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桂 幹人/儲かるも儲からんもアンタ次第!07


日経ベンチャー2004年4月号

時代の変化で、市場規模が縮小を続ける業種がある。いわゆる斜陽・
成熟産業だが、こういった事業を手掛ける会社の中には、売り上げが
全盛期の数分の1にまで落ち込んでいるところが少なくない。

今回紹介する京都容器光陽(京都市)の津村元英社長も、ジリ貧状態
になっていた会社を引き継ぎ、苦悩していた3代目社長だ。

売上高が3分の1に

京都容器光陽は、京都市伏見区にある1941年創業の老舗企業。
日本酒を入れる一升瓶を回収して洗浄し、酒類メーカーに納入している。
ところが最近は、日本酒メーカーが一升瓶ではなく紙パックを使う
ようになり、瓶洗浄の需要が減少を続けている。同社の売上高の
ピークは、80年代末の約15億円。昨年は5億円程度にまで落ち込ん
でしまった。

津村氏は2001年に社長に就任後、新規事業を検討するが、伏見周辺
の酒類メーカーや関連企業としか取引したことがなかったため、
「異業種に何を売っていいのか分からなかった」と言う。1年間一人で
悩んだ末に津村氏が私の下に訪ねてきたのは、02年秋のことだった。

相談の結果、津村氏に取り組んでもらうことにしたのは、飲料用オリジナル
瓶の製造だった。一升瓶の洗浄で培った瓶の知識を活かせるからだ。
これまで瓶製造の最低注文ロットは、20万本からというのが一般的
だったが、京都容器光陽は1000本からという小ロットで注文を
受ける。通常ならデザイン料や金型などの初期費用だけで150万円は
掛かるものを、40万円から引き受ける。

中小の酒類メーカーなどは、容器を既製品の中から選んで使っている。
今は、品質だけでなくイメージで売らなければならないのに、オリジナル
デザインの容器を調達する資金もノウハウもない。

だから、中小のメーカーから直接話を聞いて、商品イメージにふさわしい
こだわりの容器を格安価格で提案すれば、必ず注文が集まる。

海外進出にカネは掛からない

瓶のデザインや図面の作成は、瓶メーカーなどからスカウトしたスタッフ
が担当、実際の製造は瓶メーカーに依頼する。つまり、京都容器光陽は
瓶のファブレスメーカーになるわけだ。

手作業や安さが求められる時は、べトナムのエ場に頼む。日本の20分の1
という人件費の安さに加え、教育水準が高く、手先の器用な労働者が多い
ためだ。ベトナムの事情に詳しい私の知人の紹介で、津村氏はいくつかの
工場を回って提携先を決めた。

海外、それも異業種でどうやって提携先を決めたのか?と思われるかも
しれないが、瓶メーカーで品質管理を担当していた人を顧問として招き、
提携候補先の製造ラインをチェックしてもらった。もう一つ、言葉の問題
があるが、日本への留学経験を持つべトナム人通訳と契約。月数万円を
支払うことで、それも解決した。

津村氏は、こうした仕組み作りをわずか数ヵ月で行い、昨年の夏から
サービスを開始。短期間で700社の酒類メーカーに営業を掛け、既に
40社以上と取引を始めたへさらに、「シュンビン」という瓶に関する
無料情報誌を作り、2カ月に1回、酒類メーカー250社に送付している。
将来の顧客予備軍を固い込むためだ。

04年3月期は、本業が15%も落ち込んでいるにもかかわらず、新規
事業で数千万円の売り上げを確保。年商は5億円と、前期並みを確保
しそうだ。05年3月期は売上高7億円を目指す。

現在、津村氏は飲食店向けにこだわりの食器を提供する事業も準備中だ。
津村氏の目標は、07年3月期に10億円の売上高を達成すること。
瓶製造と同じスキームで、様々な容器・包装をトータルで手掛けていけば、
十分達成できるだろう。

京都容器光陽の「復活」は、経営者がやるべきことをやれば、会社は簡単
に蘇るという好例ではないだろうか。

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儲けるための業種別ソリューション 1
金型業者編

今回からこの欄では、私がコンサルティングを
引き受けた時に、業種別にどういった再建策を
立案し、実行しているのかを紹介したい。今回
紹介するのは、金型業者の再建策だ。

金型業界の場合、突破口は納期にある。例えば、
メーカーが新作に使う金型のサンプルを集める
のに、3カ月程度掛かっている場合が多い。
しかし、金型を作るには2~3週間あれば十分
なはず。なぜこんなに時間が掛かるのかと言えば、
金型業者が納品遅れのリスクを回避しようと、
必要以上に長い納期で仕事を受けようとする
からだ。その点の意識改革をするだけで、
短納期を武器に、他社から注文をごっそり奪える
はずだ。

もう一つ、納期を短縮するには、従業員のシフト
を見直すのが有効だ。一部の従業員の配置を早朝
や夜間に移せば、作業スピードは格段に上がる。
さらに、業者同士が提携し、その内の一社が窓口
になって、短納期で仕事を受けるようにすれば、
大企業から大口案件を取ることもできる。

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【ピンチ!】
 本業の瓶洗浄事業はジリ貧。
 売上高は5億円と最盛期(15億円)の3分の1に。
  ↓ ↓ ↓
【対策は?】
 ファブレスで瓶製造事業に進出。
 格安のオリジナル瓶を小ロットで受注。
 ベトナムの提携工場を活用。
  ↓ ↓ ↓
【成果は】
 本業の落ち込みをカバー。
 05年3月期に売上高7億円が目標。
 07年3月期に10億円を目指す。

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小ロット受注・海外提携で復活!
京都容器光陽
一升瓶の洗浄、オリジナル瓶の製造
所在地:京都市伏見区横大路下三栖東ノロ町1の3
津村元英社長
オリジナル瓶製造事業のURLは
http://www.shun-bin.com/

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かつら・みきと
1953年大阪府生まれ。87年日本アシストを
設立し、社長に就任。ナニワの再建請負人
として、大阪市と愛媛県西条市で地方自治体
が主催する社長向け経営塾の講師を務める。
連絡先=Tel06-6947-2751

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日経ベンチャー2004年4月号より

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