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「一杯だけだよ、グレン」
 そういいながらシフィルはグラスに酒を注ぐ。
「おまえは?」
 グレンが言うと、苦笑しながらシフィルは言った。
「私はしばらく、飲みたくない気分だよ」
 シイナの分を注ごうとすると、シイナは瓶ごとシフィルの手からそれを奪い、瓶を直接口にあてた。
「シイナ……行儀がなってないよ」
 グラスがあるのにとぼやくシフィルに構わず、喉を鳴らしながらその中身を飲む。

「すまないね。お願いするよ……でも寝るのはやめて欲しいな。うるさいよ、シイナは」
「あん?」
「おまえもどこか、悪いのではないかな。あの鼾」
「いびきぐれえで、どっか悪いなんてこたあ、ねえだろうよ」
 シイナは瓶を置いて、グレンの方を見た。
「ぜんぜん飲んでねえな。おまえ」
「……おまえ見てるだけで、腹いっぱい」
 そう言ってグレンはグラスに口をつける。ちびりちびりと飲んでいるグレンを、シイナは不思議そうに見た。
「そんな飲み方、昔はおまえ、してなかったじゃねえか」
「昔と今と、俺は違う。ほどほどにして置くのがいいんだよ」
 なあ、シフィル? とグレンが笑みを浮かべて言うと、シフィルは髪をかき上げて苦笑した。

「でもよう。ヨギはおまえの飲みっぷりがいいとか言ってたぞ?」
 ああ、あの時。グレンは思い出す。
「俺は、茶の方が好きなんだよ」
「あ――すまないね。湯を持ってくるよ」
 シフィルが思い出したように席を立った。

 シイナがグレンに尋ねる。
「まあ……な」
 グレンはグラスに残った酒を飲み干した。
「シフィルがいないうちに、もう一杯どうだ」
 シイナが笑いながら言う。
 グレンも笑いながら、空のグラスを差し出した。グラスになみなみと酒が注がれる。
「なんか……平和だな」
 グレンはゆっくりと酒を飲みながらつぶやいた。
「いいことじゃねえか……」
「……俺がここにいると、そうじゃなくなる気がする」
 シイナはあきれたように、グレンの肩を軽くたたく。
「思い込みすぎだ、おめえの」
「……そうだといいんだけどな」
 グレンはふっと笑って、酒を飲んだ。

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最終更新日  2010.02.21 11:05:11
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