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カテゴリ: 【滝が~】 関連
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「───いったぁいっ! 手、切っちゃったよお。ほらっ」
 散々な部屋を二人が片付けていると、サラが突然大声をあげた。
「バカヤロ……って、おいっっ!!」
 シフがサラを見ると、右手をあげていて、傷口をシフに向けていた。
 声が決して大袈裟ではないくらいの、大きな傷。
 ザックリバックリという感じで、血がボタボターッと。

「え~ん……救急箱どこだったかなあ……?」
「大丈夫かよ……ったくおめえは……」

 ……こういうのって、抜くときの方がひどいんじゃなかったっけ……。
「ねえ、痛いよ?」
「とうぜんだッッ! だいたいどうやったら、そんなに派手にガラスが刺さるんだよ」
「だって……手をついたら、そこにこれがあったんだもん」
 サラは右腕を大きく上下に振った。
「わっっっ! ばかっ! よせ!!」
 そんなことしたら傷口が広がるだろうが───そう思ってシフはその腕を強く握った。案の定、広がった傷口からは、大量の血が流れていた。シフはハンカチを取り出し、サラの手首を強く結ぶ。
「ああーっ! 救急箱はどこだぁっ!」

 シフとサラはきょろきょろと部屋を見まわす。しかし、それらしいものは見当たらない。
「───あっ、思い出した! キッチンの棚の上っ!」
 サラが突然言った。それを聞いて、シフは下へ降りて行き、救急箱を探す。

 サラが上から声をかける。
「ああ、けど何か切るものないか?」
「あー、はさみなら小さい引き出しに入ってる。まんなかのだよ」
 引き出しを引く音と、戻す音、シフが階段を昇ってくる音がサラに聞こえた。
「手、出しな」

「痛っ」
 身を引こうとするサラの手首を、シフはがっちりと握り、口の中の血をちり紙に吐いて、薬を塗っていく。
「いたたたたっ、痛いってば!」
「──────我慢しな」
 シフは包帯の端を咥えながら、サラの細い腕に巻きつけていった。

「…………どうでもいいけど、なんでおまえの方が、俺ん家の物に詳しいんだ……」
 シフがそう言うと、サラはとぼけたように言った。
「まぁまぁまぁ、おいといて……それより……床……汚しちゃったね。ごめんね」
「そんなのはいいよ……べつに」
 溜め息をつきながらシフは言う。手首に刺さらなくて良かった。シフはもう一度、溜め息をついた。
「床は俺が掃除しておく。まだガラスもいっぱい落ちてるしな」

「……ねぇ」
「ん?」
「……タキ……さ」
 サラは少し言いにくそうに、言う。
「タキは、大丈夫だよ。下でぐっすり休んでる」
「……そうじゃなくてね」
「───?」
「タキね……記憶が……ないんじゃないかな……と、おもうの」
「──────自分のこと、しゃべらないもんな。普通、自分がどこから来たかぐらい、まっ先に言うよな……。なんか、精神的に、不安定な感じがするし」
 シフはそう言って、溜め息をついた。
「確かめなくても、いいよね」
「……いいと思うけど、別に。そうだったらそうだって、そのうち自分から、言ってくるだろうし」
 シフが言うと、サラは軽くほおづえをつきながら、シフのことを見た。
「……前から言おうと思ってたんだけど、わたし、その 『別に』 って、なんだかすきじゃないよ」
「なんで」
「うーん……なんていうか……冷たい感じがするもん」
「そうか?」
「そーよ」

 二人はそういって顔を見合わせて、微笑んだ。そして、ソファーの上で眠っているであろう、タキの顔を思い浮かべて、また微笑む。

 いろいろ、あったし……これからも、何かあるかもしれないけど。とりあえずしばらくは、退屈する心配は、無いよな。

 シフは夜空に浮かぶ爪月を見上げていた。いつまでも……いつまでも。


+++++ 第一章・了 +++++





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最終更新日  2010.05.14 09:46:23
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