しろねこの足跡

しろねこの足跡

感情



同じ団地に、おじょうさんより1年先に引っ越してきた子でした。
きっとその子も1年前同じ目にあっていたのかもしれません。やっと自分が苦痛から逃れる対象ができたと思ったのかもしれません。
おじょうさんがニガテな豆パンをわざと床に落としたとか、クラスの女子の悪口をいっていたとか、ちょっと聞いただけではどちらが嘘をいっているのかわからないように、巧妙におじょうさんを傷つけていきました。

そして、あまりに事実と違うことにおずおずとおじょうさんが抗議すると「うそつきは泥棒のはじまりだって、泥棒のはじまりだってお母さんが言ってた!」と覚えたての言葉を、鬼の首をとったように興奮してクラス中に言触らしました。

おじょうさんは思いました。来年また、転校生がきたら自分は同じことをするのか。答えは絶対NOでした。
おじょうさんは立ち向かう力はないですが、人をわざと傷つけるようなエネルギーもありませんでした。

おじょうさんには我慢することでやり過ごすことが精一杯でした。
でもおじょうさんも人間です。

学校でのさみしさ、おうちで味方になってもらえないもどかしさがだんだんこみ上げてくるのです。

しろは理解しました。さみしさやせつなさは、積み重なっていくと憎しみに変化することを。
あらゆるマイナスの感情は、憎しみに結集していくことを。

あのおじょうさんにも憎しみが、ココロに灯っていくのをしろは全身を毛羽立てて見守るしかないのでした。

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