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桂 幹人/儲かるも儲からんもアンタ次第!02


日経ベンチャー2003年11月号

前回、売り上げを伸ばすには、「顧客支援業」という視点が欠かせない
ことを説明した。あなたの顧客もこの不況下で苦しんでいる。その人達
を助けてあげるには、何をずればいいのが?こうした発想の大切さは、
一般消費者を相手にする小売・サービス業でも同じことだ。

だが、自分自身が業績不振に苦しんでいるにもかかわらず、意識の切り
替えは難しいものだ。「うちの業界には特殊な事情があって……」と
言って、 私が提案する再建策をなかなか理解できない経営者も多い。

例えば、前回紹介した印刷会社の社長もそうだった。最終的には、
工務店に集客イベント込みのチラシを提案することで、売り上げを
2倍に増やしたが、社長は当初、「そんなことが、うまくいくはずが
ない」と言って、まるで話に乗ってこなかった。

「印刷業は注文が来るのを待つしかない」という業界の常識が染み付き、
自分から営業を掛けるのは無駄だと思い込んでいたのだ。私はこの社長
に、いくつかの業種で成果を上げている顧客支援の仕組みを話し、
約2ヵ月掛けて説得した。

頭から血を出すくらい考えろ

「自分達の業種や業態はこうなんや!」と決めつければ、同業他社と
同じことしかできない。デフレ下では、他社の顧客を奪うことで業績を
上げるしかないのだから、業界の常識にとらわれていては、ジリ貧から
抜け出すことは不可能だ。経営者は頭から血を出すくらい考え抜いて、
旧来の商習慣を打破しなければならない。

業界の常識や、旧来の商習慣を否定すると言っても、大それたことを
しろというわけしでない。例えば、ある地方の包装紙メーカーA杜が
良い例だ。包装紙メーカーは、専門店など既存の取引先からの注文を
待つだけで、営業をかけたりはしないことが多い。のん気な話だか、
A社もこうした業界の常識を守ってジリ貧状態になっていた。

私は、A社の社長にデザイナーを紹介し、取引先の要望に応じて
ファッション性の高い包装紙を作れるようにした。その上で、「絶対に
売り上げがアップする包装紙を作ります」と書いたDMを500通送った。
「うちの包装紙を使えば、お客さんか恵んでくれますよ」とアピール
したのだ。たったそれだけのことだったが、新規の取引先を4件獲得し、
この会社の売上高は約30%も伸びた。

この成果は、私の予想通りのものだったが、この社長にとっては衝撃
だった。今では人が変わったようにトップセールスに励んでいる。

さて、もう一つ大切なのは、顧客に対しても固定観念を持たないことだ。

ある地方旅館、Bの経営者は、「顧客にプライバシーをお尋ねすること
は、失礼に当たる」と信じ込んでいた。そのため、二ーズを細かく
調べたことがないという。私はBの社長を説き伏せて、アンケート諷査
を実施してみた。すると、宿泊客のほとんどは、「料理+温泉」で満足
というのではなく、地方の静かな旅館に「癒し」を求めて来ていること
が分かった。お客の要望と違うところで勝負しようとしていたわけで、
「お笑い」みたいな話ですわ。

この旅館は従業員にアロマテラピーなどの研修を行い、「癒し」を売り
物にリニューアルを進めた。旅行代理店からの評判も上々で、業績も
前年同月比でプラスに転じている。廃業する旅館も多い中で、B旅館は
他社との明らかな違いを打ち出すことに成功した。

ゼロベースで見直せ!

このように、染み付いた業界の常識や固定観念を打破するためには、
どうすればいいのか。

私は経営者に「毎朝、頭の中で自分の会社を潰してみること」を勧め
たい。もし、商売をゼロから始めるとしたら、今と同じことをする
だろうかと考えてみるのだ。お客や取引先との関係は、工場は、店は
どうするだろうと、何度も繰り返しシミュレーションしてほしい。
これまでなら考え付かないようなアイデアが、浮かんでくるはずだ。

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「顧客支援業」に生まれ変わるための発想法
step1
○○メーカー、××の販売会社ではなく「顧客支援業」だと考える
     ▼ ▼ ▼
step2
現場に行って困っていることを探す
     ▼ ▼ ▼
step3
「業界の常識」や「旧来の商習慣」を否定してみる
     ▼ ▼ ▼
step4
「うちの顧客はこんな人達だ」という固定観念を疑ってみる
     ▼ ▼ ▼
step5
毎朝、頭の中で会社を潰してゼロベースで事業を見直す

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【やったら儲かる!?ニュービジネス】
『こころビジネス』
今や日本人全員がストレスに悩まされているのではないか、と思う
ほど、「癒し」をテーマにしたビジネスが花盛りだ。数年前までは
目にすることも稀だったクイックマッサージ店も、街中に溢れている。

今回紹介するニュービジネスは、身体を癒すマッサージ関連サービス
の次に来るであろう「こころビジネス」。それは、うつ病の予備軍
向けに癒しのスペースとカウンセリングを提供するというものだ。
アルファ波が測定できる機会を置いて、心理カウンセラーがアルファ波
の出し方を指導する。敷居の高い精神科クリニックを訪れる前に
利用する民間ヘルスケアセンターと位置付けている。

実はこのビジネスは、ある医療法人からの依頼を受けて、当社で試験的
にやってみたことがある。その時は、お客にアルファ波の測定器を
12万円で購入してもらい、セルフコントロールの方法を指導したのだ
が、十分採算に乗った。社会的にも意義のあるビジネスではないだろうか。

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かつら・みきと
1953年大阪府生まれ。87年日本アシストを設立し、社長に就任。
近著に「ドキュメント会社再生アンタ、覚悟はできてるか」
(共著・藤木美奈子氏、講談社)がある。
連絡先は06-6947-2751

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日経ベンチャー2003年11月号より

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