やさぐれていますが、なにか?

やさぐれていますが、なにか?

PR

×

プロフィール

777・にー

777・にー

カレンダー

バックナンバー

2026.06
2026.05
2026.04
2026.03
2026.02
2010.01.16
XML
カテゴリ: 白銀の炎
*****

 ……苦しい……痛い……
 …………嫌だ……
 ……離せ…………

「…………夢」
 グレンは身を起こし、大きく息を吐く。胸が苦しい。窓を叩く雨音が聞こえる。呼吸するたびに嫌な音がした。

 それに混ざって、玄関の戸を叩く音が聞こえる。グレンは重い体を起こし、壁伝いに歩いた。
「……カイル」
 玄関は開いていた。グレンが施錠を忘たのだろう、カイルはすでに所内へ入っていた。


「グレン! 大丈夫か」
 グレンは答えようとしたが、舌がうまく回らない。頭が酷く重くて、目の前が一瞬、真っ白に飛んだ。

 ふらつくグレンをカイルが支える。
「……悪い」
「どうしたのだ!! シフィルは!? いないのか!!」
「何しに……」
「昼のことが気になって……それに雨が」
 以前、雨の日に寝込んでいたから、心配になって、と言いかけたカイルに、グレンは言う。
「しんぱい……して」
 言葉が途切れ、グレンを支えるカイルの腕に、グレンの重みがかかる。
「グレン!?」



 汗に濡れたグレンの衣服はすっかり冷たくなっている。カイルは着替えを探し、たんすの引き出しをひっくり返した。それらしいものが見つかり、今度はタオルを求めて再びそこら中をあさる。

 しばらくして、以前シフィルが治療室の棚から取り出していたことに思い当たるまでに、部屋の中は散乱したものに埋められていた。

 カイルはグレンの服を脱がせ、汗をぬぐった。そして、グレンの腰に色彩の美しい紋様が入っているのを見る。きれいだな、とカイルは思った。グレンの国の風習だろうか。
着替えさせて、そこでふと思いつく。脱がせた着物は洗った方がいいのではないか?

「げほ……」

「……? ああ」
 落ちた布団の上に、カイルが眠っていた。しばらくぼんやりと見ていると、カイルはがばっと身を起こした。
「すまない!!」
「いや。布団くれ」
 カイルは慌ててそこを退き、布団をグレンにかける。
「……ずっと、付き添っていたのか?」
「すまない……眠るつもりはなかったのだが」
 恐縮した様子で言うカイル。
「世話、かけたな」
「いい」
 グレンが身を起こし、あたりを見回すと、奇妙な光景が目に飛び込んでくる。部屋中に様々なものが無造作に散らかり、その中でひときわ目立っているもの。

 なんでたらいがこんな所にあるんだ。
「あれ、何?」
 グレンが言うとカイルは振り返り、きょとんとした顔で答えた。
「盥だが」
「そうだな。それで、そのたらいが何だってここに」
 言いながら、なんて馬鹿馬鹿しい会話なんだと呆れるグレンとは対象的に、カイルは真面目に答えた。
「おまえの着ていた服を洗ってみたのだが……吊るすと水が落ちてきて仕方がないのだ」
「そうか。とりあえず、部屋を片付けてもらえるか。服は絞ってから、外に吊るしたほうがいい」
「夕べは雨が」
「それは俺も知ってる。今は晴れてるだろう? だから外に」
 カイルが妙に手馴れた手つきで散らかした物を片付けていくのを、グレンは少し疲れたような顔で眺めていた。


 グレンは外に出て行ったカイルを待つ間、脇に置いてある瓶の花を見つめていた。ずいぶん元気になっている。土を入れたのは誰なのだろうかと、ぼんやり考えた。
 カイルが部屋に戻り、尋ねた。
「これでいいだろうか」
「ありがとう。充分」
 カイルに答えて移した視線を、花に戻す。
「これ、おまえが持ってきたんだってな」
「あ、ああ」
「珍しいな。根ごと引き抜いてくるなんて」
「……切るのがためらわれて、それで、昨日、土を」
 やっぱりこいつか。しどろもどろになっているカイルが面白い。グレンは微笑んだ。
「礼を、言ってないな」
「いい」
「ありがとうな」
「……すまない」
 そう言ったカイルにグレンはやや呆れたように答えた。
「おまえ、すぐにそうやって謝るんだな。誰に対してもそうか」
「すまない」
 グレンはため息をついた。
「謝らなくていい」
「……すまない」
 謝るカイルに、グレンは笑って言った。
「あのな、俺が礼を言ってるのに、何でおまえが謝んなくちゃいけないんだよ」
「あ……そうか、そうだな」
 グレンはカイルと顔を見合わせて、笑った。

*****




にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010.01.19 07:34:58
コメント(3) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: