頭書のタイトルで珍しいので買ってみました。実に驚いたのはこの時代に、かつてのようにSP盤のように、間を空けて録音してあり、わざわざSP盤の雰囲気を出していることでした。なにもそこまですることは無いと思ったのですが、かつての雰囲気にこだわったのでしょう。 今日はそのうちの Fritz Kreisler の Mendelssohn の Violin協奏曲ホ短調作品64を取り上げます。 彼は二回この曲を録音していますが、そのうちの前の録音で1926年 Berlin State Opera Orcestra, Leo Blech 指揮のものです。まずなぜこの録音なのかということですが、指揮者の違いを強調しています。しかし当時の風潮などから言って、ドイツ人とイギリス人の違いの方が大きかったのではないかと思います。なにしろドイツ万能の時代で、以前からドイツの物は何でも良いという傾向が強く、逆にイギリス物は録音に大差があっても良くないとするくせがありました。 Kreisler の音は、高音絃の音もかすかに入っていて見事ですが、なにしろ一世紀近く前の音ゆえ Maxim Vengerov の音と比べると大差があります。Medelssohn の曲の伴奏部分の音が Vengerov の方が煩く感じられるほどで、あまり入っていない感じなのです。第3楽章の火花が飛び散る感じのところも見事に入ってはいるのですが、やはり今の感じの方が実演に即しているといわざるをえません。全体に見事な演奏だとは思うのですが、やはり名前にこだわっているといわざるを得ないのが残念です。これはやはり「あらえびす」の時代にはあまり録音が少なくそれだけ選択の範囲が狭かったことにも関係があるかと思われます。