の言葉に対して、カイは「そうか、おまえらも住民だったってことなんだな」「ああ、その通りだ、ちょっと体力あるってだけで、こんな事やらされてるが、生活の為しかたなかったんだ」多くの住民は家以外に土地を持ち、畑などで自給自足したり、分け合ったりするのが習慣だが、家以外土地のない住民は自給自足が困難なため、主の下で働いている形式をとっていた。カイが質問した。「構えを止めるとどうなるんだ?」「幹部が飛んで来て、俺達をクビにする。」「そのあとは、こっちは幹部と構えるわけ?」「たぶん。そうなるかもしれない」刺客は、何だか自信がないようだ。「そんな不安になるような事言いやがって、知らないのか?」「いや、決まっていることなんだが、あの人達は主に対して反発を抱いているようなんだ、だから別の事考えている可能性が高いんだ」「身内の反発か、有りがちだな」カイは構えながら苦笑した。「それって言うと、マジモードなのは、ショウと主だけかも。」マリアも、「住民と幹部と主が完全にバラバラって事じゃない、やっぱり放っておけないわ」刺客忍者も冷静になって、「その通りだ、この社会をまとめるリーダーは絶対に必要なんだ、俺達住民を動かす位できる者がな」人気blogランキングへ
2006.05.12
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3階に差し掛かった時、マリアが「気をつけて、空気が変よ」一斉に武器を構えた。しかし住民のほとんどは戦闘を知らない、ハッタリであることを刺客忍者はすぐに察知した。強がっても未経験、無理もないが、やはり、自分の身を守る事位はできるたろう。3階に入った。その時、カイの頭に光が走った。「ショウ?」ショウの身に何かが起こったような気がした。「こんなときにショウの奴、泣き言言ってんじゃないぞ」カイは心の中で呟いた。お互い考えている暇はなかった。「来た!」刺客忍者を察知したカイは住民達をかばう体制に入った瞬間、前方に一人、刺客忍者が突如として立ちはだかった。「こいつ、武器持ってるのか!?」刺客忍者はポケットからナイフを取り出し、構えながら接近してきた。カイも武器というものはやはりナイフであったが、登山ナイフだ。「そういやあ、武器なんて作戦に入れてなかったなんてオチでもありえないな」といいながら、構えながら前進した。「しょうがないわ、ここには本来、武器なんて存在しないのよ。」マリアと住民達も武器といってもカマとかクワである。すると、接近して更に切り付けるかという所で、刺客忍者がカイに何か呟いた。「えっ、何か言ったか?」首を傾げながらも構えを見せているカイに対して、「これは、ハッタリだ」????人気blogランキングへ
2006.05.11
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「あの時、ぼーっとして体がまだ馴染んでなかった隙を狙ったんだな、なんでチップなんか持ち歩いてしまったんだ!」「ショウの状態がどうだったかは知らなかったが、私はプレゼントだと思い込んでいましたよ、それじゃあ、お返ししなきゃあ」ショウは無理矢理過去を思い出そうとしても、ただ頭痛がするだけだった。容量のないチップによるスクランブルが働いてオーバーフローを防ぐためだ。「くそ、そうかんたんにはいかないぞ」ショウの懸命な抵抗も、横から現れた刺客によって取り押さえられた。「ショウには少し休んでいただきますよ、目覚めた時は最高の気分になるでしょう」スブェンはある個室にショウを連れて行った。「うーっ、ここまでヘッポコチップだとは、あいつらだったら失神してるな」マリアとカイの事が気になっていたが、自分がそれどころではなかった。「信じるんだ、きっとうまくやってくれる」そう言い残して、麻酔を打たれ、そのまま静かに眠りについた。「いい寝顔ですねぇ、すぐだからね、」その個室の真ん中にあったのは、ショウの所持しているものと同型のマシンだった。だが、すぐにはマシンには乗せず、スブェンにはある試みがあった。一方、マリアとカイ達は、三階途中で刺客忍者が待ち伏せているのを気付かず、2階を上がり切ったところだった。人気blogランキングへ
2006.05.10
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上役が誰の指示によって利用されていたのか、その情報が途絶えたまま、リセットされた。「リセットされたおかげで情報も何も関係なくなったが、それが意外な事がわかったんです。わたしが主となった理由は、その情報の根源を暴くこと。」ショウはすかさず「リセットして消えたんじゃなかったのか?」「そこがすごいことに、情報の根源は、リセットする数秒前に捜査班を送り込んでいたのです。目的は情報を揉み消すため。でもそういった邪悪な指令はリセットとともに消滅した。だから私は目的を変更した」スブェンは主になってから今までの思いをショウにぶつけた。「その捜査班というのは、三人。つまり、あなたがたのことです。」驚きのあまり、震えていたショウは、自分達の任務を都合よく自ら塗り替えていた。やはりリセットされた瞬間にだ。「私達三人は、その根源を知っているはずなんだな?しかし三人とも記憶をいろいろいじったんでね、リセット前の事を覚えてないぜ。」スブェンは自信ありげに、「いや、一つだけ手はあるんですよ」「なんだって!?」ショウにも思い付かない事がスブェンには解らないわけでもなかった。同じ研究所を共にしているくらいだ、博士号は持たないにしても、教授に近い素質があった。「ショウ、あなたがこの前、私にプレゼントしてくれたものがようやく発揮されるのですよ」ショウはここでやっと思い出した。一番渡したくない人物が今手にしているのは、「最後の完成型記憶チップか」人気blogランキングへ
2006.05.08
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「ああ、どおりで気になってしょうがなかったわけだ。主、いや、スブェン。」二人の過去は記憶に留めたくない、打ち消したい気持ちが、主となり、そして一方は特殊部隊となった。二人は、同じ研究所にいた。人間の記憶容量や記憶継続などの分析などに専念していた頃、同じ人間なのにどうして記憶容量に個人差があるんだという発想から、まさかこんな最悪の事件に発展するとは思いもしなかった。人によって思考能力が違うのは、それぞれの家系、環境などによって生活のリズムがあり、学習することが義務か自由かに寄って左右されるが、同じ時代に生きといてそれでは不公平じゃないか、という馬鹿げた意見が上役から発言された。スブェンは「個人差があるから人間なんですよ、それをいじることなんてできません!」と、抗議したが、「平等になる理論を出さなければこの研究所は意味がないから閉鎖するぞ!」というめちゃくちゃな命令がくだされた。まずい、生き甲斐を閉鎖されては困ると思い、ショウが、「時間を下さい、結果を出します。」ととっさに発言してしまった。その時は難を逃れた、仕方なく研究を開始した二人は、ショウは電子系、スブェンはバイオ系に分かれて担当。しかし、上役も実はうらで利用されているという情報が入って来たのだ。人気blogランキングへ
2006.05.02
