山に捨てられそうになった家族の話



近くまで車で行ってロープウエイを使う。歩くところは少ないから子供連れでも充分行けるという。


ロープウエイを降りたら夫は自分のペースでドンドン行ってしまう。

こっちは子供づれだから足は遅い。

子供はあんまり歩きたがらないのをなだめたり、花や景色でごまかしたりして歩く。時には子供が「おしっこ」などといって立ち止まる事もある。

それなのに夫は振り返りもせず待っていることもせずドンドン先へ行く。

「足が遅すぎる」とブツブツ怒りながら。家族サービスなら子供に合わせてよ。1人くらいは手を引いてくれるとかおんぶしてくれるとかしてよ。

そう言いたかったが、夫とドンドン距離が空いていく。

分かれ道で迷ってはいけないと待っていてくれるのではという淡い期待も空しく待っていてはくれない。

道に迷ったらどうするつもり?初めてのところなのよ。

私は怒りで胸がいっぱいになった。

何とかロープウエイのところにたどり着いたがココでも夫の姿はない。先に乗って降りてしまったらしい。


ロープウエイを降りた駐車場で夫は車の中にいた。

帰りの車中は喧嘩になったのは言うまでもない。

十年以上経った今でも思い出すと腹が立つから時々夫に言う。「私達は山に捨てられたのよねえ」

夫はまたその話かと聞こえないふりをしているからまた余計腹が立ってくる

アンタ、謝らないからいつまでも話が続くのよ。今からでも謝れば?

© Rakuten Group, Inc.

Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: