しろねこの足跡

しろねこの足跡

沈黙


お嬢さんはお誕生日のころからピアノを習い始めていました。元来とてもとてもまじめなお嬢さんは、毎朝学校に行く前に練習をするほどの熱心さでした。
おかあさんは一生懸命に練習するお嬢さんをみて満足そうでした。しろは大きな音はニガテなのでしろハウスのなかでくるっとなって終わるのを待っていました。

お嬢さんの習っているピアノの先生はその土地の地主さんで大変裕福なおうちでした。居間に大きな暖炉、ピアノはピカピカのグランドピアノ。
先生のうちにも3人の娘さんがいました。
2階のひろいお部屋にピンクのカーテンや白木の木目のベッド、たくさんのお人形や色ペン、ノート、カラフルなレターセットがところせましとありました。

2番目の娘さんがお嬢さんにレターセットの交換をしようといってきたそうです。お嬢さんはとてもうれしかったのですが、お嬢さんがもってるレターセットでは2番目の娘さんの満足するようなものはなく交換しませんでした。

お嬢さんは2番目のお嬢さんをココロから羨ましく思ったそうです。ほしいものはなんでも買ってもらえて、広いお部屋にグランドピアノ。2番目の娘さんが勝気なせいもあってほんの少し妬ましくもあったようです。

その後しばらくして、お嬢さんはとんでもないショックを受けました。おかあさんが鬼のような形相でお嬢さんにといつめるのです。
「2番目の娘さんのレターセットを盗んだでしょう!」と!
お嬢さんにはそんな記憶はありません。
お嬢さんはびっくりして否定しましたが、おかあさんは認めてくれませんでした。おかあさんは勝手に2番目の娘さんとピアノの先生にお嬢さんのことを謝罪してしまったようでした。
ピアノの先生は子供のやることだからと快く納得したようでした。でもお嬢さんは納得いきませんでした。どうして、2番目の娘さんは何もいってくれなかったのでしょう。
そもそもどうしてレターセットは盗まれたことになって、おかあさんが知るところとなったのでしょう。
お嬢さんがいくら無実を訴えても無駄でした。

お嬢さんは唇をかみしめて沈黙するしかありませんでした。
それ以来2番目の娘さんと遊ぶことはありませんでした。
おかあさんにピアノの先生のうちの2階のお部屋に遊びにいくことを禁じられたからです。
お嬢さんにとっても望むところでした。

それ以来、おかあさんがお嬢さんの行動を制限するときにつける言葉が変わりました。
「どうしてお友達のうちにお泊りにいっちゃいけないの?
 みんなしていて、私だけ仲間はずれになっちゃうよ」
「だめ、あなたは人のうちのものを盗むから。
 ピアノの先生の娘さんに、あのあと何度も何度もレターセットをあなたが盗んだことを覚えているか確認しているのだから」

このときお嬢さんは心底屈辱を味わったそうです。
どうしてお嬢さんの訴えはいつも取り上げてもらえないのでしょうか。お嬢さんには沈黙して我慢して受け入れることしかできないのでしょうか?

しろだって怒ったらシャーって威嚇するのに!
お嬢さんは学校でも特定のお友達としかお話しないようになっていきました。お嬢さんは一人っ子のせいか特に男の子とは全くお話はしないようでした。

もうすぐお嬢さんは小学校4年生になろうとしてしました。


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