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ショウの作ったチップが残りモノからの再生だと聞いて、カイは、ショウの身に起こることを察知した。「ショウは一度チップを使って完全記憶までに回復した、改良されたチップはもう一度だけ組込めるが、二回目は組み替えできない、それをやると、脳そのものが損傷し、チップの効力も反応しない。」マリアはそれを聞いて、後悔した、ショウを止めるべきだったと。「その組み込んだチップがまともに働いてりゃ問題ないんだ、マリア、まだ希望がないわけじゃないよ」「でも、寄せ集めだから記憶容量が少ないって..」「少しでもいい、ちゃんと機能していればね」マリアを慰めながら、カイはすぐさま、指揮をとった。「ショウの考えに任せよう、信じるんだ、俺達は上に向かうぞ」上には幹部や刺客がいると予想して、多人数に備えた。地下では、ショウと主が黙ったまま部屋の真ん中で立ちすくんだ。しばらくして主が口を開いた。「よくわかりましたね、地下にいること、わたしの性格、覚えていたようですね、ショウさん」人気blogランキングへ
2006.05.01
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ショウを探しながら上へと進んでいく一同。マリアは次第におかしいことを感じ、足を止めた。「どうした、マリア、具合でも悪くなったか?」「いえ、そうじゃなくて」「じゃあ一体何なんだ?」マリアはショウがあのチップを積んだ事が気掛かりだった。もう自分を諦めてしまったショウがまともに動く保証がないからだ。マリアは迷っていた、ショウに言われたことを告知するかどうか?「おい、マリア!」「あ、ああ、足がちょっとね、違和感があって..」と言うと、「本当にマリアは嘘が下手くそだな、ショウのこと、何か知ってるだろ?」マリアはカイが意外と馬鹿じゃないことを悟る。「あの時、部屋に様子を見に行ったら、マシンからケーブルに繋がっていたショウを見たの、あたしはそれが何でか解らなくて、止めることが出来なくて、何故か涙が出て...」「もうわかった、言わなくていいよ。ちぇっ、ショウの奴、格好つけやがって」カイはショウが何らかのチップを身につけ、主に何か挑もうとしていることまで予想できた。「知りたいのはチップだ、チップの性能だ、あいつのことだから、すごいのを作ったんだろ?」マリアは黙ってしまった。「どうなんだ?マリア」すると、開けた口から出た言葉は、「やっぱりカイは馬鹿だね」人気blogランキングへ
2006.04.28
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ショウ達を待っていたのは軍隊どころか、ただの静寂だった。しかし、油断できないのも事実。恐る恐る建物に入って行くと、ショウは、「ちょっと様子を見に行くからここで待っててくれ、」「わかった」カイが答えて皆に伝えた。「気をつけてね、ショウ」「ああ、大丈夫だ、一分でもどるよ」そう言ってショウは奥へ進んで行った。あたりは本当に人の気配すらなかった。住民達もずっと住んでいるこの世界でこんなに静かな場所が存在するとは思わなかった。まもなく一分が経とうとしていたが、ショウが帰って来ない。「本当に大丈夫かしら、見に行ってくる」「待て、ショウを信じるんだ」そうは言っても二人ともきが短い性格だった。このままでいられるわけがない。「みんな、行くぞ」ショウを待たずに一同動き出した。入り口に入ってすぐに階段を見つけ、地下と上段へとある。「どっちに行ったと思う?」「主の方に向かうとしたらやっぱり上段でしょ」上にいると判断するのが自然だ。一同は迷わず上へと登って行った。まんまと引っかかったカイ達。肝心のショウは地下に吸い込まれるように降りていた。僅かな記憶に頼りながら、裏を点いていることを感じ取った。「このチップもまだまだ捨てたもんじゃないな。」地下道をしばらく歩くと奥がほんのりと明るくなっている。「ビンゴ!」その明かりのある部屋の真ん中には、立ちすくんだ主がいた。人気blogランキングへ
2006.04.27
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完全記憶型にとって、考えないというのは、面倒くさい、または、うずうずするかどちらかになるだろう。主はむしろ後者であり、会議がしたくても一方的なので打ち合わせにもならない、常に結果報告。主が常に考え、報告し、それに忠実に反応する幹部。確かにここまでは現代には見習って欲しい部分かもしれない。しかし、主に対してこっちの方がいいと主張する者がいるほうが社会の発展への近道となる。多くの人の声を聞くことがとても重要なことなのだ。ショウにはわかっていた。主が気の小さい人間であることを。主のある館にたどり着いたショウ達、物静かな空気が流れる門の前。「気をつけろ、幹部クラスの刺客が複数いるかもしれない。」慎重に話すショウ。数分経過した時、いきなり門が開き始めた、動揺する住民達だがすぐに落ち着いた。「ふーむ、これはようこそって事かしら?」マリアが不思議そうに言うと、カイは、「そのようだな、もう感じていたのだろう。記憶の結集が来たんだからな」そっと中へ入って行くと、広い敷地になって、飾り気のない、ただのがらんどうだった。正面には主の館が見える。「うーん、戦闘機能を持ってないのかな」カイが呟くと、すかさずショウが、「そんなことはない、爆弾を使ってるんだ、テロまがいのことでも最低はできるはずだ。」そう言っているショウでも、ここに軍隊があるわけでもなく、テロまがいだとしても、どう攻撃してくるかは読めていなかった。人気blogランキングへ
2006.04.26
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主は完全記憶型、いわゆる普通の人間だった。ショウが主に託す理由はそこにある。まわりで守るように取り囲んでいる幹部達こそが問題だった。幹部といっても、もともとは住民の一部の人間なのだ。主が幹部として選出した方法は、体力、運動能力が発達していることだった。考えるのは全て主で、実行は全て幹部というシステムだ。その幹部達も体力以外は住民と変わらなかったから、他は一切考えられない。主に忠実なのだが、それ以上は追求できない。つまり、幹部になった住民は毎年変わるのだ。新しい住民を迎えることで、体力低下、高年齢化を防いでいた。主が平和以上に住民との交流や、思考させることを許可しないのは、こうした対抗不可能な幹部の内情からであり、力で抑えるのが精一杯であった。外部から頭の働く者が現れ、しかも、究極のチップを開発すると聞けば、やはり利用しないわけがなかった。主の言うことに一切耳を傾けない思考能力ゼロの幹部とは早くおさらばしたいという思いが募っていたのだ。主はこの間ショウを捕獲した時に、持っていたチップを盗みだし、それをじっと見つめながら考えていた。「これを彼に是非付けてほしいものですな、その能力があればようやく住民の前に立つことができるのです。」人気blogランキングへ
2006.04.25
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意思を持った住民達と完全記憶のマリアとカイ、そして先頭には改良されたチップを備えるショウ。改良されたチップには、住民に与えたものと比べ、ほんの僅かな過去の記憶が収まっているだけで、学習機能など、思考能力は省かれ、幹部らに感知されないタイプだった。潜入はともかく、戦闘も可能で、もちろん、マリアとカイとも会話はできる。しかし、このチップの最大の欠点は、思考能力がない、つまり、新しい発想、発明、発見など開拓することができない。それに加え、これから先は覚えることができないなど、リスクが大きい。ショウが何故このチップを開発したのか、何故自ら組み込んだのか。マリアが泣いた理由は、このチップが寄せ集めたパーツで作った事、ショウに何かあったら何もしてあげられないことがわかっていたからである。そしてマリアさえもわからない最悪の欠点があったのだ。ショウはバッグに特注のチップを入れていた。それは、特定の人物のみに組込めるスペシャル版だった。そう、ショウの的はただ一つ、主の脳だ。外部から来た人間よりここに存在し、主力経験のある主にしかこの世界は保つ術がなかったのだ。特注チップの機能は、住民らやマリア、そしてカイのレベルでは、頭脳が破壊され、一生記憶喪失となってしまうのだ。その機能とは?人気blogランキングへ
