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Nov 9, 2004
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カテゴリ: 物語のかけら
私の向かい側に座った少年が切れ切れに口ずさむのは、

ってもみなかった。ここは2ドアの小さな客車、床は油
が引かれた板だし、座っているイスも木の枠に緑の布
が張られたもの。目を上げると並んだつり革のベルト
はまさしく革製なのだ。もう都心ではお目にかかれな
い、いや都市部の近郊でも、すでに目にすることのな
いタイプ。だが、どこもきれいに磨かれていて、古ぼ
けた感じはあっても、けっして不潔な印象はない。右

ーゼル機関車に接続されている。

なぜここまで自分が乗っている列車について、細かく
書くのか、その理由は少年の口ずさむ歌にある。それ
はヴィラ=ロボスの『カイピラの小さな汽車』が原曲
で、それに歌詞をつけたアレンジだからだ。もう少し
詳しく説明すれば、『ブラジル風バッハ』第2番、第4
曲のこと。ブラジルの山の間を抜ける小さな列車のイ
メージだ。元々はなかった詞を私の知っている人がつ
けた。それもずいぶんと昔の話だ。

子供時分の私ですら、まだ学生っぽいと感じる背の高
い音楽教師。彼が自分なりに曲をアレンジして、歌詞

てくれたが、本人も気に入っているらしく、放課後に
アップライトのピアノを弾きながら歌っていた。この
歌は訥々と歌ったほうが味が出る。歌詞を思い出しな
がら少年の歌を聞いていると、不意に涙がこぼれそう
になった。この歌は悲しい歌だ。


を書いておこう。この曲の主人公は少年で、彼は汽車
に乗って暗い夜空の星々を巡る。そこには離れ離れに
なった親兄弟、友達がいて、車窓から手を降る彼に手
を振り返してくれるのだ。そして少年は……。

ディーゼル機関車の汽笛が響く、車窓の外は真っ暗で、
少年の背後のガラスに、彼に追いかぶさるような私の
鏡像が写っている。

教師は時分が書いた少年と同じ境遇だった。"大災"
で生き残ったが、家族とも友達とも生き別れてひとり
になってしまった。それは大人になっても変らず……。

少年が頭から歌を繰り返す。列車の振動が心地よい。
少年は誰に会いにいくのだ? この客車には私と彼し
かいない。どちらかが先に会いたい人にあって、この
列車を下りてしまったら。あとはたったひとりで乗り
続けなくてはならない。

私は少年に合わせて心の中で歌い始めた、もしひとり
ここに取り残されたのでは、歌を歌わなくては耐えら
れないような気がしたからだ。少年になぜその歌を知
っているのか、どこで覚えたのか、それを聞く気には
ならなかった。聞かずとも自分にはわかっているよう
な気がしていたからだ。少年の細面の顔、丸い目、特
徴のある唇。その面差しは音楽教師を思い出させるの
だ。彼に子はない。彼は始終ひとりですごし、ひとり
流転の先で短い一生を終えているのだから。

************************************************
書いたあとで『カイピラの小さな汽車』を聞きなおしました。
ずいぶんと勇壮な曲でしたね。汽車といわれなかったら、
怒り狂う像の行進といった印象ですね。いやはや

2004.11.13 追記





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Last updated  Nov 11, 2004 05:25:29 PM
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charberry @ おっと yanmoさん、お元気ですか?壁の向こうより…
charberry @ Re:水についてのあれこれ(07/16) 本当にお久しぶりです。一年五ヶ月ぶりだ…
Yanmo @ Re[1]:雲の羽衣(02/15) *みくみく*さん >はじめまして >素…
*みくみく* @ Re:雲の羽衣(02/15) はじめまして 素敵な言葉の世界ですねー…
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