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カテゴリ: 白銀の炎
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 体中が痛い。でも、診療所には行けない。今はグレンに会いたくなかった。

グレンまで汚れてしまいそうだ。 カイルは湯を使い、体中を洗った。

医務室に何かあるだろう。痛む身体をなんとか動かして、カイルは自分で処置をした。

自室で休んでいれば、きっとよくなる。カイルは布団に包まり、眠ろうとした。

今は何も考えずに、眠ろう。


 ヨギは沈鬱な顔で考えていた。いったい自分は何をしているのか。

カイルのことを抱いて、どうなると言うのだろう。カイルに抵抗されたことは、一度もなかった。

しかし今日はあのような荒々しいやり方で犯してしまった。もうこんなことは止めにしよう。




そういえば、あの赤毛。グレンのことをふと思い返した。紅い男……グレン。

グランディールで出会ったときのことを、ヨギは思い返す。

飄々としてはいたが、相当な使い手だと感じた。敵には回したくないと。

剣をあわせれば、間違いなく自分の命はないと思った。

それが今では、シフィルのところで見習い医師か。ヨギは遠い目をして思った。

紅茶の缶を棚から取り出し、ヨギは部屋を出た。


「カイル」

 カイルの自室に入ってきたヨギは、カイルのことをざっと見た。

カイルは怯えたような顔をして、ヨギのことを見ていた。当然だろうなと、ヨギは思った。

「……何もしない。身体は、大丈夫か」

 大丈夫であるはずが無いのだが、ヨギは聞いた。カイルは身体を起こし、頷く。



「すまなかった。わたしはどうかしていた……」

 詫びるヨギのことを、カイルはぼんやりした顔で見ていた。

「痛まないか」

「はい」

 自分の問いに、ただ短く肯定の言葉だけの返事を繰り返すカイルが痛ましく思えた。



「シフィルのところへ行って、診てもらうといい。折れているかもしれない」

「いえ……そのような感覚はありません。問題、ありません」

 ヨギは眉根を寄せて、カイルを見た。折れていないのならば、良いのだが。

ヨギは表情を和らげて、カイルに言った。

「シフィルの処の赤毛が好きだといっていた。持って行ってやるといい」

 ヨギは紅茶の缶を出して、カイルの机に置いた。

「グレンに……?」

「そうだ、グレンに」

 言葉少なく言うヨギを、カイルは不思議そうに見ていた。


 グレンは父上を知っているのだろうか。カイルは考えていた。母上のことは知っていた。

父上もグレンを知っているようだ。何故だろう。解からないことばかりだ。

 わたしは何も知らない。父上のことも、グレンのことも、母上のことも――リゲンのことも。

知ろうとしても、誰も教えてはくれない。


「……渡しておきます。申し訳ありません」

 詫びる言葉を言って、カイルは茶の缶をしまった。自分は何故、謝ってしまうのだろう。


 どうして自分はこうなのだろう。

ヨギもカイルも同じことを考えていた。自分が、嫌になると。


 カイルには、グレンがとても眩しく思えた。

自分のように、こんなことを思ったことは無いだろう。

きっといつだって、彼は眩しく輝いていたのだと思う。


 自分が嫌になるなんていうことは、彼にはきっと、無い。

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最終更新日  2010.01.07 09:44:55
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