2006.04.24
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マリアは呼んだはずのショウがなかなか出てこないので、もう一度中に入って呼びかけた時、ギューンという機械音がしている事に気付いた。ゆっくり音のする方に入って行くと、マリアは「何してるの!?」目を閉じたショウがマシンにかかっているのを目撃した。マリアは急いで電源を落とそうとした時、「..触るな..これでいいんだ...」「な、何がいいのよ!これじゃあなたの記憶は..」「いいんだよ、私は絶対に..ここの人達を救いたいんだ...マリアも..カイとうまくやってほしい..」ショウはそのまま気を失い、新しいチップが組み替えられていった。「ショウ!何言ってるのかわからないよ!」白く光るマシンの前で座り込んで泣き崩れていたマリアは変わり行くショウを迎えるために心の準備を始めた。なかなか出てこないマリアとショウが気になっていたカイがようやく中に入って探しに行こうとしたら、二人の影が前から見えて来た。「遅かったじゃないか、ショウ、もういつでもOKだ」部屋で起きたことを知らないカイはいつものノリでショウを迎えた、その横からマリアも同じノリで、「さて、あたし達で世界を変えるのよ」明るく振る舞うマリアを見てショウはほくそ笑むような表情をした。「チップを作るパーツがもうなかったよ、三人は自力で行こうか」すると、カイは「そうか、そうだな、また記憶吹っ飛ぶのゴメンだし、みんなといれば何とかなるだろ」ショウがついた精一杯の嘘にマリアは笑いながらも心で涙を流していた。[第6章/END]人気blogランキングへ
2006.04.21
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ショウの最悪の発言にマリアもカイも理解できていた。「きっとそうなると思ったよ、一度は消えたんだ、どうってことないよ」カイは吹っ切れた気持ちになった、マリアも、「またブレイクすればもとに戻るよ、すぐ実行しましょう」するとショウは依然と暗い赴きで「とりあえずマリアとカイは住民を従えて団結し、気持ちを一つにする準備を始めてくれ、その間に私は自分達の改良チップを作るから」そう言い残して部屋に入った。住民を集め、チップの作動と意思確認をして、準備を進めていった。しかし、ショウは最初から3人分の改良チップを作るつもりはなかった、実際改良するためのパーツなどもはや残されていなかったのだ。「出来ても一つだけか」ショウは大きい溜め息をして、ここまでの記憶を振替っていた。あの時代の栄光と絶望、この世界でマリアとカイとの出会い。「いろいろあったな、あの二人にも会って、楽しませてもらった、栄光の博士号も、絶望も、そして仲間も一通り経験した。」時間が過ぎてしばらくすると、外からマリアが、「準備が出来たわ」「あー!」ショウは返事をしながらも、チップを改良していた。こんな危険なチップをあの二人には重荷だと感じながら。「これが最後かな」完成したチップをマシンにセットし、ショウ自らマシンの横に座った。一か八か、どのくらいの記憶が残るのか、危険な賭けになりそうだ。人気blogランキングへ
2006.04.21
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ショウは頭を整理した。今までの記憶を総合して。「向こうには丸見え、こっちからはキャッチできない、って事は、奴らの反応は記憶によるもの、記憶を読む特殊能力だ。」「記憶を持つ人間が束になれば強い団結で圧倒していたけど、彼らの最初の狙いはその人間を減らして拡散させることだとすると、個人戦略か?」カイが想像したことがヒントになったのか、ショウの答えが出た。つまり、記憶を持つ者が拡散され、個人レベルならキャッチしやすくなる、だから、団体で攻められるのを恐れているはずだと判断した。「この作戦はもう後戻りできない所まで来ている、だからなんとしても、成功させたい、住民達と我々と、そしてこの世界のためにもね」真剣な表情で話すショウの目を見て、マリアは「なんかあまりいい話じゃなさそうだね」「ここは記憶で保たれている、記憶が豊富な者が上に立つ世界だ。だから住民達にもそれなりの記憶に加え考える力と主張する知恵が不可欠なんだよ。あのチップを土台にしてでも、自由な思考を自分自身で抱いてもらわなければ、作戦は終われない。」マリアもカイも真剣にショウを見ていた。「この方法はできれば使いたくなかったが、やはり使うしかなくなった、記憶を消して潜り込む」マリアとカイは唖然とした表情に変わった。「そんなのまだ決まってないだろ!?」「まだチップのない住民にやらせればいいんじゃないの?」「それが無理なんだ、チップだけの能力では危険すぎるし、洗脳される可能性が高い、"完全記憶能力"である我々だけって事だ」"完全記憶能力"とは、いわゆる、意志を持った「普通の人間」のことだ。 人気blogランキングへ
2006.04.20
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主にある思いの根源は当然ながら過去によるものだ。幹部達にもはっきりとした理由を知らせておらず、半場「わがままな主」ということになっていた。一方、マリアとカイ達の行動を一部始終監視している者がいた。主が派遣した刺客だ。黒い服をまとい、まるで忍者のような装いだ。すべてがまとまってきた時、刺客が動き始めた。物音せずに。その動きに何となく反応したのはやはりショウだ。「うっ、何?」と思った瞬間、ドカーン!かなりの爆破音だ。「あそこだ行こう」ショウはおち着いていた、あわててしまってはこれまでの苦労が無駄になる、"予想していたことだ"、そう言い聞かせていた。爆破地点には、住民に被害はなかったが、怪我する以上に"恐怖感"を強く植え付けられてしまった。「あいつ、わざとやったな」住民がやっと意欲的だっただけにこのショックはあまりにも大きかった。「まずいな、ダメージがでかかったな、住民の信用度が何より重要なんだけど。」マリアは、「みんな計算してやった事ね、頭がいいわね」するとカイは、「感心している場合じゃないぞ!こっちの行動は殆ど見られてるのに、こっちからは何も見えないんだぜ!」「カイの言うとおりね、悪かったわ」「するってーと、こっちからも見えるようにすればいいのかぁ」ショウが何やら考え始める。人気blogランキングへ
2006.04.19
