里山暮らし、ときどきヨーロッパ・ロングステイ
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2009年 日本×イタリア文化交流会の展示 伝統の「折形」制作:中川璃々今夜の朝日新聞夕刊にちょっと嬉しいニュースがありました。【世界の伝統文化などを保護するユネスコの無形文化遺産に、日本が推薦した伝統的な手すき和紙の技術が登録される見通しになりました。ユネスコの無形文化遺産に登録される見通しになったのは、「和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術」で、手すき和紙では、2009年に「石州半紙(せきしゅうばんし)」(島根県浜田市)が無形文化遺産になっていますが、それに「本美濃紙(ほんみのし)」(岐阜県美濃市)と「細川紙(ほそかわし)」(埼玉県小川町、東秩父村)も加えることを目指していたものです。日本の和紙作りの技術を世界により強くアピールしようと、去年、3件をまとめて新たに推薦していました。その結果、事前審査を行うユネスコの補助機関は日本時間の28日未明、「『こうぞ』の栽培を促進したり手すきの体験活動を行ったりするなど、世代を超えて技術が継承されている」として登録がふさわしいと勧告しました。文化庁によりますと、登録がふさわしいという勧告が覆された例はないということで、来月パリで開かれる政府間委員会で正式に登録が決まる見込みです。地元では、日本文化の海外への発信強化や地域の活性化、伝統技術の継承に弾みがつくと期待している。】とのことです。和紙に限らず、紙なら何でも好きというリミンにとっては、手漉の技術を継承してくれる若い人が紙に目を向けてくれたらいいな〜と願っています。2009年 日本×イタリア文化交流会の展示 伝統の「折形」制作:中川璃々という訳で、紙に因んだりり・エッセイをひとつお届けします。2010年の作品です。「紙が好き。」 昔から「紙」が好きでたまらない。紙そのものも無論だが手帳、栞といった小物や、便箋、封筒、切手など手紙に関連する紙類も好きだ。何の変哲もない大きな白い紙もいい。紙を眺めたり触ったりしているだけで幸せな気持ちになる。集めたこれら紙製品を取り出してみては、誰に贈ろうかと、あの人、この人の顔を思い浮かべつつ、あれこれ思案する時間がまたいい。今は、お礼状でもメールですませるのが普通になって、スピードアップはしたものの、紙を選んだり、季節や色を考えたりする余裕が無くなった。しかし、この思案の時間は始まりを待つ間合いのようなもので、実は大切な間だったと思う。手間を省いて紙の出番が少なくなった分、相手を思いやる心情も少しばかり薄れてしまったような気がする。出番は減ったものの、旅に出るとそこの土地の「紙」が目について、それが手漉きであるとか、熟練した職人の手刷りであったりするとどうにも欲しくて買わずにはいられない。本物はそれなりに金額も張り、悩んだあげく買ったはいいが大判紙はスーツケースに入らない。巻いても持ち歩きに難儀して、入れるための筒まで買うことなり、あげく荷物をひとつ増やすことになる。和紙をはじめ、韓紙、イタリアのマーブル紙、江戸千代紙とこれまで集めた紙も種々様々だが、この頃はとくに楮や雁皮など天然繊維100%の日本の和紙に魅かれる。植物なので呼吸する空気の気配を感じるし、最後は土に帰るとおもうと心が和む。日本で和紙が使われ始めた頃、西欧では羊皮紙やパピルスと呼ぶ草の茎で作ったものを使い、中国では木の皮や竹などを利用していたそうだ。今はパルプで作る紙がほとんどだが、「流し漉き」の手法で作る日本の紙は世界でも最高の素材だ。人の手の温もりを感じる紙であるが一度折ったらやり直しがきかない真剣勝負。それだけに本物の紙にはこちらの心が試される。かつて、夫と二人スペイン移住を本気で考えていた頃、私は会社勤めをしながら移住の準備を着々と進めていた。そのうち「暮らし」ならば、ただヨーロッパ文化に驚嘆しているだけではダメだ。何でもいいから日本独自のものを自分なりに語ったり、紹介したりするのでなければ、その場所にも やがては飽きてしまうだろうと切実に思い始めた。しかし「日本独自のもの」とひと口にいってもその範囲は広く、私でも出来ること、習得の費用があまりかからず、道具類も持ち運びやすいものと考えていくと、本来、紙が好きなのでやはり「折り紙」にしようと決めた。 まずは通信教育による「折り紙」の勉強からスタートしたのだが、これが意外にも遊びと簡単に片付けられない奥が深い世界であったのに驚いた。その後、千代紙とは違う日本の色を求めて専門店や美術館を見て回るうち、和紙にはもともと「格」や「位」があり、目的応じて使い分ける「決まり」があることを知り、それら歴史への興味が、私を「折形」(オリガタ)の世界に誘ったといえる。以来、和紙を折りあげることによって生まれる静謐な空間と白い短形の紙が内包する無限の可能性に魅せられている。 日本には古来より、自然を敬い、人との調和や関係を大事にする精神を重じ、四季の行事など折りにふれては、大切な人にお金や物を贈る伝統があったという。贈る品物は公家社会では白い絹の布に、武家は白い紙に包んだ。今でいうラッピングの始まりだが、階級社会のコミュニケーション手法であったため、贈る相手の位に応じて和紙の「格」の使い分けや「形」は明確に定められ、「折形」の手本は武家社会において家から家へと口頭伝承で伝えられた門外不出の「礼法」であったそうだ。 そのため「折形礼法」というのが正式名称だが、贈る心を和紙という形に託して折り包む‥「心には姿がある」として、手を洗い、真っ白な紙にむかって姿勢を正し、相手のことを想いながら「折る」「包む」この過程こそが「美」だとする考え方は、日本ならではの紙の文化だと思う。 そして‥月日は流れ、結局、私と夫はスペインに移住することなく現在に至っており、私の「紙の世界」もそのままになっていたが、2009年、スローフード秦野使節団としてイタリアのウンブリア州に出向いた際、日本とイタリア文化交流の催しで、これまで作りためた作品を展示する機会に恵まれた。ヨーロッパの人に日本の紙を紹介する良い機会でもあったので、白や生成りの和紙を用いた伝統的な「折形」の他にも、和名で表わす色紙で作るモダンな「折り紙」も紹介した。新たに作った作品も現代の暮らしの中で使用できるものを心がけた。 そんなわけで紙に対する長年の想いが思いがけず陽の目を見ることになり、紙を愛する私にとっては面映ゆくもあり嬉しくもあった出来事である。尚、現在、世界中で「ORIGAMI」と呼ばれる折り紙は、この「折形礼法」から遊戯として枝分かれして発展したものである。 ※2009年秋、東京・世田谷「ギャラリースペースS」で開催された 写真展「中川璃々のフォトエッセイ」で同時展示した伝統の「折形」
2014年10月28日
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