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カテゴリ: 【滝が~】 関連
*****

 ハルの家は、森のなかの、けっこう奥にある。ぼくたちは、ハルの家に続く道を、いそぎ足で歩いていった。道は川沿いにつくられていて、人や動物たちは、水辺で魚を獲ったりして生活している。

 森は生命であふれてはいたけれど、なんだか少しずつ、病んできているように思う。いや……確かに、一日いちにち、蝕まれていっている。

「なあ……あれ……」
 ハルが急に足を止め、川面を見ながら言った。岩で流れが途切れ、よどんだそこには、数匹の魚が白い腹を見せて浮いていた。
「酷い……」
 この川が濁りきって、底がぜんぜん見えなくなるのも、ここの生命がなくなってしまうのも、時間の問題なのかもしれない。
「やっぱ……うちらと奴らは、渡り合えねえや」
 ぼくは川の中をじっと眺めていた。いつかきっと、なにもかもが失われていく……。

 ハルは、黙って川を眺めたままのぼくに話しかけてきた。ぼくはハルのほうを見た。
「奴らがなに言おうと、気になんかするなよ」
「うん」
「……俺は、おまえの髪、すきだぞ。なんか、空をそのまま持ってきたみたいで」
 空を見上げて、ハルはそう言った。
「ありがとう……」
 ぼくが言うと、ハルは照れたように笑って、ぼくの肩に腕をまわして来た。
 急に体重がかけられて、足元をふらつかせてしまう。
「わわっ」
 そんなぼくを笑って見ながら、ハルは言った。
「はやく行こうぜ。ジィさんが待ってる」



 誰……? 何を言っているの?
 ───ねら……じゃ――
 誰……何がいいたいの……?


「───キ……おいっ、タキッ」

 ハルはぼくの両肩をつかんでいた。
「どうしたんだよ、ぼーっとしちまって……」
「ん……」
 おかしいな……ぼく、なにしてたんだっけ……。
「何が書いてあったんだ、それ」
 ここは……ぼくの、家?
 ……へんだ。やっぱりおかしい。だって、さっきまでぼくたちは……。
「ハル…… 『それ』 って……なに?」
「はァ? 何言ってんだよ。おまえが言ったんじゃないか。何かが刻んであるって」
 ハルは呆れたような顔をして、ぼくのことを見ている。
 なんのことなのか、ぼくにはわけがわからなかった。
「……なに?」
「おい、何ボケてんだよ。竪琴に───」
 竪琴に……? 刻んで……?
 わかん……な……。


「──────逃げろ!!」
「だれっ!!」
 誰かの声が聞こえる。かんちがいなんかじゃない。
「タキ───逃げろっ!!」
 ハル? え……じゃあ……さっきの……。
「タキッッ!!」
 ……ちょっと……ハル? なに言って……。
「ハル? なんなの、どうしたの!? ぼく……なにがなんだか……」
「……説明してるような余裕はねぇんだ……ッ痛ぅ……」
 わけがわからない。いったいどうしたっていうんだ!?
 だって、さっきまでハルはここにいて、普通に話ししてて……。
 それにハル……ケガ、して……?
「は……やく」
「ハル、どうしたの、その傷……!! 大丈夫なの!?」
 ケガをしているのに、ハルは笑ってぼくに言った。
「死にゃあしねえよ……んなことより……ほらっ」
「ハル……」
「竪琴。もって来てやったぜ。それ持って、はやく……」
 渡された竪琴を受け取って、ぼくは言葉を失った。だって……村が、村が───。
「……火を放ちやがったか……くそっ!!」
 空が真っ赤だ。こんなことって……。
「タキ、よく聞け……」
 ぼくはハルの様子が気になって仕方がなかった。おろおろしながら、ハルの話を聞こうとした。
「……は……じゃ、ない」
「……え?」
「…………は、違うんだ」
 何を言っているのかよく聞き取れない。ハルは何かを告げると、にっこりと笑った。
 そして空に向かって、両手をさしのべる。雨が降ってきた。
 ぼくはもう、なにがなんだかわからない。
 ハルはぼくのことを置いて、村のほうへ駆け出そうとした。
「ハル!! どこいくの? そんな傷でっ!」
「……村の火を消しに行く……おまえは早く逃げろ! いいなっ!!」

 どうしよう、ハルがいってしまう……ケガ、してるのに……。
 村が……燃えてる……火を消さなきゃ……!!
 戻らなくちゃ……戻りたいのに……ぜんぜん動けない……。
 体が……いうこと……きかない!!

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最終更新日  2010.04.22 09:15:44
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