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これほどの人数が一辺にして意思を抱くことが、幹部達に反応するまでの時間を稼いだ。表情には出さないがかなり焦りが見え始めた主がとる行動とは?「少し野放しし過ぎたかもしれないですねぇ、ここまで派手になるとは。」幹部達にようやく情報が入って来た。「以前、初の容疑者となっていた男が中心に三人が住民と接触していたようです」主はそれを聞いて「それくらいわかっていましたよ、驚いたのはその説得力のスピードです。過去を知っている者が今まで社会をどうしてきたか、私が身に染みるほどの仕打ちをされてきた人間の代表としてこの社会を築いた意味を今示さなければならない。その先陣として、住民の中に刺客を送り込んであります、予想通りの展開なのですよ」主もまた過去の記憶を持つ人間だった。忌ま忌ましい事件や政治を見てその時代を生きて来た一人だった。それが何故自ら実権を握らなければならなくなったのか?主の思いはマリアやカイ、そしてショウ達に近いはずだった。しかしそれ以前に理由があった。ある過去とある人物によって、主の意思は固まっていた、しかも長い年月をかけた強い意思だ。過去を閉ざしながら実権を握った彼の手には、ショウのチップが握られていた。人気blogランキングへ
2006.04.18
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かなりのペースで住民達が次々と自分の意思を持ち始め、明るさと活気が出て来た。ショウはこの光景を見て、「なんだか懐かしいものを見ている気がする」するとカイも「そうだな、これって自分が幼少に見た光景だ」マリアも続いて、「昭和の風景って言うか、レトロと呼ばれた時期かな」そう、昭和の一番よかった頃といえば、みんなでやっていく一体感、笑って先の明るい未来を夢見て働く人達、汗流した分、見返りがちゃんとあったあの頃だ。駄菓子屋が栄えて、市場は活気があり、子供は広場で缶蹴り。これこそ平和の基本ではないかというほどの見事な光景が甦った。「本当の平和ってさぁ、みんなが忘れちゃったことばかりだね、これがない平和って擬似というか、見せ掛けだけ良くて中身は何だかごたごたしてそれどころじゃない時間が過ぎているんだよ。」カイは、この光景を見てちょっぴり悔しい気がした。「リセットしてこんな簡単にいい社会になるならもっと早く気がつけばよかったんだ。あんなに複雑でガサツした世の中にしちまってエコだとか環境とか笑わせんなよ」「わかってるわよ、それくらい、だからここからまた始めればいいじゃん。」マリアはカイの肩を軽く叩いて、しばらく黙り、住民達の姿を見ていた。急激な住民達の活気を感じ始めた主の反応に異常を感じ、幹部達が動きだそうとしていた。人気blogランキングへ
2006.04.17
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作戦開始に出た三人。前にチップを組み込んだ住民から協力の説明をし、援助を依頼、さらに、スパイの系統を探りなるべくその住民に当たらないよう配慮した。「密告する手段は無線のようなものを使っていたようだ、だとすれば、周波を狂わせる妨害信号を常に流せばいいよ。」ショウの慎重ぶりに、マリアとカイはただただ尊敬するばかり。「ショウにさっき渡された携帯って妨害装置ね、常時妨害できるようにして住民達に渡してあるわよ、あれもショウが作ったの?」微妙な笑顔で「あれは昔回収した[ただの壊れた携帯]さ」「あなた、資源回収でもしてた?」「なんとでも言ってくれ、まっ似たようなもんだったけど」慎重ながらも、合間に笑いを取り混ぜながら行動する三人を見て、チップ搭載住民の心に光が走っていた。「ああいうのって何だか好きだな」「受け身だったのがおかしく感じる、求める事は自分で見つけるんだな」チップ搭載住民らは他の住民達にもこの気持ちを伝えたい一心で作戦に応じた。もともと考えることの無かった住民は、新鮮な気持ちに、まさに[リセット]された瞬間だった。 人気blogランキングへ
2006.04.15
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ここの住民だって、心の底まで汚れた者はいないはずだ。誰かによって、それがいいと判断した、それだけのことだった。単純なものだった法律は、あれもこれもと需要が複数、細分化され、難しく見えてしまう、だから理解できない者が理解に苦しんだあげくに、反発心を育み、犯罪や事故に繋がっているのだ。マリアとカイ、そしてショウの最大の最終任務は、「判断を磨かせること」。これをして正しいか、間違っているか、間違っていたらどうするのか、正しいことはそれを広めていくにはどうするのか、それがベースであることを住民に植え付けなければならない。チップはその中で一部の手段としたアイテムにすぎない、突破口を開くのは彼ら三人であり、それを応用していくのは住民自ら実行しなければならない。この世界の場合、主による外ヅラのいい独裁制の影響で、自分の力で実行が可能になるまで手ほどきが必要だった。三人に疲れが見え始め、これからが本題だと思い出さないよう、打ち消すかのようにコーヒーブレイク。「ブレイクを定期的に盛り込んで行けば多少楽になるわよ」慰めにしか聞こえないが彼らにはそれだけでもないよりましだった。少なくとも、この世界にブレイクタイムができるだけましなのかもしれない。しかし、彼らの記憶を主率いる幹部が察知するのも時間の問題だ。人気blogランキングへ
2006.04.14
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マリアは半分怒った表情でショウに食らいつく。しばらくしてカイが、「外に無反応なチップは作れないのか?」「おっ、いい質問だねー、あのチップには予め無反応回路が組んである、だからチップ搭載人間は怖い者なしってわけだ」するとまたマリアが食いつく、「じゃそのチップをあたしたちにも付ければ解決じゃん?」「それはいい考えだって言いたいところだが、我々のように完全能力記憶タイプにはチップを入れても作動しないんだ」「なんだ、役に立たないわけか」間に入ってカイが「まあ、そんなにツンケンすんなよ、誰だって完璧なんていないよ。」と言ったら、今度はショウが難しい顔をした。「うーん、二人共勘弁しろよ」三人共気まずい雰囲気に包まれ、話しが進まなくなった。時間だけが容赦なく経っていく。こうやってみると、世界中の人間がうまく過ごしていく事がいかに理想的か、そしていかに難関か、三人の脳裏に改めて感じた。政権の難しさ、十人十色いる中での法律の規準なんてあってないような物、そんな中で本当の平和な規準を見出だすなんて不可能なのかもしれない。でも、どんな人がいようとも、心の底から悪い人間がそんなに居るだろうか?だとすれば、その心を浮き出すような魅力ある法則を組み立てる事が理想的なのだが、それがうまく動く訳がない。心を動かすということは、洗脳ではない、判断だ。人気blogランキングへ
2006.04.13
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過去からの記憶を持った者が罰せられる理由はただ一つ、主による独裁的政権が困難になるからに外ならない。住民と陰で接触しチップを提供することもまた困難だ。住民たちの中に主と繋がる報告員が混じっているし、偶然その人にチップの提供を促した瞬間も何が起こるかわからない。「あまりにも危険すぎることばかりだわ、少し時間を置いて作戦会議ってわけにはいかないかしら?」マリアの不安げな表情にカイは、「自分もそう思うけど、三人に記憶があることを悟られる危険が最大の難関だろ、ここの連中は何でそれが会っただけで判断できるのかが疑問なんだよな」それについて、ショウが「一つ提案がある、以前にチップを提供した者と手を組んである程度の人数で行動すると、記憶のある者が複数いることでキャッチに時間がかかるんじゃないかと思うんだが。」「つまり拡散ってことね、そんな根拠のない理由で行動する自体危険かもよ」「マリアの言うとおりだ、だけど、昔、助教授の時に動物実験で二匹のネズミがいて、片方にたらふく餌を与えたあとにどこかに隠れている状態、もう一方の空腹ネズミに探させると、ちゃんとたらふくネズミの居場所に到達したんだ、でも複数のネズミに餌をやったら..」ショウの発言にマリアは「相手はネズミしゃないわ」「そんなことはわかってるよ、理論上は立証されてるんだ、だからこれは人を使った十年掛かりの最終実験だよ」人気blogランキングへ
