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2013.01.05
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カテゴリ: 日本史・世界史
阿部謹也 読書の軌跡

読書の軌跡

阿部謹也「読書の軌跡」

筑摩書房

1993年刊



 阿部謹也さんによる書評集。

 大作が多いので、少しずつ手に取っていきたいと思います。








≪訳者の田中西二郎氏の解説によると、流行作家であったメルヴィルはこの小説を
 書いたためにその地位を失い、文壇から消えていったという。・・

 流行作家が売れる本を書くことに飽きて、
 本当に書きたいものを書くためにあえて恵まれぬ晩年を甘受したという話は
 若い私には強く訴えるものをもっていたからである。≫






 「1588年にイギリス軍はスペインのアルマダ艦隊を破ったというは易い。
  しかし誰が船酔いや下痢のために苦しみ、漕げなくなって非情な海に投げ出された
  ガレー船の漕手のことを語るだろうか」(ブルクハルト)






 ヘルマン・ハインペル『小さな提琴、首府のミュンヘンの一少年』

≪人間は一生のどの段階においても完成したものであり、
 どの時期にも星が瞬き、どの年代においても大きな恵みが用意され、







 フィリップ・アリエス『<子供>の誕生』


 ヨーロッパにおいて、家族の絆が意識されはじめるのは、
 12、13世紀以降であり、16、17世紀になってはじめて私的な交わりの
 場としての家族が成立した。
 それまでは、家は多くの他人を交えた半ば公的な生活の場であった。


 16、17世紀になって、子供の存在が、大人と異なる無垢なものであり、
 大人の汚れた世界から隔離しなければならないという考えが生まれた。



 フィリップ・アリエス『死と歴史』


 キリスト教が普及する以前と以後の死生観の違い。

 古ゲルマン人は、円環的時間意識の中で生き、死後も現世と同様にヴァルハラで
 生活しうると考え、動産や家畜などを墓に携えていった。

 一方、キリスト教においては、直線的時間意識のなかで生きることを強要され、
 現世は一回生を受けるだけ、死ぬときも一人。死後は天国や地獄や煉獄に行く
 運命にあると考えざるをえなくなった。

 彼らが恐れたのは、死そのものよりも、死後の罰。
 死後の罰を怖れる人々から、圧倒的な財を集めたのが教会であった。



 フィリップ・アリエス『死を前にした人間』



 ノーマン・コーン『シオン賢者の議定書』
ユダヤ人世界征服陰謀の神話 シオン賢者の議定書(プロトコル)

≪・・少数派の狂信的行為と多数派の無関心が結びついたとき
 民族殺しが可能となったという著者の発言には耳を傾ける必要があるだろう。≫




 池上俊一『歴史としての身体』

≪人間が世界を捉え、理解しようとするとき、その基準は自己しかない。
 現代の社会には自己以外の基準らしきものがあまりに幅をきかしているために、
 世界を捉える基準が人間自身であるということはともすれば忘れられている。≫




 テツオ・ナジタ『懐徳堂』


「人は誰でも身分をとわず固有の徳をもっており、
 正しくものごとを理解する能力がある」という理念のもと、

 武士などのエリートに独占されていた学問を、農民や商人に開かれたものにした。

≪身分をとわず、個人の能力で選別せず、誰にで門戸を開いた教育・研究の機関
 としての懐徳堂が基本的には宗教を排し、合理的な思考を育てようとし、
 日常生活の中にすべての思想の源泉を見ようとしていたことが十分に描かれている。≫





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最終更新日  2013.01.05 19:20:32
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