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「誰にも、わからなかったわ。なのにどうして――!」
「……ほら、私も芸術家だから」
 叫びだしそうなリオルの様子とは逆に、ティークは穏やかに答えた。言った彼の顔つきがあまりにも真面目で、真剣な様子だったので、リオルは思わず吹きだしてしまう。
「……あははっ、そうね。……それじゃあ、わたしのばっかり見てないで、あなたにも芸術披露してほしいな」
「うん」
 ティークはほほ笑んで、鞄から何かをとり出した。陽の光が反射して、よく見えない。けれど彼がそれを腕に抱えたとき、竪琴であることが見て取れた。よく使い込まれた、けれど美しく磨かれた、見事な銀色の竪琴。
 それにティークが指を触れる。二、三度軽くつまびいてみる。絃を調えているのだろう。
そして。

 その歌を、リオルは知らない。伝承歌ともちがう、素朴な歌。不思議な言葉。
 リオルには、こう聴こえた。



 受け入れることもまた強さだと
 わたしはそうなることは出来なかったからと

 友は言った
 強いものは強さを誇示しない
 強さを示すのは弱さの証明でしかない
 わたしは強くはなれなかったと

 友は言った
 小さな生き物にはその世界と生き方がある
 大きな生き物にはその世界と生き方がある
 小さなものに大きなものは その小ささゆえに見えないが
 大きなものにもまた 小さなものは見えない

 友は言った
 人の目に見えている色はすべて同じなのだろうか
 ほんとうは ひとりひとりに
 違う色が見えているのではないだろうか

 友は言った
 おまえはとても強い
 わたしはおまえには なれない

 けれど愛すべく友よ
 わたしもまた あなたには なれない

 ……友は言った
 住み慣れた場所を離れて
 一人で生きてみようと思う
 わたしはおまえのように 強くなれるだろうか
 おまえのように

 そして……友よ
 あなたはわたしのもとを離れる
 決して強くなどないわたしをおいて
 後を追うことも許さずに……


 風の流れさえ、変わったような気がした。大気が、ティークの声に共振しているかのように。リオルはその流れを、ただ感じていた。
ため息もつかずに。

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最終更新日  2010.01.23 18:27:41
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