2006.04.12
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当然この三人がマークされることを理解している。しかし、ここに来た本当の目的は平和の真実を明らかにして、がんじがらめの政権から住民を救うことだ。だが、それに便乗して不満を抱かない人がほとんど、今のままでも充分と考え、意見を言わない、物事を考えない、抜け殻のような生活。平和というより、むしろ、現代社会の成れの果てという感覚に満ちていた。「人を殺したくなった」と自供する容疑者の心理は、自然に任せて自分が普通に振る舞っている中の一環であるように聞こえる。何故そう考える人が誕生するのか?少子化、孤立、結婚しないなど、多くの人が一人でも不自由なく生きていける時代だからこそ、落とし穴が広がっていく。その結果がこの派閥な世界の誕生なのだ。尋ねれば協力はするが、それは自分のためであり、その後はどうなるかは関係ない、発言する責任を持たない、自分の都合で生活する習慣がこの地にある。それを利用した犯罪や隠蔽など、見えない所で、しかも立場が上になるほど激化している。三人の考えはまず住民の考えから整理していく方針だが、ショウが途中まで展開していたチップ作戦も平行して実行することにした。チップ提供した人の中から自分から発言してこの場所を説明した者がいることに希望があるからだ。そして最終的にあの主の本当の考えにメスを入れることになる。人気blogランキングへ
2006.04.11
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脇腹を消毒し応急していたマリアも今のカイの発言に「もう一度言って。」「彼が52号だよ、なんで言ってくれなかったんだ?」すると、ショウは、「自分でマシンのソフトにあるバグ修正したのち、学習機能を追加したんだ、チップはそれを応用して記憶部分を更に強化した最新のオリジナルってわけさ」あまりにも高いレベルの内容にマリアとカイは言葉を失った。「あんた、何者?」息統合して声を揃えた。「精神部門プログラム研究特別教授の52号改め、ショウ、最新の技術でこの地に存在する政権の中で生きている人の能力を分析してその地に適った必要な頭脳を提供する特別任務で派遣された」一部始終を伝えるショウを見て、唖然とした表情の二人。「ショウって言うんだな、訳わからんが、かなりのキャリアをお持ちですねぇ」そう改まった言い方でカイはショウを抱きしめた。後ろでマリアもその再会に涙を零していた。「二人はここでの幼なじみってとこね」再会を分かち合う時間もそう長くは続かなった。急に深刻な表情になったショウは、「さて、これでおそらく三人共記憶完全復活したわけだ、この後に起こることはマリアもカイも想像付くだろう。」人気blogランキングへ
2006.04.10
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その時、銃を構える男の背後から鈍器が飛んで来た。「うっ」男の後頭部に当たり、倒れた。「自分と同じ目にあわせてやったぜ。」カイが復活した、癒しの香りと共に。「か、カイ、思い出したのか」「思い出したのね、カイ。」マリアも目が潤んでいた。直ぐさま男を縛り付け、この家の住民も取り押さえた。「なあ、ここのシステムはどうなっているか説明してくれないか?」カイは冷静に住民に問い掛けた、住民は口を開こうとはしなかった。「あんたは知らないだろうがある意味自分はあんたに救われたんだぞ、手荒いことはしたくないんだ」皮肉にも、この住民が差し出したコーヒーで記憶が甦っただなんて、想像を越えてカイは改めてマリアを感謝した。「探りをする行為は禁止されている、それしか言えない」「探りを先回りして探っていたのね、住民たちの仕事とやらで、通報すると報酬ってわけか。」マリアの意見に続き、カイも、「それだけ言ってくれれば充分だ。要は人の足元を見るなってことだな。」腹部を撃たれたショウには「傷を治す薬がとなりの部屋の右にある棚の箱にあるから処置したら」マリアがそう言ってショウの姿を見つめ直した。その光景を見た時、カイはハッとして、「そいつ、どう見たって、52号?」人気blogランキングへ
2006.04.07
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この時点でマリアの記憶が完全に解凍された。一方のカイにはまだその余裕がなく、再び気を失っている状況にある。「かなり疲労が重なってるみたいだな、カイ」ショウはすぐにでも再会の喜びを伝えたかった。マリアには伝えたほうがいいだろうと振り向いた途端、「危ない!」マリアが叫んだのもつかの間、鈍い銃声が響いた。「や、やはりカイが思っていた通りだったな.」ショウは脇腹を抑えながらよろめいた。「くそー、なんてことだ、お願いしっかりして!」マリアもまたカイの予想通りに頭が動転していた。ここの住民が派閥に雇われていた、つまり、ここにいる住民の殆どが仕事として動いていたのだ。「こいつら、これで飯喰ってんのか、これでここの政権の素質がわかったよ。」ショウは痛みをこらえて銃を撃った男の肩を掴み、抑えながら、「マリア、彼とここから逃げろ!早く!」「なに言ってるの、あたしも戦うわ」「ダメだ、今は彼の安全が優先だろ」「そんなこと言ってもあんたはどうすんの!?」マリア含め武器がない三人にとって、手段がなかったと思われたその時だった。人気blogランキングへ
2006.04.06
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傷ついたカイを安全な場所に連れて行こうとしたが、ここには店とか公園という物は存在しない。困り果てて気力抜けしている所に、一人の男性が近寄ってきた。「よかったら私の家で休まれてはいかがですか?」その言葉に一番先に反応したのはカイだった。「ここの人はみんな手先だ」かすれた声だった。マリアは「今はそんなこと言っている場合じゃないわ、お願い、いいかしら?」男性に神様に願うように叫んだ。「こちらです」快く案内する男性。カイは口を開く気力もなくただそれに従うしかなかった。「ゆっくりしていって下さい」テーブルに運ばれて来たのはコーヒーだった。「香りがいいわね、気が休まるわ」マリアがそう思った瞬間、マリアの脳裏に光が走った。「あ」と感じたあとすぐに、あの時の状況を思い出した。「や、やった、思いどおりになっちゃった」ショウには何だか理解できない。「あたしはマリア、派閥の政権を探るために来た、途中で男性と遭遇、男性もあたしと同じ使命をしょっていた、名前はカイ。この人よ。」ショウの頭の中は全て繋がり、その瞬間、涙をこぼした。人気blogランキングへ
2006.04.05
