なんとしても口をあけない雛
夫が息せききって戻ってきました。買ってきたのは、小粒の種無し
葡萄デラウェアと和鳥用のすり餌。私も、腹ペコの雛たちは、これ
らのご馳走に夢中でとびつくと思いました。夫はまず、デラウェアの皮をむき、甘そうに熟れた中身を爪楊枝に
刺して、雛の口にもっていきました。
ところが、チーちゃんもダイちゃんも、まったく口をあけないでは
ありませんか。
テレビのアンテナに止まってうろたえている母鳥の声は、
「オマエタチ、ゼッタイニ、ソンナモノ、タベテハイケナイヨ」
といってるように聞こえます。
チーちゃんとダイちゃん&行方不明2羽のお母さんすり餌は、淡水魚粉や青菜粉の入った栄養もうまみも満点という五分餌
でした。そのまま水溶きしただけで与えてよいとありましたが、まだ
飛ぶこともできない雛だからと、乳鉢ですってなめらかなペースト状
にしました。それを割り箸を削って作ったヘラの先につけて、今度こ
そはと、雛の口先へもっていったのですが-。やはり二羽とも口をかたくなに閉じたままです。
「ほら、やせ我慢しないで食べるんだ」
「こんな無邪気な顔してるくせに、おそろしく強情だわね」卵から孵ってまもなくだったら、私たち人間を親と思いこんで、与える
ものを素直に食べたかも知れません。しかし、本当の親から口移しに
エサをもらってきた彼らとって、私たちは、怖い生き物でしかなさそうです。それにしても、ひどく空腹だろうに、目の前にご馳走をつきだされても
ゴクリともしないとは...。「死んでも人間の世話にはならないつもりかしら?」
「もう野鳥のプライドを持っていのかもしれないね。たいしたものだ」感心している場合ではありません。このままでは、チーちゃんも
ダイちゃんも飢え死にしてしまいます。私たちは鳥籠のなかにデラウェアをばらまき、すり餌の器をかけて、
しばらく陰で様子をみることにしました。もしかしたら、空腹に耐え切れなくなって、野鳥のプライドをかなぐりすてて、敵の差し入れにむしゃぶりつくかもしれない。
しかし親に口元まで運んでもらうばかりだった雛たちが、止まり木を動いてエサをついばむはずがありません。
私たちが隠れると、じきに母鳥がわが子のいる鳥籠の上にやってきま
した。青葡萄をくわえていて、さっきと同じように、むなしい努力を
くりかえします。
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つれりんさん