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桂 幹人/儲かるも儲からんもアンタ次第!04


日経ベンチャー2004年1月号

私は、不振企業の再建を引き受ける一方で、業績低迷に悩む経営者の
ための塾を主催している。入塾当初、経営者達の表情は一様に暗い。
中には、「明日にも自殺してしまうのではないか」と心配になる人も
いる。自信を喪失しているためだ。

入塾時には、まず経営目標を決めてもらう。何年後に売上高何億円を
上げたいのか、あるいは年収がいくら欲しいのか。「儲けたい」という
欲望は強いほど良い。それこそが商売人のエネルギーだ。

現状維持は経営者失格

しかし、最近の二代目経営者には、「何とか現状維持ができれば」と
考えている人が多い。一見、堅実に見えるが、私に言わせれば
「経営者失格」や。業績が上向きでなければ、従業員が将来に夢を
持つこともできない。そんな経営者でいいのだろうか!

話がやや横にそれたが、塾の期間は約3カ月。2~3週間に一度の
ペースで開催される。塾生が目標を決めたら、私はそれを達成する
ための選択肢をいくつか示し、売り上げ増加のためのプランを各自
実行してもらう。毎回、塾生は各プランの進捗状況を報告し、塾側が
次回への改善点を「宿題」としてアドバイスする。

塾で進捗状況を発表する時は、他の塾生から質問攻めに遭う。皆、
他人を批評するのはうまいようで、勢い舌鋒が鋭くなり、中には
涙ぐむ塾生さえいる。攻守入れ替えて批評し合うことで、自らの
経営者としての至らなさに気付き、お互いに成長する。
「経営者を再生する」という意味で、こうした過程は不可欠だ。

塾の活動については、いずれまた詳しく解説するが、今回は元塾生、
中商(大阪府熊取町)の二代目で、現在は営業部長の中島剛氏の事例
を紹介したい。中商は大阪府南部の住宅外溝工事の業者で、年商は
約4億円。この不況下でも数年間増収を続けていた。

年商30億円の道を示す

だが、その中島氏も私の塾を訪れる1年以上前から、将来への不安を

抱いていた。不安とは、住宅販売会社などの元請けから、「作業員貸し」
という形態の依頼が増えつつあったことだ。

これは、材料の仕入れは元請け側が行い、外溝工事業者は現場に作業員
を送り込むだけだから、利ざやは薄い。「何とか儲かる仕組みを作れ
ないか……」。中島氏がそう考えて、私の塾に参加したのは、2002年
の秋だった。

塾の初回で、私が中商の選択肢をいくつか示すと、中島氏は「建築家との
共同事業」という新規事業を立ち上げることを決めた。これは、建築家の
作品展形式のイベントを開催し、顧客と建築家をマッチングさせる仕組み。
顧客は気に入った建築家に設計を依頼し建設は中商が請け負う。

なぜ不況に喘ぐはずの住宅建設に参入するのか?と思われるかもしれない
が、私は住宅が売れなくなったとは決して思わない。問題は、顧客が満足
する商品を提供できていないことだ。最近増えている、「建築家と家を
建てたい」という顧客の視点に立って仕組みを考えれば、必ず売れる。
もっとも、これは住宅に限らず販売の基本だ。

中島氏はこの事業を「匠の森」と名付け、地元の建築家を電話帳で調べて
電話を掛け、短期間で建築家との協力関係を築いた。そして、1万5000
枚のイベント告知のチラシを従業員と一緒にまいたのだ。イベントには
10組の来場者があり、契約を3件も獲得できた。期間は2カ月強、事業に
投じた販促費用は全部で30万円い大成功と言えるだろう。

塾の全過程終了後、私は中島氏に、ある建築家の全国ネットワークを紹介し、
中商はデザイン住宅の建設事業を本格的に推進することになった。既に今期
の増収効果は2億円以上で、中商の今期の売上高は7億円を超えそうだ。
06年6月期の売上高15億円という目標も射程に入ってきた。

中島氏の将来の目標は「売上高30億円の会社」だそうだ。その夢がかなえ
られる日も、そう遠くはないだろう。


【中商】外溝工事、デザイン住宅建設<所在地;大阪府熊取町>
中島 剛 営業部長(次期社長)

『悩み』利ざやが薄い、何とか儲かる仕組みを作りたい・・・

2002年秋、入塾。売上高は年間4億円。外溝工事が主力
 ↓ ↓ ↓
アライアンス(提携)でデザイン住宅に進出
 ↓ ↓ ↓
2004年6月期 売上高=約7億円を見込む(成果が出た!)
 ↓ ↓ ↓
将来の目標 売上高=30億円(夢も視野に!)

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やったら儲かる!?ニュービジネス
【定額料金制のクリーニング】
全国に数万軒も存在するクリーニング店は、
過当競争に陥り、激しい 価格競争に耐えて
いる。消費者の財布の紐は年々固くなり、
さらに最近では一部のコンビニまで
クリーニングの取り次ぎを開始。競争は激化
する一方だ。

そこで、私がクリー二ング店に提案したい
のが、会員制・定額料金で洗濯物の量は
無制限というクリー二ングサービス。
「飲み放題」ならぬ「洗い放題」というもの。
コンセプトは「主婦を洗濯から開放します!」
だ。

何をバカな話を、と思われるかもしれないが、
どこのクリーニング工場も大量の余剰設備を
抱えているはずだ。余剰能力を計算し、その
範囲内に収まるように会員を集めれば採算に
必ず乗る。名前を明かせないのが残念だが、
私の指導先には実際にこのサービスを導入し、
売り上げを大幅に伸ばしたクリー二ング会社
がある。余剰設備の有効活用は、他の業種
でも応用できる視点だ。

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かつら・みきと
1953年大阪府生まれ。87年日本アシ
ストを設立し、社長に就任。グループ
11社(年商120億円)を率いる。
連絡先=Tel06-6947-2751

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日経ベンチャー2004年1月号より

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