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記憶があることは対外のことは口にすることができる。当然、経験のないことや記憶にないことは口にしない。現代に蔓延るコミュニケーションの交差に歪みが生じていることにまだ関心がないかもしれない。気が付く人もいるかもしれないが、コミュニケーションの半分は真実、もう半分は信頼で出来ている。何が歪みかというと、今のコミュニケーションには何通りかの方法があり、人と人、メール、電話など、たくさんあるが、伝えることは同じであるはず。でも、手段が多いせいか、嘘偽りや架空な内容を伝えたり、逆に、言わなくてもいいことを伝えたり様々なコミュニケーションの交差によっていいか悪いか判別つかない域まで来ている。その交差から生まれた新たに、知っているのに知らないふりをする人が増加したことだ。現に若者がハッタリでも強いことを利用して、何をやっても誰も見て見ぬふりをする。もし、絡まれたりしたら勝ち目がないと心に刻まれているから。他にもあるが、自分の中だけで判断したことに迷いを抱いて出来た思いつきが「知っているが言えない」。逆のパターンが「言ってはいけない範囲を越えてしまうこと」。充分に理解しているのにそれ以上言わないと気が済まない、ひどいと、言ってはいけないことを口走る。これらは人を信用していないことになり、自分が正しいことを伝えるという意味だ。人を見下した発言は意味のない独裁政治と同じだ。人気blogランキングへ
2006.04.04
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マリアはショウの言うことの意味が今わかったような気がした。平和という殻に覆われた悲惨、その意味を。「とりあえず開けてみよう。」カギを開けて鉄格子を開けて中に入ると、彼の頭から血が滲んでいるのを見つけたショウは、寝ているのではなく、気絶していることに気付いた。「彼はだいぶ抵抗したんだろうか、まずいな」彼の体を摩ってみた。「おい、大丈夫か、痛むか」しかし、彼は反応しない。「やばいのか、時間がないか」ショウは彼を担いで外に出る方法を探した。「目隠しされてたからよくわからないけど、確か左左右左って感じで曲がってきた記憶があるわ」「それが確かなら、その逆を行けばいいな」とりあえず彼女の記憶を信じた。「彼は君と一緒にこの中に来たの?」すると彼女は、「来る時は一緒だったわ、でも目的以外はよく覚えてないの」「もしや、記憶がないのか。」ショウは自分がたった一つだけ思い出さない記憶がある。その時ショウの脳裏に光が射したような気がした。「か、カイって名前知ってるか?」人気blogランキングへ
2006.04.03
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「二人に賭けてみるか」ショウに決意がよみがえった。ショウは、ここに入る際に男のフトコロにあった自転車のカギを掠め取っていた。それを取り出し、一か八か牢のカギに入れてみた。「やっぱりダメか」と諦めかけていたその時、横の部屋から声がした。「左右に揺さ振りながら前後にスライドさせてみて」そう呟いたのはマリアだった。「なんで知ってる?」「ここの市民からの請け負いよ、見ててすぐにわかったわ」ショウは言われたとおりにやってみた。その効果がすぐに出た。「開いた、予想はしていたがなんて脆いカギなんだ」ショウは苦笑いをしながら牢をそっと開け、隣にいるマリアの顔を見た。「君に感謝するよ」「あー、どうも」照れ臭い表情でマリアは答えた。「そういえば男性がいたよね、さっきの新入りかな」と言いながら、マリアの牢を開けた。「だといいけど」マリアも期待を膨らませ牢から出た。隣を見たら、がっかりしているマリアを見て、ショウは「良く見てみるんだ、ここに入れられた人間は、自分を持っている者だ、この地に住んでいる人間にはそういった意志がない、ここに居るということは自分という物をアピールしたという証拠なんだ。」人気blogランキングへ
2006.03.31
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マリアとカイ、そしてショウ。この三人が、派閥の手の内に阻まれ、世界の願望が見えなくなった。しかし、この地で行っている制度は果たしてあのぎくしゃくした現代に蔓延る政治や事件などのかけらもなく、住み良い暮らしを送っているのだろうか?一見問題はなさそうだが。ショウにはわかっていた、この世界の現実を。それを改善するきっかけも理解していた。それは、この平和である場所で、それをいいことに流され、意見や主張などといった[コミュニケーション]が全くないこと、そこから先へ進もうとする[気力]がないということだった。ショウにはそれがどういうことかを知っている。過去を知っているショウの脳裏に「独裁」という、極めて循環の悪い政権であると見ているのだ。表面ではよく見えるが、政治を行う者っていうのは、平和であればあるほど、裏を持つ者も増える。ある意味、平和すぎる世界ほど、裏の穴が大きいのではなかろうか?ショウは牢獄にまた一人連れてこられてきた気配を感じた。「これはただ事じゃないな、一期に二人も来るなんて。この人達、私と関係がある者達か?」ようやくマリアとカイに興味を示した。「これからの希望があるならば、ここから出られないわけでもないが。」人気blogランキングへ
2006.03.30
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カイの脳裏に主の存在の大きさを感じ始めた。「あの女がグルとしたら、他の連中も疑うべきか」不安になったカイにはもはやマリア以外は信用できなくなっていた。チップのかけらがまだポケットの奥にあった事に気付いたカイは、今出来ることを考え、マシン解析することを決めた。帰ってマシンを立ち上げ、外部接続機能を設定、チップのかけらをスキャンするトレイに乗せると、自動的に何やら判別を始めて、ダイヤログが開いた。<パスワードを入力>と表示されると、記憶のないカイにとってかなりの難関となった。「そうきたか」知っていることを適当に打ち込むしかない。「彼についての情報がなさすぎる」言葉なのか数字なのかまったく検討がつかないまま、派閥の地にもどることにした。彼がいるこの地で何か手掛かりがあればいいが。「彼女はいったいどこへ行ったのか、彼から導かれるパスワードって何だろう」二つの疑問を抱え込みそれ自身が新たな記憶として蓄積されるのだ。身を潜めながら歩いていると、背後に人の気配がした。振り向いた瞬間、鈍器のようなもので殴られた。カイは顔も見ないうちに気を失ってしまった。チップの謎はまた、奥へ閉ざされてしまった。人気blogランキングへ
2006.03.29
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ショウの部屋で何かが起きた、カイの頭には悪い予感ばかりが詰まっていく。彼女の消息が先か、マシン解析が優先か。「彼女は解析に来てその時何かがあったんだ、解析しようとして何者に連れていかれたとしか考えられない。」自分の勘でそう思った。できれば自分で切り抜けて欲しいところだが、背に腹は返せなかった。「どこへ行った?」外に出て隈なく探した。マリアは目隠しされたまま三人グループにある建物に到着した。中に連れて行き、一番奥の部屋に監禁された。「悔しいな、もう少しだったのに、このままじゃ済まないわよ」と負け惜しみしていた隣の部屋には、実はショウが閉じ込められていた。しかしそれをキャッチする方法はおろか、気がつくまでにはまだ至らない。「なんか人の気配が」落ち着いた感情だったので何やら反応できたが、関係あるかないかが判別できるのか?「チップの限界かな、耳鳴りらしいな」ショウに組み込まれたチップは最初に配布する前の最終のレプリカだった。だから多少の欠陥を覚悟していた。人気blogランキングへ
2006.03.28
