その二 ゴンと花ちゃん




最近お母さんは病気がちで寝ています。今日も村でただ1人のお医者さんが花ちゃんの家に往診に来てくれました。


「先生、お母さんはいつ元気になるの?」
先生は困ったように首をかしげながら言いました。


「疲れがたまっているからゆっくり寝かせてあげなさい。花ちゃんがいい子にしていたらすぐによくなるよ」そういって花ちゃんの頭を軽くなぜました。

先生が帰って花ちゃんはお母さんの様子を見に行きました。
お母さんはよく眠っていました。


花ちゃんはお母さんを起こさないようにそっとドアを閉めて家の外に出ました。季節はもうすっかり春になっています。


「そうだ、お母さんが早くよくなるようにお花を摘みに行きましょう」
花ちゃんは村はずれまで1人でやってきました。

これ以上は1人で出かけたことはありません。村はずれの原っぱにはいつも花が咲いているのですが、誰かが摘んで言ったのかその日はほとんど花はありませんでした。


「どうしよう、お花が無いわ」
そこへ通りかかった野うさぎが花ちゃんにいいました。


「チョッと遠いけど向こうのあのお山の上に綺麗なお花畑があるよ。」
花ちゃんはウサギに教えられた道を1人で歩いていきました。


いっぱいいっぱい歩きました。花ちゃんの家や友達の家が段々遠くになってきます。でもお山は中々近くになりません。


花ちゃんは歩きつかれて木の下で座って少し休みました。花ちゃんはいつの間にかうとうと寝てしまいました。


目が覚めるとビックリ。大きな顔のクマさんが覗き込んでいたのです。
「きゃあ」


クマさんは「ゴメンゴメンびっくりさせちゃったね、ボクはゴンって言うんだ。どうしてこんなところに1人いるの?」


よく見るとクマさんは優しい目をしていてそんなに怖くは無さそうでした。
花ちゃんはわけを話しました。

「病気のお母さんにお花を摘みに来たの」
クマさんは「どこに摘みに行くの?」「お山の上のお花畑」


クマさんはチョッと腕を組んで考えました。
「あのお山は近くに見えるけどまだまだ遠いよ。よかったらボクがおんぶして連れてってあげようか?」


花ちゃんとクマのゴンは楽しく歌を歌いながら山道を登っていきました。
しばらくするとお花畑に着きました。

お花をいっぱい摘んだ花ちゃんはクマさんにお礼に花の冠を作ってあげました。


あたりは段々薄暗くなってきました。
「大変!早く帰らないとお母さんが心配するわ」


帰りもクマさんのおんぶで村の外れまで送ってもらいました。


「クマさん、ありがとう」「ボクも今日は楽しかったよ。花ちゃんまたね」
クマさんも手を振りながらお山に帰っていきました。


「遅くなっちゃったわ」花ちゃんは花束を抱えて走って帰りました。
お母さんが家の前で待っていました。


お母さんが手を広げた中へ飛び込んでいきました。とってもいい匂いがしました。花ちゃんはお母さんって良いなあと思いました。


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