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2010.01.11
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カテゴリ: 白銀の炎
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 朝日が昇る。鳥のさえずりでグレンは目を覚ました。ふと外を見る。冷えるけれど、雪は無い。

視線を移すと、ベッドサイドに見慣れない花が瓶に活けられ、くたりとしている。

グレンはぼんやりした頭で考える。何だろう、これは。

 シフィルが置いたのだろうが、それにしても。

「何だってこんなくたびれた花、置いてあるんだ」 


 シフィルが薬を持って、グレンの元に来る。

「これ、何」

 花を指して、グレンは尋ねる。



 グレンは薄く笑った。「……変な奴」

「庶務を済ませてから来たんだそうだよ。きみのことを心配なさっていたよ」

 薬を調合しながらシフィルは言った。

「具合がよくなったのなら、城に行って礼でも告げてきてはどうだ」

「気が進まない」

 グレンは顔をしかめて答えた。現在友好条約を結び、戦時協定も結んでいるとはいえ、

グランディールはかつてカルセイグに攻め込み、結果的にリゲンを奪った国だ。

国交は無いに等しい。当時の確執が消えたのかどうかはグレンには解からない。

ただ、リゲンのことは今でもじゅうぶんに尾を引いていそうだ、ということが、

カイルの話から解かるくらいだ。

「カイル様もそうそう城を空けるわけには行かないだろう」



「きみに会いたがっていたよ」

「……この国の情勢は、どうなってる」

 薬をひく音が静かに響いた。静かだ。気が重くなる。 グレンはそれを打ち消すように言った。

「それも探ってみればいい」

「けしかけてどうするんだよ」



「きみが暇そうにしているからね。医学書を読むくらいに」

「……なんで」

「位置が動いているから解かるよ」

「勝手にさわって悪かったな」

 グレンは気まずい気分で、素直にわびた。だがシフィルは言う。

「結構なことだと思うよ。優秀な助手は欲しいところだしね」

「医者になる気はない。苦手だ」

 うんざりした様子でグレンは言う。

「初耳だな。でも、助手が欲しいのは本心だよ。城の医務室にも、誰もいないしね。

わたしも薬の補充程度のことしか、してはいないし」

「怪我人だらけだろうが。城は」

「そうでもないよ。怪我をするようなことはしていないようだから」

 まあ、城下の町にも医者はいるしね。シフィルは言う。グレンは呆れたように言った。

「平和なことだな」

「そうとも言い切れないようだけどね」

「……何かあるのか」

「だから、見てくればいいと言っているんだよ」

 海を越えた様々な国で戦乱が続いていることを、シフィルは知っている。

戦を放棄したこの国で、することがたいして無くなって以来、

シフィルは各国に足を伸ばして、戦乱を見聞きした。

 領土拡張のため、良質の資源を得る為、揺れ動く時代の中で、この国は確実に取り残されている。
カルセイグの行く末をシフィルは危惧していた。

「他国へ少し足を伸ばせば、きみの噂はいくらでも、嫌でも耳に入る。

きみはもう少し、きみらしく生きてもいいと思うがね」

「俺らしく?」

「この国は、平和だからね」

 シフィルは目を閉じた。

「七年前に、考えるべきだったのだとわたしは思うよ。――この国が侵略されかけたときに」

「……グランディールに、な」

シフィルがあえて言わなかった国の名を、グレンは口にした。

シフィルは目を閉じたまま、考えて言う。

「戦時協定を結んでいたところで、グランディールは遠い」

「戦乱が起こると思うのか」

 グレンは身体を起こし、身構えるように言った。

「わたしはそう思うね。近いうちに、必ず。この国は軍事を縮小するべきではなかった」

 シフィルは眉間にしわを寄せて言い、再び薬を挽きはじめた。

「行くのなら、武器は置いていきなさい。物騒だからね」

「……どっちなんだよ」

 危ないのか、危なくないのか。なんにせよ武器はもう片付けてしまってある。

もう装備することもないだろう。シフィルは無言で薬を挽き続けている。

グレンが何か言ってもまた、見て来ればいいという答えが返ってきそうだ。

グレンは大きく息をはいた。

*****



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最終更新日  2010.01.11 06:07:15
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