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チップの残骸からいくつかの破片を持ち帰るカイは急いでショウの居た場所に戻り、ショウが作業したと思われるマシンから理由を引っ張り出す計画だった。戻る途中、一人の女性が横たわっている。急いでいたカイはその場から通り過ぎようとしたが、やはり見逃すことができず、「どうした?しっかりしろ」声をかけた時、女性は、「いえ、大丈夫ですから」といい、カイが手を差し延べたのをはらった。だが立った瞬間よろめいてカイに少しだけ寄り添う態勢になると、「やっぱり無理だろ、つかまれ。」優しい態度に女性は甘えるようにつかまった。そして近くのベンチに座らせ、今急いでいることを伝え、カイはショウの場所へ向かった。戻ってきてからポケットにしのばせチップを取り出そうとした瞬間、「あれ、おかしいな、ないぞ」慌てだすカイは、部屋中を探し回った。結局あの倒れていた女性の場所まで来た時ようやく理解するカイ。「ちくしょう!何やってるんだ、俺。」これが主が手掛けた罠だった。主は何かを知っている、そして、それを恐れている。「あの女、どこへいきやがった?」部屋に戻り、冷静になったところで、この部屋の綺麗さに気付くと、マリアがいないことをようやく気付いた。人気blogランキングへ
2006.03.27
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チップの残骸は思っていたほどの数がなかった、その中に、割れているがわずかに損傷が軽い物を採取した。彼を知ることが先決と感じたマリアとカイの偶然にも見事な判断だった。ショウの居た部屋には設計図のような物は一つとして見つからない、彼の頭脳だけでやったのか?マシンらしき箱を発見、電源が来ている。マリアは躊躇なくPowerを押した。普通にマシンが動きだした瞬間、「何だか妙だわ」と心の中で呟いた。不思議なことに、この部屋が綺麗に残っているということは、「ひっかかっちゃったかな」気付いたマリアは急いでPowerを切り、近くのデスクの影に隠れた。「足音か、やはりこれは罠だわ」犯罪者の部屋が取り調べなどで回収されるはずの物が平然とあるわけがなかった。マリアは悔しがった。「ちくしょう、こんなことに気付かなかったなんて、シャクだな」後悔に満ちたマリアは隠れていることを忘れて、思わず立っていた。目の前には、さっきショウを取り押さえていた男達だった。人気blogランキングへ※フリーページに[この物語を書くきっかけ]公開中。
2006.03.24
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ショウの異変は確実なものとなった。カイとの出会いを除く全ての記憶を取り戻し、学者で育んだ記憶をたどって「学習チップ」なるものを生み出した。そのチップをここにいる人達に分け与え、自分の力だけで記憶を蓄える能力を持つことができるのだ。何故ショウがチップを作るきっかけになったのか、何故その行為がばれたのか、そして一番の疑問は、主達はそれを恐れているのは何故か、という事だ。チップは回収され、焼き尽くされた。住民達はまた、何事もなかったかのように過ごす。マリアとカイに入っている情報はそこまでで、接点がない。飛んでいる情報を繋いでいくには、チップが残っているか、主達の行動を見るか、彼本人に合うかだ。彼に会うことが近道だが、会いに行くのが一番困難であった。この派閥ができて以来初めての犯罪者なだけに、堅いガードと厳しい罰則があるはずだ。カイはまず、チップを捜す事を提案した、マリアも仕方なく賛同した。カイは焼かれたチップの中に活きているかもしれない焦げの少ない物を調べる、一方マリアはショウが居たという建物(というか、倉庫)に、作りかけか、設計図とかを探索。二人とも困難を要した。人気blogランキングへ※フリーページに[この物語を書くきっかけ]公開中。
2006.03.22
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カイは、囲まれている彼のもとに着いた時、彼がカイを見た。何か言いたそうにカイの目を見つめ、しばらくしてまた下にうずくまった。「何か言いたいのか?しゃべれないのか?」といったあとすぐ奥に囲まれながら去って行った。「どうも気になる、どうしても何か言いたいように見えたんだが」カイは後を追って行こうとすると、新たな三人グループに閉ざされてしまった。「おい、彼は何なんだ?教えてくれよ!」一人が答えようとしたら、もう一人がものすごい眼差しで口止めを訴え、ショウの姿が見えなくなると、三人はカイの前から去って行った。「こりゃよほどここにとっては都合が悪いみたいだな」カイがそう思った瞬間、マリアが「この奥に皆が生活している部落があるそうよ」ここに来た理由は、この世界の規程や環境を知ること、それだけを記憶していたマリアとカイ。奥へと向かって行くことにした。ショウと同じ衝撃を受けたカイ達は、どうすることも出来なかった。あまりにも平和な場所にマリアは「こんな平和なところで彼は何かを得た、それは何だろう?」カイも「その何かがここでは都合が悪いってどんなことだ?」謎が深まっていく・・・人気blogランキングへ
2006.03.20
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グループの一人に呼び止められ、知っている事を言い出した。「この中でも、昔を知っている者が何人かいるんだ。俺もその一人だが、ここは"何もしなければ"並外れに平和な場所なんだ。」「じゃ、記憶を上書きしたの?」「いや、さすがに一旦消さないと無理みたいだ。」「一旦って、どういうことなの?」マリアが質問したら、もう一人女性が来て、「彼が来て短期間に作り上げたマシンのおかげで学習できたのよ」彼とはまさしくショウの事だが、マリアとカイにはまだ理解するにはいたらない。「ショウは自ら消した記憶の中から大事な部分だけを検索して記憶し直し、そこからいろいろ学習する能力を付けたチップを生み出したの」なにやらすごい内容のチップのようだ。それを最初に組み込んでいれば、マリアもカイも苦労はなかったが。「えっ、なんか話がややっこしくなってきたな、ショウって人がここで開発したんだよね、彼はどこにいるの?」するとその女性はその彼を指さした。その方向は「あの囲まれてるお兄さんね、何か仕出かしたのかしら。」その様子を見てカイは、何かに気付いた。「あの男、チップを巡って何かもめているようだな、聞いてくるか」カイはそれが52号との再会だということを知るよしも無い。人気blogランキングへ
2006.03.17
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マリアとカイは、お互いよそよそしくしながら、52号が向かった場所へ歩いていった。「ここには理想的な空間はあるか?」そう思いを抱きなから。派閥の門にたどり着くと、何やら様子がおかしい。人はいるのに静まりかえっている、何かに怯えているように顔を歪ませ、背筋もすぼめた状態で奥の方向を見ているようだ。「いったい何が起こってるんだ?」「何だか嫌な予感がする」お互い心でそうつぶやきながら、ゆっくりと中へ入って行った。そして何事もなかったように町を歩き、三人のグループのいる脇に入って様子を伺った。人々の視線はみんな一つの場所を指していた。たどって見てみると、一人の男性を10人位のグループが囲んでいた。「なんだ、ここはいじめがあるのか?」カイはゆっくりそちらに向かっていこうとしたら、三人のうちの一人が話しかけてきた。「あんたたち、ここの人じゃないね」(まずい、何でわかったんだろう、記憶消しているのに?)そう思ったカイは、その場から逃げよう、としたら「待ちなよ、わたしらは何もしない、あんたたちが何しにきたか察している、彼を救いに来たんだろ?」彼らはなぜかマリアとカイが来るのを予測していて、しかも目的まで知っている。これは事件だ。あの男を救いに来たと言っていたが、それがどんな意味があるのか記憶を置いてきたマリアとカイにとって疑問が増える一方だった。これが"52号"からの唯一のメッセージだとはすぐに気づくはずがなかった。人気blogランキングへ
