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 風の流れさえ、変わったような気がした。大気が、ティークの声に共振しているかのように。リオルはその流れを、ただ感じていた。
 ため息もつかずに。

*****

「――――どうしたの」
 歌い終えたティークは、呆然とした表情のリオルに問いかける。
「……すごい」
「……?」
「……きれいで……なんか……なんていったらいいんだろう……すごい」
「……うん」

「……認めて、いるのね。自分の、才能……」
 リオルの声はかすれていた。ティークは瞬きして、尋ねる。
「なぜ?」
「自信が、あるからよ」
「じしん?」
「だって、すごいもの。すごいんだもの」
「……自信なんか、ないよ。必要、ない。歌っていたいから、詩人になったんだ」
 ティークはリオルにほほ笑んで言った。
「自信があるからよ。だからそんなふうに言えるのよ」
 リオルの声が震える。泣き出してしまいそうだ。
 ――――でも、泣かない。泣くもんか。

「……プリシラって、しってる?」
 尋ねるティークに、リオルはためらいがちに聞いた。
「複製画家の? ……最近、オリジナルをやり始めた……」
「その、オリジナルって、みたことある?」
「刷り物でなら、すこし」

 自分の絵と、プリシラの絵は似ているか……彼女はそう聞いた。
「……うん。似ているね」
 ティークは正直にそう答えた。リオルの目がかるく伏せられる。
「…………そう」
 リオルは呟くようにそれだけを言った。
「でも、私はあなたの絵のほうが、すきだよ」
「……ヘンになぐさめてくれなくたっていいわ。気休めにもならない」
「…………どうして、そうおもうの?」
 どうして、慰めだ……などと。ティークは悲しげな顔をして聞いた。リオルの瞳に怒りと悲しみがこもる。
「わたしの絵が、認められないからよ!」
 はき捨てるようにリオルは言った。ティークはそんな彼女を見て、目を伏せて語る。
「――――プリシラの絵は、抑圧されている」
「…………」
「複製画家として、成功して。でも複製画にどうしてもにじんでしまう個性を抑えられなくなって、それでオリジナルに転向したのだろうけど」
 彼はそこで言葉を切った。
「……けど、なに?」
 リオルは先をうながす。
「……痛々しい、絵だと、思うよ」
 リオルのことをまっすぐに見つめ、ティークは言った。

*****


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最終更新日  2010.01.24 07:29:12
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