マクラーレンは悩みの種からようやく解放される。違約金などの支払いは一切なしというから、最終段階でアロンソと和睦にこぎつけたのである。厄介払いができたということで、ロン・デニスは素直に喜んでいるはずである。ほとんどが英国人で構成されるマクラーレンは、スペイン人のアロンソに不向きな組織だったと言うしかない。ハミルトンはチームに残ることになるから、この内部紛争において首脳陣から信頼されていたのは、やはりハミルトンということになる。
二人のドライバーの激しいトップ戦い、アロンソとロン・デニスとの底知れない不信感、世論の集中砲火を浴びたスパイ事件、全ポイントを剥奪されるきっかけとなったメール事件、最終戦でライコネンに横取りされたチャンピオンシップ。マスコミをにぎわす話題は豊富だったが、終わってみるとアロンソに残されたものは少ない。ハミルトンがスイスに移住するというだけで、節税狙いという批判が降り注いでいるのを見ても、アロンソが去った後はマスコミの攻撃の刃がハミルトンに向かい始めるだろう。
アロンソが起こした無益な行動はいくつかある。ハンガリーのピット・ストップ嫌がらせ事件、優遇しなければメールの内容を告発するとロン・デニスを脅した事件、極秘だったメールを世間にばらしてしまったこと、スタートのコーナーでハミルトンと何度も絡み合いそうになったシーン、どれをとってもアロンソが不利であり、世論はハミルトンを支持した。F1は英国を本拠地にしているから、情報もハミルトン有利に流れてしまう。チーム内だけでなく、世界からも孤立していたのがアロンソだろう。唯一の救いは地元スペインの声援だった。そのつらい立場をあと1年も引きずることはできないというアロンソの思いがマクラーレン脱退につながっている。
アロンソはどこに向かうのだろう。フェラーリはマッサとの契約延長を決めているから、門前払いの形になる。BMWはハイドフェルドとクビサに満足している。不満で飛び出してきたルノーでは、なかなか勝てそうもない。空席はあっても戦闘力のないトヨタ、高額契約金を払えそうもない赤字のウィリアムズ、お金持ちだが表彰台に遠いレッドブル、バトンの二の舞になる危険があるホンダ、どこを向いてもアロンソの王座を奪回できるチームがない。1年契約を結んで、09年度からはフェラーリに移籍するという声が強いけれど、ライコネンがいるフェラーリ側が素直に受け入れてくれるかどうかわからない。下手をすると、ヴィルヌーヴの不遇を受け継ぐことになりかねない。アロンソとバトンを交換するという夢のようなプランも噂されているが、実現性は低い。いったいアロンソはどこに行くつもりなのだろうか?