2006.03.16
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しばらくして、改めて現状を確認する二人。現時点のマシンは、52号が手を加えていない更新されていないバグつきのものだとすればちょっとした細工が必要だとマリアは主張している。「そうねぇ、ここには更新ソフトも、バグ対策ソフトも入っていない、だとすれば、記憶を吸収するソフト自体に細工を施すしかないってことか」この手の問題にやけに詳しそうに、マリアがモニターを見つめて言った。「何か、暗号やら、IDやらを入れるんじゃないのか?」素人っぽい質問をするカイに対して、マリアは、ふと思いついたように応えた。「このマシンのプログラムに合い言葉のような意味を持つ単語を入力してみる、例えば[coffee]という要素を吹き込んでみるとか」コーヒーで回復するってこと?信じがたい話だが、かなりの真剣な顔をしていた。「これってまじよ、そんな変な顔して見ないでよ」「そりゃ見るよ、突拍子もなく[コーヒー]なんて。」すると彼女はもっと信じがたいことを発言した。「これは必ず効果を出すわよ、そのうち、その時になったらわかるわ」「え!なんて冒険家なんだ、キミって奴は」「やってみなきゃわからないじゃない、でもこの単語には、今の私たちにとっては、ちゃんとそうなるしかない理由があるの」マリアはパソコンを巧みに使いこなし、ソフトに[coffee]という要素を組み込んだ。「私が考えたんだから、私から行くわよ。」「わ、わかった、すぐ準備をしよう」いつのまにか、彼女のいいなりになっていた。しかし、彼女のとっている行動は目を見張るものがあり自分がやってきたこと以上に匠な動きと思いつきがいい結果を生み出すにちがいないと確信させられるものだった。そして、自らヘッドセットをかぶり、「じゃあ、私からいくわよ、キーお願いね。」「ああ、わかった、絶対にその時が来るんだろうな」念を押したが、即答で、「必ず気づいた時にはそのようになってるから、じゃ、ついてきてよ。」そこまで言うんじゃ信じるしかなかった。そしてEnterを押した。ここに来て二日、三日経っただろうか、季節も日付も解らないこの世界に全ての身をまかせると言ったところか。自分もヘッドセットをかぶりながら、覚悟を決意するかのようにそうつぶやき、まもなく消える記憶でEnterキーを押した。人気blogランキングへ
2006.03.15
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コーヒーブレイクも一時の記憶に過ぎないが、人間にとってとても大事な事だ、心のリセットとなるからだ。マリアは荒れ気味だったカイを救った、小さな事でも、少ない言葉さえも壮大な力を発揮することさえある。現代の言葉は、略語やら流行語やらで変化してきたと同時に、会話をかわす言葉が減ったように思う。いくら流行だろうが略語が世間に広まったとしても、心が入っているかどうかは疑問だ。ただ並べ立てればいいってものじゃない。マリアとカイのような状況に陥った時の心境から見れば「ありがたい」と言いたくなるだろう。現代には芯からそういう心境になりえないから、うまく言えないとか、今言おうと思ったとか、外面ばかり先行する。そんな人間に誰がしたのか?そんな事柄の巣窟からリセットされた世界から新たな世界と希望を求めて、二人はいよいよ作戦に出る。「さて、どっちが行く?」痛ましいマシンを見て、カイは「こいつは危険だし、52号を知っているのも俺だ。だから俺が行く。」するとマリアは、「記憶を消去したうえに、彼を捜す記憶なんて無いに等しいよ!」人気blogランキングへ
2006.03.14
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気が立ってしまった自分に、マリアはしばらくその場を去った。気を遣ってくれたのだろうか?「52号だって、ちゃんと計算した上で乗り込んだはずだ、でも、派閥の世界に飲まれるってどういう状況なのだろう?」まだ頭の中で引きずっていたところへ、彼女が戻ってきた。「どう?こういうときにはコーヒーでも?あっちのテントから少し持ってきたの。」ありがたい、と心から思ったのは何年ぶりだろう。内面、意地を張りながら、「ありがと」コーヒーブレイクとはまさにこれだった。もうこんな時は来ないかと思ったくらいだ。「考えてみれば、俺たちはなんらかの理由でリセットされた世界から送られてきた、派遣されたかどうかはわからないけど、これからの未来にかかっているのは間違いないんだよな。」カイの口から、冷静になった気持ちが伝わってくる。「そうね、救世主って言ったって、だれにも気が付かないけどなんだかかっこいいじゃない。」「あー、こんな自分にいい世界ってできるのかな?」背伸びして言ったカイの言葉に、マリアは、「自分にいい世界かぁ、いいね、余計なこと考えなくて済みそうだし。」いろいろ話がはずんできたところで、マリアが真面目な顔で切り出した。「ねぇ、洗脳されるってどんな具合の世界かな?」「そりゃ決まってるだろ、なんの変哲もない世界さ」「なんの・・それって、ごく自然にってことかな?」「おれだったら洗脳されちゃうだろうな。ふつうが一番だもん。」ふつうが普通ではなくなる、だからリセットされたんだと確信していた二人にとって、「自然」「平凡」それが「ふつうに過ごせる」これが当たり前すぎた時には危険が迫っているという警告だった。改めて思い知らされた二人は、コーヒーブレイクを後にした。二人にとって、この一時の休息が後になって重要なことになるのだ。人気blogランキングへ
2006.03.13
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52号は帰って来ない?信じがたいことだが、彼女が偽る理由もないだろう。「弱点ってなんだよ?」「この装置だとだいたい2年前にセットされたものだから、あるバグが発見されたの、免疫不良ってやつ。これが欠乏した状態で記憶をダウンロードすると与えられた記憶しか認識できずに、自分でなんかしようとしても覚えられなくなるの。」難しいことを言っているがそれは自分自身で記憶を学習する能力がないことが言いたいようだ。「じゃ、このマシンじゃ駄目なわけ?」「ソフトがあればバグは解消されるわ、でもソフト持ってないし、ある場所もわかってないの」自分は、どこか寂しい顔をしていた52号のことを考えていた。どうにかならないのかと。「そういえばあなたの名前聞いてなかったわね。」「あー、そうだったな、俺はカイっていうんだ、マリアさん。」「そう、じゃ、カイさん、あなたが今思っている事当てようか?パートナーを助けようって、真面目に考えてるんじゃない?」「当たり前だろ、君の言っていることがわけ解らないんだよ」すると、重々しい口調で、「だから彼、集落に洗脳されてるんじゃないかな。」まさかそんなことはないだろうと自分に言い聞かせた。人気blogランキングへ
2006.03.10
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